2002.07.16
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インターネットのルール~危険な情報に気をつけよう 東京都北区立赤羽台西小学校

東京都北区の小学校で6年生を対象に、インターネット社会を生き抜く為に必要な情報モラル、悪質なサイトや有害情報の存在を知り、それらから身を守る方法についての授業が行われました。

「ゲームのダウンロードだ、やってみたい!」
「でも、"6秒40円"って書いてあるよ」
「"接続に関して国際電話を利用して"って書いてある!」

これは、東京都北区立赤羽台西小学校で行われた6年1組の研究授業『インターネットのルール・その4 ~危険な情報に気をつけよう~』のひとコマである。授業を受けた39名の児童たちは、先生が示したホームページを見て「おかしい」と思うところを次々と発見していった。














■詐欺サイトを見抜け!


 『ゲーム機とソフトの無料モニター募集!』

あるホームページをプロジェクターで映す。
書いてある内容を読み始める子どもたち。すぐに声があがる。

「どこか怪しいところはあるかな?」
「あ、お名前、メールアドレスって書いてある!」ある児童が気づく。
「名前入れちゃダメだよ!」すぐに別な児童からも声があがる。

彼らは5年生の時に、個人情報の保護に関する授業を受けており、アンケートや掲示板、チャットなどに自分や他人の個人情報を気軽に書き込んではいけないことを学んでいる。

「保証金ってところで"3000円お預かりします。"って書いてある。お金返してくれないかも!」
「仕事内容の"ゲーム機は差し上げます。"のところ、受け取っちゃったら後で、お金払え!って言われるかも!」
「24800円もするのに、保証金3000円とか、ただでゲーム機が手に入るとは思えない!」
次々と怪しい箇所に気づく子どもたち。
「確かにおいしい話だね」うなずく先生。

他にも、募集している会社の住所があやしいことや、連絡先がメールしかないことなどを発見し、徐々に疑いを深める子どもたち。

「では、どんなところが危険なのか、どんなところに気をつければいいのか、注意書きがありますから読んでみましょう」

それぞれパソコンに向かう。注意書きの画面には、このモニターに応募した場合に考えられる被害やだまされてしまった場合の対処法についてが書かれている。

「こんなホームページのことをなんて言うんだろう?」
「サギ!」
「このホームページを作った人はどんな風にだまそうとしているんだろう?」
「3000円送っても、ゲーム機を送ってこない!」
「例えば、100人が、1000人が3000円を送ったらどうなる?」
「・・・30万円、・・・300万円だ!」
騒然となる教室、金額の大きさに目を丸くする子どもたち。"たった3000円"という軽い気持ちが悪質な詐欺事件を招くことに気づいたようだ。

「では、どんなことに注意すればいいのかな?」
「うますぎる話はあやしいと思う」
「会社の連絡先がメールだけとか、携帯電話だけとかはおかしい」
「モニターでお金を払うのはおかしい」
「そうだね、こんなホームページには気をつけなくてはいけないね」








■今回の研究授業にあたって・・・

昨年末時点での国内のインターネット利用者は5500万人を超え、2005年にはおよそ9000万人に達するだろうと予測されている。そんな中、アダルトサイトや薬物の売買などに関わる有害サイトや、モニター募集を銘打った詐欺、ダイヤルQ2や国際電話などに接続先を変えてしまう悪質なサイトなどの被害の報告が後を絶たない。

この赤羽台西小でも、パソコンを所有している家庭や自分専用の携帯電話を持つ児童は年々、増えており、何もわからない子どもたちがこうした悪質なサイトや有害情報に出会う危険性が高まってきている。

同校は、文部科学省の「次世代ITを活用した未来型研究開発事業」実施校に選ばれており、これまでインターネットによる情報収集とその情報の編集、個人情報の保護、著作権について取り上げてきた。

そこで、今回の研究授業は、こうした悪質・有害な情報の存在を知り、インターネットの世界は「自己責任」であること、情報の善悪を見極める目を持ち、適切な対応ができる判断力を養うことを目的に同校の情報モラル研究部の教職員らによって考案し、このクラスの担任である高橋恒雄教諭が授業を行った。
















■「無料」にだまされるな!

