2006.04.25
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防犯カメラの抑止力とは

3月末に発生したマンションでの児童殺害事件の直後、テレビ局の依頼で現場に行くことになりました。この事件を例に、今回はハード重視のセキュリティーの問題について考えてみたいと思います。

4月3日だったと思いますが、大地震発生時になにが起こりえるのかをドラマ仕立てで紹介している特別番組がありました。いままでのその手の番組より一歩踏み込んでいて、治安崩壊の危険性にまで言及していたのが印象的でした。皆さんのご家庭の防災はいかがでしょうか。家族全員がばらばらでいるときに地震が発生した場合どうしたらいいのか、など最悪の事態を想定して、一度ご家庭で話し合ってみてください。

さて、今回は3月末に発生したマンションでの児童殺害事件の現場で感じたことを書いてみようと思います。事件の直後にあるテレビ局の依頼で事件現場に行くことになりました。現場は報道陣で混雑しており、事件直後のマスコミ対応はやっぱり大変だなとあらためて感じました。マスコミへの対応に関しては別の機会にお話しすることとして今回はこのコラムでも前に書いたことがありますがハード重視のセキュリティーの問題について考えてみたいと思います。

現場となったマンションには報道にも出ていましたが大量の監視カメラがついていました。新聞やテレビで出ていた犯人の映像はそれらのカメラに映ったものです。現場にいくとすぐにカメラは目に入りました。大変目立つところについていました。あとで報道でも出ていましたが、現場でまず頭に浮かんだのが「犯人は絶対にカメラがついていることがわかっていてここで犯行におよんでいる」でした。

現場近くには同じような高さのマンションがいくつか建っていました。現場との比較のために周りの建物も回ったのですが回ってわかったことは現場となった建物が監視カメラの量が最も多く、そして目立つようにつけられていました。なぜ、犯人は同じような高い建物が回りにもあるのに最も設備的に警戒が厳重なその建物で犯行におよんだのか。このことは今後、捜査で解明されていくことでしょうが、今回の事件での大きな問題は、明らかに目立つようにつけられた監視カメラが、抑止効果としてはまったく機能しなかったことです。

今回の事件の報道を見ていると何日も前から、建物に出入りをして殺害を計画し、また事件後も出入りをしていました。が、監視カメラが、2回目の事件の抑止に効果を表すことはありませんでした。私は前から言っていますが監視カメラの抑止効果には大きな疑問を持っています。たしかに利益目的型の犯罪、たとえば窃盗や空き巣など金品を奪うことを目的とした犯罪の場合は監視カメラには一定の抑止効果が出るでしょう。しかし、犯罪を遂行することそのものが目的の人物や、捕まることが阻害要因ではない人物、そして犯行を行うことだけに視野狭窄を起こしている人物など、実行目的型の犯罪は監視カメラだけでは抑止できないと考えています。

忘れないでください。監視カメラからは手と足が出てくれるわけではないことを。監視カメラが不審者と正当な訪問者を見分けてくれないことを。あくまでも監視カメラは道具にしかすぎません。監視カメラに映し出された映像をみて、そこから危険性や今後の可能性を推測し対処する人物がいなければ実行目的型の犯罪には対応できないのです。また、利益目的型の犯罪に対してもカメラの付いている場所やその映像がどのように役立てられているかがわかればその死角と付いている安心感を逆手にとって犯行が行われます。

監視カメラをつけるなとは言いません。活用の仕方によっては大変有効な設備であることは言うまでもありません。問題は活用法です。監視カメラを有効に活用するために皆さんの周りにあるカメラについて一度考えていただきたいと思います。また、カメラだけでなく防犯器具といわれるもの全体についても見直してみてください。ハードはあればいいのではなく、使いこなせてこそ活きるものです。

(イラスト:じえじ)

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