2005.02.08
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学校や教育を支援するということ とうきょうED冬の研究会

学校や教育を支援するということ

1月16日、東京国際フォーラムにて、「学校や教育を支援するということ」と題して、とうきょうED主催の研究会が行われた。冷たい雨の降る中、34名の参加者が集まった。

 

 

 

 

 

 


松橋尚子先生
 

とうきょうEDは、メーリングリストを活動の中心とする研究グループ。学校の情報化が全国平均から大きく立ち遅れている現状を打破しようと集まった東京の学校の先生方と、彼らを支援する社会人たちが参加している。企業や行政と連携して、学校におけるe-ラーニングの実証実験や、情報倫理を教える教材の開発などの活動を行ってきた。
 今回の研究会では、企業やNPOが学校の授業を支援した事例が発表された。

■ 企業の支援によって授業がより深いものになる
     
~渋谷区立笹塚小学校の松橋尚子先生

 笹塚小学校では、6年生の児童を対象に、「携帯電話をどう使えばいいのか」を自分たちで考えさせるという授業を行った。

 子どもたちに「今一番欲しいものは何?」と聞いたらほとんどの子どもが「携帯電話」と答えるのではなかろうか。特に来年中学生になる子どもたちにとって携帯電話は、「大人への一歩」の象徴であり、特別なあこがれがある。携帯電話をねだられる保護者たちは、「まだ与えたくない」と思いつつ、これといった反対理由がみつからず困っている。このような状況を知った松橋先生は、「これを"家庭の問題"と突き放していいのか? 学校として何かできないのか」と思い、総合的な学習の時間で携帯電話とのつきあい方の学習に取り組むことにした。

 単なる知識ではなく、体験を通して感じて欲しい。保護者にも協力してもらい、ぜひ一緒に考えてほしい。できれば、実物を入手して、学校と家庭の両方で使ってみる、ということができないか…。松橋先生は、この思いをとうきょうEDのメーリングリストに書き込んだところ、携帯電話会社への橋渡しをしてくれる人、社会人講師派遣の協力をしてくれる人、と次々と協力メンバーが集まった。その結果、NTTドコモより、携帯電話を10台借りることができ、授業期間中の通話料も負担してくれることになった。

「実際に持たせてみると、携帯電話はあっという間に子どもたちの生活の中に溶け込んでいきました。しかし、中には使うこと自体が目的になってしまうなど、望ましい使い方とは思えないケースもいくつか見られました。普段、ちゃんとした行動ができる本校の子どもたちでも、知識としては理解できているのに、実際の行動には不安な部分が見られました。携帯電話というツールの影響力には驚かされます。」

 松橋先生は、これらの体験をふまえ、「では自分たちは携帯電話とどう付き合っていけばいいのか」を子どもたち自身に考えさせていった。

「この授業は、企業の支援がなかったとしてもやったと思うしできたと思う。でも、支援あったおかげでより深い授業ができた。」

と松橋先生。しかし、その支援企業探しも、とうきょうEDのネットワークがなければ、大変時間も手間もか
かったことだろう。


 


西田光昭先生

 

 

 

 

■ 学校や自治体だけではできないことをNPOが支援
    ~千葉県柏市 KIU(Kashiwa Internet Union)

 次の事例は、千葉県柏市立土南部小学校の西田光昭先生から発表された。

 柏市は学校の情報化の進んでいる自治体として知られている。その背後には、KIUというNPOの支援がある。KIUは、千葉県柏市を中心とした地域の小・中・高校、近隣センター、図書館等の公共性の高い組織のLANを相互接続し、インターネットアクセスを可能にする非営利の地域貢献型インターネットサービスである。運営は、麗澤大学、麗澤高校が行っているが、実際の作業は生徒が行う。LANの接続や設定などの作業は、情報教育の実習ともなるのだという。NPOの運営費の中でも最も負担となる人件費をこうして抑えているのである。

 また、地域の企業が古くなって廃棄するPCを再生PCとして学校が利用する、というケースが増えているが、再生PCを利用できるようにするには、初期化やインターネット接続の設定など、さまざまな作業が発生する。これらの作業も、KIUが行っているという。

 「学校の情報化といっても、学校にも教育委員会にも専門家はいないし、人員も足りない。LAN接続はできても、何かトラブルがあった時のヘルプデスクまではできない。柏市は、そういう学校や自治体が手の届かないところをNPOがお手伝いする、ということで、大変成功している例だと思います」と西田先生。


 


石戸奈々子さん


脇本靖子さん


三橋秋彦先生

■ とうきょうED、NPO法人化!?

 先生方の発表の後、NPO法人を運営する石戸奈々子さん(NPO法人CANVAS)、脇本靖子さん(NPO法人キーパーソン21)より、学校・教育支援の事例、NPO法人を経営するメリット等についてお話をいただいた。今回後半の話題が「NPO法人の経営」にまで及んだのには理由がある。今までメーリングリストのネットワークのみで実体のなかった「とうきょうED」はNPO法人化という次なるステップを踏み出そうとしているのである。会の中心メンバーである三橋秋彦先生(墨田区立竪川中学校教諭)に、その概要を聞いてみよう。

「とうきょうEDは、活動をはじめて今年5年目を迎えます。会員数は400名をこえ、前述のように、とうきょうEDを介してさまざまなプロジェクトを実現してきました。しかし、とうきょうEDはあくまでも任意団体なので、契約ができない、企業などからの資金援助を受けられない、など活動に制約がありました。そこで今年は特定非営利活動法人(NPO)の申請を行い、学校と企業をつなぐパイプ役としての活動をより広めたいと思っているのです。」

 総合学習やキャリア教育など、学校が企業と連携するケースは増えているが、まだまだ「NPOとならいいが、直接企業と連携するのは抵抗がある」という学校は多い。NPOがコーディネータとなって学校と企業をつないだり、地域の人材を学校教育の場で有効に活用するなどの事例は今後も広がっていくのではないだろうか。とうきょうEDのこれからにぜひ期待したい。
 

 


(取材・構成/学びの場.com 高篠栄子)


 ※当記事の情報は、公開当時のものです。

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