2005.04.19
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地域と学校を結ぶホームページの効果的な活用に向けて

学校の情報公開が、重要となっている。学校のホームページは、校内の活動を広く公開するための有効なツール。ホームページ作成や更新の作業をできるだけ簡単にし、学校の情報をどんどん公開してもらおうと、静岡大学と内田洋行が1年間にわたり共同で行っていた、「学校用CMS(コンテンツ・マネージメント・システム)」についての研究成果が3月27日に内田洋行地下ホールにて発表された。

中川健朗氏
中川健朗氏
 

「CMS」とは、コンテンツ・マネージメント・システムのこと。ホームページ作りや更新にかかる学校や教員の負担を軽くするためのシステムである。学校用CMSでは、ホームページを通じて保護者や地域などを巻き込み、子どもたちを教育していくツールとなるようさまざまな工夫がなされている。教員ひとりに負担がかかることなく、誰もが使える利便性が特長だ。

 まずは、文部科学省・初等中等教育局参事官(産業教育・情報教育担当)中川健朗氏による基調講演『学校における情報公開』。
 中川氏は、インターネットで、自分の名前を検索すると、思わぬブログやホームページなどにたどり着いたことから、「多くの人がホームページを見る時代とはどういうことか。色々なところからどんどん繋がっていく。誰がどこから見ているかわからない。学校の情報公開、説明責任の質と量が問われる時代になっている」とコメント。続いて、情報機器に関する予算措置について、2001年に計画された『e-Japan戦略』を引き合いにだしてこのように解説した。

 「e-Japan重点計画により、『教育情報化対策』として、学校の情報化は2005年度までは特別扱いとなる。しかし、地方交付税措置は2005年度で終了する。それ以降は措置がされないから、特別扱いも受けない。これまで、その使途は地方自治体に任されてきたために、地域によっては、地方交付税を、学校の情報化により多く配分するところがある一方で、全く学校の情報化には使わない自治体もあった。

中川建朗
 

 措置が終了した後に、これまで学校の情報化推進に積極的でなかった自治体が、無理をしてまで推進するとは考えられない」 と、今後の学校の情報化の不安な先行きを予測。また、措置のある今年度一杯は、大きな投資でなくても、ソフト経費やパソコンのレンタルリース料などを充てて少しでも情報化を進めてはどうかとの提案も。

 「今後、地方交付税措置が終了してからも、保護者が動けば予算が動くだろう。自分の学校にはどうしてパソコンが入っていないのか、インターネットにつながらないのか、という子供たちの強い声があれば、行政にも影響を与えるのではないか」とのヒントもいただいた。

 教育関係者と思われる聴講者が頷きながら熱心にメモをとっていたのが印象的だった。ちなみにこの計画は予定通りには進んでおらず、校内LANの整備率も全国一位の岐阜県84.7%から最下位の東京8.9%まで全国でかなりのバラつきが見られる。同じくIT教育のできる教員の数もまだまだ不足しているのが現状だ。

会場
 

 次に、静岡大学情報学部で学校現場における情報化について研究している堀田龍也助教授から「これからの学校に求められること」として講演があり、学校ウェブページの現状と課題、学校ウェブページに何が期待されているか、学校ウェブページの活性化のためにどんな支援システムがあればよいかが語られた。

 そして具体的な解決用ツールとして、ウェブページ制作に関する負荷を軽減し、学校における情報流通のテンプレートを備え、学校ならではの情報決済の方式を把握したうえで設計されている、学校向けCMSの有効性が示された。

 さらにプロジェクトメンバーが次々とリレー報告。静岡大学工学部石塚氏の「学校ウェブサイトで発信されている情報分析」のあとは、徳島県阿南市立伊島小学校村井氏の「児童・生徒のコミュニケーションツールとしてのウェブログ活用」。

 村井氏によると、生徒自身が運用・更新するウェブログを設置したところ、文章を書く喜びと文章を考える力、小中学生のつながりなどが育まれたという。一般に公開しているため、外部の大人とのやりとりで有益な交流がはかれたという側面もあったようだ。

 兵庫県三木市立教育センター梶本氏の「学校ウェブページの活性化と教育センターの役割」ではグループ校12のホームページ作りにCMSを導入し、デザインの統一はもちろん、サイト管理画面で人気ページを把握しニーズを掴んだり、保護者の反応が返ってくることで学校運営の見直しにつながったり、ホームページの更新作業がかなり楽になったことなどが報告された。

 さらに富山市立寒江小学校笹原氏の「学校ウェブの日常的更新のための教職員の協力体制」、千葉県柏市立土南部小学校西田氏の「個人情報を守る学習指導」と続いた。
豊富な実例をもとにした報告は理解しやすく、とりわけウェブページ制作にあたろうと考えている教育関係者にとって示唆に富む内容であった。

 会を締めるのは、ソシオメディア社の社長・篠原氏と堀田氏との対談。篠原氏はウェブページのユーザビリティ&アクセシビリティの第一人者である。

 「学校のサイトは情報が古いものが多く、ウェブがあることだけで満足しているところもある。せっかくのコンテンツを活かすために、CMSのようないい雛形を利用するといい。 また、CMSを導入すればシステムにまかせられるため、先生方の作業も簡便になる」 といったことが語られたほか、学校ウェブページ作りに必要なものとして、さまざまな情報の公開「教育はサービス業だ」、ホームページのわかりやすさに敏感になる、学校ウェブユーザーとのコラボレーションの必要性といったことが示された。

対談終了にて発表会は閉会。その後は聴講者らも交えての懇親会が行われた。

(取材・文/小股千佐)
 

堀田辰也助教授
堀田龍也先生
篠原氏と堀田助教授との対談
篠原氏と堀田先生

 

   

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