2006.05.23
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学校に不法侵入者が! 緊急放送で伝えるべきことは?

このコラムを書いている5月中旬は、雨がふったりやんだり、暑かったり寒かったり......。梅雨になりかけているとのことで、じめじめしていて体調がよくありません。私は危機管理を専門に仕事をしているのですが、健康管理もがんばらねばと思う今日この頃です。健康管理こそ人間の危機管理の基礎のはずですが......がんばって善玉コレステロールを上げなくては。

「不法侵入を児童に伝えない」は○か×か

さて、今回は緊急放送についてです。先日、とある学校の先生から「不法侵入者が現れたときの緊急放送をどうすべきか」についてご相談を受けました。現在、この緊急放送ですが多くの学校では「大きな箱が届いています」とか「○○先生(その学校にいない先生の名前)が玄関(侵入されている場所)に見えています」のような形で不法侵入があったことを児童に伝えない形で行っているようです。実際に私がお伺いする学校もこのような形で行っているところが多かったように感じます。

さて、これでいいのでしょうか。私は、現在の学校においては難しいと考えています。なぜならこの形は、学校への不法侵入が授業時間でのみ発生し、児童が教員の統率下に全員いることが前提だからです。ちょっと考えてみてください。学校の休憩時間、児童は校庭や体育館、校舎のあっちこっちで遊んでいます。そのような状況のとき刃物を持った男が正門から侵入してきたとしましょう。「大きな箱が届きました」だとどうなるでしょうか。

児童も「大きな箱が届きました」を不法侵入者が現れたときの合図であることを知っていれば問題ないかもしれません。その合図を聞き逃げることができるからです。でも、その場合「大きな箱が届きました」にする意味はどこにあるのでしょうか。

「大きな箱が届きました」など不法侵入を別な表現にしていることの理由に、「児童を不安がらせたくないから」というのをよく聞きます。しかしこの場合、その表現が不審者侵入の合図であることを児童に対して伝えないことになります。さらに侵入された時間が休憩時間だとしたら、学校中のバラバラになっている児童に対して緊急事態が発生していることを伝えないことにもなります。伝えなければ逃げることもできません。児童を不安にさせるのと児童の安全の確保と、どちらが優先されるべきでしょう?

言うまでもありません、児童の安全確保です。不安にさせたくないからと情報を伝えずに逃げられなかったとしたら、これは本末転倒であるとしか言いようがありません。

パニックを起こさせないためにこそ 正しい情報を伝える

危機管理でよく言われるのに「情報を正しく伝える」というのがあります。間違った情報は間違った判断を生むからです。学校に侵入事件が発生したとして、その危機に立ち向かうのは先生はもちろんのこと、児童自身でもあるのです。児童たちに正しい情報を伝えないと、児童たちは間違った情報で危機に立ち向かうことになります。

不法侵入などの危機を別の表現に変える理由に「パニックになるから」ということもよく聞きます。しかし、パニックは正しい情報が入手困難な状況下で、伝えられた情報と現実が違うときに発生するものです。つまりパニックを起こさせないためにこそ正しい情報を伝えるべきなのです。

「大きな箱が届きました」という表現で効果が出るのは、「侵入者が危険人物かどうかまだよくわからないが、現在不審な行動をとっており、相手を刺激せずに先生方を静かにここまで呼び寄せたい」という場面かと思います。最初から刃物を持った人物が乱入してきた場合はそのような放送で間に合うでしょうか。

いま学校で作っているマニュアルの内容について、本当に自分たちが実行することができるものか、また前提条件はおかしくないか、これで十分か、ぜひ一度見直してみてください。あなたの学校の休憩時間に不審者が侵入してきたらどうするかなど、いままで考えたこともない前提条件もまだまだあるはずです。

(イラスト:じえじ)

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