明日の教育につながる道を探る 「第2回 全国プレゼンテーションコンテスト」

最近、国語や総合的な学習の時間、情報などの授業において、プレゼンテーションを採り入れる機会が増えてきている。そこで、教育現場におけるプレゼンテーションの重要性や、その取り組み・成果を全国に発信することで明日の教育につながる道を探る「第2回 全国プレゼンテーションコンテスト」(主催:全国プレゼンテーションコンテスト実行委員会 共催:早稲田大学IT教育研究所・東海スクールネット研究会)の全国大会が、3月20日、東京・日本科学未来館にて行われた。
![]() 参加者全員で記念撮影 |
第2回目となる今大会は、昨夏8月からプレコン公式サイトにて参加申し込みが行われ→10月にプレゼンを記録したVTRを含む応募書類を提出→12月から各部門優秀チーム10チーム選考の一次審査→そして今年1月、全国大会出場となる各部門3チームを選考する二次審査という流れで行われた。エントリー総数は276チーム。そのなかから、全国大会に勝ち残った各部門3チームによって、この日、最優秀賞・グランプリ賞が争われた。 ■ これでも小学生!?ハイレベルの発表が! 最初に行われたのは、小学生<中学年>部門。舞台には大きなスクリーンが用意され、各チーム、<発表者>と<パソコン操作者>の2名が壇上に上がる。とはいえ、チーム人数に規定はなく、発表者と操作者が同一で1名参加の場合もあれば、壇上には上がらないが4人チームのこともある。 一番手は、富山県富山市立寒江小学校・バリアフリー見つけ隊による『寒江の町で見つけたバリアフリー』。水田が多く商店が少ないという寒江の町で暮らす彼女たちが、地元に開店したばかりの大手スーパーで発見したバリアフリーのアイデアをビジュアルとともに紹介した作品。駅や公共施設のバリアフリーは意識しても、普段、見過ごしてしまいがちなスーパーの店内。その視点の斬新さに思わずうなずいてしまう。 発表のあと、「メモも何も見ずに発表してますが、全部セリフを覚えてるんですか?」と審査員から質問が飛んだが、なんとその後に登場した出場者たちも全員がメモなしでプレゼン! 子どもたちの暗記力と表現力の豊かさに会場中が舌を巻いた。 続いて、給食の時間にたびたび登場するという地元の米・紫黒米について調査した兵庫県龍野市立損保小学校4年2組の『お米のアイドル紫黒米』。ルーツや製法を調べるだけではなく、調理のアイデアを自ら提案する点がいかにも<プレゼン>らしい。 そして登場したのが、昨年、小学3年生で最優秀賞を獲得した静岡県富士市立元吉原小学校の葛谷麻希さんの『ポスター&CM調査隊』。校内のポスター作りからスタートし、プロが作った広告を研究、さらに動画を使って図書室のマナーCMまで制作してしまうという大作だ。 発表者である葛谷さんの聴衆をひきつける言葉の間や身体表現もさることながら、メディアをフルに活用した作品に会場も喝采。テーマ・発表の仕方・メディア活用と、プレゼンテーションに必要な3つの柱が明確になった好例だった。 小学生<中学年>部門とは思えぬ激戦のあと、小学生<高学年>、中学生、高校生のプレゼン発表。中学生以上になると、水質汚染やリサイクル問題、「いじめ」や「ドラッグ」など、より社会的なテーマに広がっていくのが面白い。しかし、小学生とは異なり、そこにどんな風に<自分>や<自分の地域>の意見を絡めていくかが重要視される。新聞や実験のデータをまとめただけでは、プレゼンとして成立しないのが難しいところだ。 ■プレゼンテーション能力は基礎学力!! 審査結果を待つ間、会場で行われたのが教育関係者を対象にした「プレゼンテーション教育セミナー」。本大会の副実行委員長であり日本教育工学会会長の清水康敬氏による講演「学力問題とICT活用」、マイクロソフト、アスキーソリューションズ等の企業セッション、そして同副実行委員長・永野和男氏の『プレゼンテーション能力は基礎学力』という講演で締めくくられた。 聖心女子大学でも教鞭をとる永野氏は、大学入試の変化を例に、情報技術社会に求められる<新しい学力観>について提言。人間の処理機能を超える情報ネットワーク時代には、ペーパーテストや詰め込みの記憶力ではなく、「情報を選択して問題を解決する能力+コミュニケーション能力を育むことが重要」と語った。 ■優勝は誰の手に!? そして、ついに審査結果の発表だ。小学生<中学年>部門の最優秀賞は、『ポスター&CM調査隊』(静岡県富士市立元吉原小学校・葛谷麻希さん)、以下<高学年>部門=『青い目の人形は今どこに?』(岩手県水沢市立水沢小学校・青い目の人形リサーチチーム)、中学生部門=『楽しい学校生活を目指して』(茨城県つくば市立筑波西中学校・心の健康守り隊)、高校生部門=『ドラッグと私』(桜丘高等学校・相澤沙織さん)に決定。
最後の決め手は、発表者が持つ存在感ということになるのだろう。プレゼンテーションとは<伝える力>。そこでは存在感も立派な武器になる。子どもたちの未知なる魅力を開発するプレゼンテーション。しかしプレゼンには聴衆が必要だ。それも多ければ多いほど、子どもたちのプレゼン力は強力になる。教室を飛び出して、コンテストの舞台へ。これほど有効な校外学習はないかもしれない。 (取材・文/寺田薫) |
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![]() 小学生中学年部門で 最優秀賞を受賞した 葛谷さん |
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![]() 小学生高学年部門で 最優秀賞を受賞した 青い目の人形 リサーチチームさん |
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![]() 中学生部門で 最優秀賞を受賞した 心の健康守り隊さん |
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