2003.05.22
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学校アポなし訪問記(訪問者対策)(Vol.1 )

今、ほぼ全ての学校で来訪者の対策を行っていることでしょう。来校者名簿に名前を書いてもらう、バッチを付けてもらうなど、それらは果たして役に立っているのでしょうか。今回は私が昨年行った実験についてお話します。

一冊の本とちょっと気を利かした会話。

それだけで私は多くの学校に浸入し、学校内部の情報と学校の安全対策の実態を入手することができました。その気になれば生徒たちを誘拐したり、学校に立てこもったり、学校の重要情報を入手することもでき、私が本物の犯罪者なら私の行為は学校側に壊滅的な被害をもたらすことになります。そう思ったのは昨年の夏のことです。これは昨年の夏、私が都内のいくつかの有名私立女子校を回ったときの実話です。

 「2001年6月に発生した大阪の小学校での事件は学校関係者に衝撃を与えた」私はそう思っていました。事実、事件後各地で学校の安全対策・危機管理のセミナーが多く開催されましたし、今年の防犯などを扱った展示会では学校の安全対策に関するセミナーが開かれました。また、私の会社には多くの学校から問い合わせを頂きました。そのため、私は学校の安全対策は格段に進歩し、先生や職員の意識は高いのでは?と思い、その実態を調べることと会社の営業も兼ねて、いくつかの学校を回ることにしたのです。

 まず、私が行ったのは学校の事前調査でした。調査と言ってもインターネットを検索し、学校案内を購入。それらを隅から隅まで読みこむことです。時間にして2日間。このたった2日で私は驚くべきほどの情報を入手することができたのです。それは学校の所在地、電話番号、ホームページのURLなどのオープンソース(公開情報)。そして、何より私を驚かせたのは学校内部の配置図や組織構成、機能、先生の名前、年齢、出身地、その先生がどのような教育にかかわり、何に興味があるのか。そんな細かいことまでが簡単に入手できたのです。もし、仮に私が本物の犯罪者であればもっと多くの情報を入手することができたでしょう。

 私は調べた学校の中から実際に出かける学校を選定しました。基準はふたつ。ある私鉄沿線の女子中学・高校であること。女子校を選んだのは危機管理や安全対策に敏感であろうと想像したからです。私は二つの私鉄沿線で各10校、計20校を選び出しました。その20校は女子校としては大変有名であり、中には会社役員や政治家の娘が多く通っている学校もありました。なぜ、20校も選び出したのか。私は、今回の訪問にあたって一切のアポイントを取らずに訪問することにしたからです。アポイントがなければ学校内部には入れない。私はそう予想し、1日に回れる学校は10校ぐらいだろうと考えたのです。しかし、この予想は外れ、1校を除いたすべての学校に入ることができたために、私が実際回れたのは日に5校、計10校でした。

 当日の私の服装はちょっと綺麗目なスーツに靴屋で綺麗にしてもらった靴。そしてアタッシュケース。そして、常に笑顔を絶やさず、見るからに善人そうなサラリーマンと言った風な感じでした。行ったすべての学校に警備員若しくはそれに相当するような人物がいました。校門では、ほぼ全ての学校で以下のような会話がありました。

「どうも、こんにちは」
「こんにちは、どちらへお越しですか」
「私は危機管理会社の者ですが、御校の安全対策担当者の方にお話をお伺いしたくて参りました。取り次いでいただけますでしょうか」
「わかりました。では、中に総務部がありますからそちらへ行ってください」
「ありがとうございます」

 誰も私の正体を疑いません。唯一、1校だけはアポイントがない人間を入れるわけには行かないと断られましたが、その他の9校では上記のような会話が行われただけでなく、中には「安全対策であれば誰々が権限あるから聞いてみるといい」とか、建物の詳細を教えてくれる警備員がいたり、疑問に思うような対応がありました。そして、会話のあと来校者名簿に名前と会社名だけを書き(誰も私の身分を確認することはありませんでした)、バッチを受け取ると私だけで学校の中を歩き回り、担当部署まで行きました。1校として誰か迎えに来るとか、警備員が部署まで同行すると言うことはなかったのです。

 このような学校の対応、身に覚えはありませんか?次回はこの続きと対策をお話します。

(イラスト:たかまひびき)

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