2007.01.16
  • twitter
  • facebook
  • はてなブックマーク
  • 印刷

過去事例から未来予測型の危機管理へ

過去の事例に対応することで安心してはいませんか? 危機を回避するために大切なのは、未来を予測することです。

さて、今回は危機管理の考え方についてです。危機管理を行ううえで多くの場合、過去の事件から教訓を得て、その事件に備えようとします。たとえばいまの学校のセキュリティーの想定事案は多くの学校で池田小学校事件であることでしょう。はたしてこれでいいのでしょうか。

危機状況は常に進化する

最近、話題の振り込め詐欺。この振り込め詐欺の被害額は年々増加しているそうですが、それに伴い、その手口も年々進化しています。思い出してみてください。5、6年前に振り込め詐欺が出てきたころは振り込め詐欺といわれずにおれおれ詐欺といわれていました。その名のとおり「おれおれ」と名乗って相手を騙してお金を振り込ませていたわけですが、それが振り込め詐欺に名前が変わったのは手口が狡猾になり悪質化したからです。警察官、弁護士、親族に成りすまして電話をしてくる。その電話の内容も事故が発生した、会社の設備を傷つけた、痴漢をしてしまったなどなど数多くの危機状況を繰り出してきます。被害者はテレビで見た詐欺の手口と同じであれば警戒もしますが、前回のコラムでも触れたように、人間は想定外の危機状況を突きつけられるとパニックを起こし、判断能力が著しく低下して、簡単に詐欺に引っかかってしまうのです。この事例から分かるのは危機というものは常に悪質化し、拡大化するということです。9.11事件の前に9.11事件を予測していた人は少なかったことでしょう。池田小学校事件の前に学校に不法侵入者が侵入し児童が傷つけられるのも予測していた人は少なかったことでしょう。

予測とは、”想定外”を”想定内”にすること

しかし、事件から得られる教訓は事前に起こりうる事態と予測して備えること、そして防ぐことであることは皆さんも納得されるはずです。となれば私たちが行わなくてはいけないのは過去に起きた事件、事故にとらわれることなく未来に起こりうる事件、事故を予測してそれに備えなくてはいけないということです。いま、学校の現場はどうでしょうか。学校の不法侵入訓練の想定は数多くの学校が池田小学校の事例でしょう。しかし、次に起こるのは池田小学校の事例なのでしょうか。それより凶悪な事件は起きないのでしょうか。世間を見渡せば事件で使われている武器は凶悪化の一方をたどっています。拳銃、エアガン、ボウガンなどの飛び道具はその一例でしょう。人数も一人でしょうか。二人、三人で行われている犯罪も数多く見受けられます。


危機管理は過去に備えるのではなく、未来に備えるもの。これを頭においていただければと思います。そして第三回のコラムにも書いたように何を守るのか。何を危機と捕らえるのか。これを間違えないでください。この二つをきちんと頭においておくことができれば危機管理を行う方向は間違わないですむでしょう。残念なことに不確実な時代といわれるようになり様々な脅威が社会を覆うようになってきています。皆さんの安全への取り組みはこれからが本番です。がんばっていただきたいと思います。


私のコラムは今回が最後です。次回からは弊社の新人社員が皆さんと一緒に危機管理について考えていきます。いろいろ至らない点があるとは思いますが温かい眼で見守っていただければと思います。そして一緒に危機管理を考えていただき、いろいろな視点で“気づき”があればとも思っています。いままでありがとうございました。

asari.jpg
浅利 眞 あさり まこと

※当記事のすべてのコンテンツ(文・画像等)の無断使用を禁じます。

pagetop