「次に、こんなホームページがありました。」

『無料ゲームコーナー ここにあるゲームはすべて無料で遊べます、遊びたいゲームをクリックしてね!』

すぐに声が上がる。「あ、あのゲームやりたい!」

「これをクリックするとこんな画面が出てきました。(ダウンロード画面と細かい文字の利用規約・プログラム使用許諾書が書かれている。)やってみたいからって、ポンってクリックしていいかな?」
「いけなーい!」
「どこがいけないのかな?」
挙手し、前へ出てくる児童。画面を指差しながら、
「"一切責任を負いません"って書いてあるよ」
他の児童も前へ出てくる。
「"接続に関して国際電話を利用して"って書いてある」
「さっきは"無料"って書いてあったのに、通話料が"6秒40円"だって」
「じゃあ、このゲーム、1分やったら?」
「400円!」
「30分やったら?」
「12000円!」
「オレだったらゲーム、1時間くらいするから大変だ!」
無料という言葉につられたら・・・、と気づいた子どもたち。

「では、この後に注意書きがあるから、読んでみましょう」
この注意書きには、インターネットのダイヤルアップ接続先を書き換えられてしまう手口についての説明と、今現在の接続先の調べ方、万一、変更されてしまった場合の対処法が書かれている。

「今のホームページは、こんな画面(ダウンロード画面)が出てきて、"はい"をクリックすると、知らないうちに海外に繋がってしまうんだ。学校のパソコンは、ダイヤルアップではない方法で接続しています。おうちのパソコンがダイヤルアップで繋がってるとわかる人?」
数名が手を挙げる。
「もし、心配になったらおうちの人に聞いたり、相談できる窓口があるから聞いてみましょう。今のところはダイヤルアップの人だけだけど、いつ新しい手口が出てくるかもしれないから、注意が必要だね」








インターネットは自己責任の世界

授業の最後に今日の授業で気づいたことを書き出して、発表した。

 「サギ目的のホームページがあるなんて知らなかった」(女児)
 「インターネットは便利だけど、むやみにダウンロードしてはいけないことがわかった」(男児)
 「毎日、パソコンをやるけど、海外につながってしまうホームページがあるなんて知らなかったので、気をつけたい」(女児)
 「小さい字で書いてあるのはめんどうで読みません。でもそれが手口だとわかりました」(女児)
 「会員になったらゲームソフトをくれるっていうホームページがあったけど、止めておいてよかったと思いました」(女児)

気づいたことを次々と発表した。

 「インターネットでゲームができるとか書いてあるページは危険だと言うことがわかった。よく読まないで次のページへ行くことは自分にも責任があることがわかった」(男児)

「大切なことに気づいてくれました。よく読まないで先に進むことは誰の責任?・・・自分だよね」

「こんなホームページを作っている人をどう思う?」
「いやな人!」
「いくらお金が欲しくても、人をだましてお金を取るのはよくない」

「そうだね、よくないね。そんな人がいることは悲しいけど、こんなことのない世の中にして行くにはだまされないように注意することが必要だね。一度、だましてうまくいった人は、まただまそうとするからね。」

「ますます広がるインターネットの世界は便利だけど、気をつけないといけないことがわかったね。」という先生の言葉で授業は締めくくられた。

「これで、この子たちが完全に理解したわけではないかもしれない。だけどインターネットを利用する時、この授業を少しでも思い出してくれれば」と授業が終わり、この研究授業の主任である野間俊彦先生は語った。

その後の研究協議会では、こうした取り組みは早期に行った方がよいことや、情報モラル指導の全般にわたるマニュアルの必要性、次回はインターネット売買などついても取り上げて行きたいことなどが話し合われたという。今後の赤羽台西小の展開に期待したい。


(取材・構成:学びの場.com)


■東京都北区立赤羽台西小学校のホームページ http://www.kita-tky.ed.jp/~es32/

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