次世代人材育成フォーラム 子どもたちの健全な成長を目指して渋谷区立鉢山中学校実験授業
3月11日金曜日 第2回「こんな"仕事"ってあるの! 子どもたちの知らない"仕事"を探ってみます」
授業風景 |
仕事をせず、進学もしない若者「ニート」(2003年の推計は厚生労働省によると全国で52万人)対策として財団法人社会経済生産性本部と渋谷区立鉢山中学校が協同して実施したキャリア教育の実験授業が、3月9日と11日に公開実施された。鉢山中学校では3年前から「総合学習」の時間を利用して連続4日間の就労体験をさせるなど、子どもたちの3年間の成長に合わせて計画的なキャリア教育を行ってきた実績を持つ。
4日間(来年度からは5日間)という設定は、1日2日では仕事のおもしろさも苦労もわからない、それがわかってくるのは3日目ぐらいから、という受け入れ先の声を反映してのこと。生徒たちにもよりインパクトのあるものとなり、「このまま働き続けたい」という感想を持つ子がでてきたり、保護者から「たくましくなって帰ってきた」と言われるなど好評を博している。また、生徒のやる気と成就感を上げるため、教師が用意した職場に生徒を任意に割り当てるのではなく、生徒自ら「やりたい」「興味がある」と思える体験先を選ばせていることも特長的だ。最終的な目標は、キャリア教育の体験を進路を選ぶ際の有益な判断材料とすること。 9日の公開授業では1年生を対象に「働くとはどういうことか」についてビデオ視聴やディスカッションを通して考えた。11日は、子どもたちが普段なかなか接する機会がなく、見知りしづらい職業に就いている職業人を招いて仕事の内容について聞くというもの。協力してくれた職業人ゲストは、NHK番組プロデューサー、ニューオータニの常務取締役、携帯端末開発者、NGO日本民際交流センター広報マネージャー、アメリカ大使館職員の5名とそうそうたる顔ぶれである。
会場は鉢山中学校の体育館で、授業を受けるのは1年生の生徒46名。渋谷という土地柄子どもが少なく、これで学年全員である。授業を受け持つのは鉢山中学の仙北屋正樹先生。会場にはNHKはじめテレビの取材陣に教育ビデオ制作スタッフ、教育関係者、受け入れ先の企業関係者など多くの取材・見学者が集まった。公開授業は5時間目と6時間目を利用して実施された。 今日の授業の生徒にとっての目的は、「人は何のために働くのか?」「いろいろな職業を知ること」の2点。授業の導入として、生徒の前に座った職業人ゲストがそれぞれどの職業の人かを当てさせた。ゲストは実際は5名だが、2名、ダミーゲストを混ぜてある。生徒たちが全員予測した後、正解を発表。中学生らしい歓声があがるなか、なごやかなムードで授業は進んでいく。5名の職業人について1名ずつ前に出てきてもらい、実際にその職場にお邪魔した生徒たちがその職業人の紹介や仕事についての紹介、感想などを述べていく。鉢山中学では90%が自分の希望する職業のところへ体験に行っているという。選んだ職業がそれぞれの子どものキャラクターと合っているように思え、興味深い。 「従業員にしか入れないところに入れて楽しかった」 それらの発表をもとに、生徒たちがそれぞれの職業について感想や質問を短冊に書き、前に設置されているボードに貼り付けていく。 6時間目。体育館の後ろに職業人5名分のブースを作り、生徒は自由な順番でそれぞれのブース全部を回り、質問をする。1ブースの質問タイムは5分間。 |
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職業予想をしている生徒たち |
ブースでの質問タイム |
◆NGOのブースにて ◆NHKプロデューサー ◆ホテルの取締役 ◆アメリカ大使館 ◆携帯端末開発者 |
生徒が書いた質問や感想メモ |
ゲストたちは惜しみなく質問に答え、どこも大人でも興味深い話が展開されていた。
上記のようにボードの左右にわけて意見を書き、右と左はどう違うと思うかと生徒に問う。 「左は他の人のため。右は自分のため」 最後にゲストの職業人から今日の感想と生徒たちへのメッセージが贈られ、生徒たちからゲストへお礼を言って公開授業は終了。あっという間の2時間だった。退屈したり、授業を放棄するような姿勢の子どもの姿は見受けられなかった。実際、鉢山中学校のキャリア教育は生徒たちにも好評なのだそうだ。 今回の2日間のフォーラムは、平成17年度よりスタートする、政府によるキャリア教育推進プロジェクトに先駆けて行われたもので、新しいキャリア教育のプログラムモデルを開発するという前例のない取り組みであった。 もてあまし気味な総合学習の時間を有意義にし、ニートやフリーターの増加防止にも一役買うと思われるこの取り組みは、生徒、社会の双方にとって非常に有意義であり、両者の有効な架け橋となることだろう。 (取材・文:小股千佐) |
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