2003.08.19
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つくってみませんか?「危険地図」

このコラムを書いているからでしょうか、最近は学校やPTAの方とお会いする機会が増えています。お会いするとやはり、子どもを守るにはどうしたらいいのかと言う話になるのですが、特によく耳にするのが「危険地図を作っている」と言う話です。

危険地図はその名前の通り、地図上に危険な場所を示したものです。「危険」と一言で言っても、それは犯罪であったり、災害であったり、事故であったりします。最近、警視庁が犯罪情報マップを公表しましたが、これも危険地図の一種と言えるでしょう。

 学校においては大きく二つの危険地図を作っているところが多いようです。一つは交通事故などの事故がおきそうな場所を示している「ハザードマップ」と言われるもの、もう一つは犯罪に関する「クライムマップ」と言われるもの。今回は後者の「クライムマップ」についてお話します。

 危機管理において最初の活動は情報収集ということをお話したのは2回目のコラムでした。危機に関する情報を集め、それを整理することによって危機への対応法を決める、それが危機管理の活動だとお話ししました。どこで危機が発生しているのか、どこで発生の可能性が分かるように作成される「クライムマップ」は犯罪予防のための情報収集活動で重要な役割をします。

 作る上でのポイントがいくつかあります。まずは「何のために作るのか」をはっきりさせることクライムマップはそこに掲載されている情報を利用して、何らかの対応をとった時に作成の意味があるので、何のために作るのかがとても重要になります。学校によっては地図の作成に労力を割きすぎ、出来たことに満足してしまい、そこから先の活動をしていないところがありますが、これでは意味がありません。労力を割きすぎた原因はやはり目的をしっかり持っていないこと。何のために使うのかがはっきりしていないので何でもかんでも地図に書き込むので、それだけで疲れてしまいます。目的をはっきり持っていればそれに必要な情報だけですむので労力は少なくて済むはずです。

 次のポイントは情報の正確性。危険地図を使って対応するわけですから、情報の正確性は重要です。クライムマップの作成時によく見かけるのが大人たちだけで「どこどこで犯罪があったらしい」「どこどこで危険な目に遭っているらしい」などの情報を書き込んで作っていることです。ここで問題なのが「・・・らしい」の部分です。「・・・らしい」は言うまでもなく推測で使われる言葉ですので、情報としては正確性に欠けます。せっかくクライムマップを作るのであれば、子ども達から情報を聞き取り、実際にどこで危険な目にあっているのかを正確に把握するべきです。大人の視点ではなく、子どもの視点での情報収集が必要です。

 最後は作ったクライムマップをいかに使うかでしょう。先ほども言ったように作るだけでは意味がありません。話は少し変わりますが、ニューヨーク市は独自にクライムマップを作成し、それを活用することによって犯罪率を大幅に低下させました。彼らはただ作るだけでなく、そのマップからどこが危険かを把握し、そこに対して重点的なパトロールを行ったり、警官を配置したりして犯罪を低下させたのです。学校のクライムマップも同様に「いかに活用するのか」が重要です。

 犯罪危険地図の研究者で千葉大学教授の中村攻さんは著書「子どもはどこで犯罪にあっているか」(晶文社、2000年3月)の中で、子ども達から生の声を聞き出したら、「約4割の子ども達が何らかの危険な目にあっていた」と紹介しています。皆さんの学校でも子ども達から聞き出してみたら、意外なところで危険な目に遭っているかもしれません。現在の状況を把握するためにも一度、犯罪危険地図を作ってみてはいかがでしょうか。

(イラスト:たかまひびき)

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