2004.06.01
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親子で最先端の科学実験! 日本科学未来館実験工房

お台場の人気スポット、直径6.5mの巨大な地球儀が目印、館長は宇宙飛行士の毛利衛さん、と言えば? そう、日本科学未来館です! 科学技術創造立国を目指し、科学技術への理解を深めるための拠点として2001年7月に開館した日本科学未来館。「科学技術はなにも特別なものではなく、誰にでもひらかれた文化だ」とは毛利館長の言葉。最先端の技術を、見て触れて体験できるオープンなスペースは、いつもたくさんの家族連れや子どもたちで賑わっている。


シンボル展示のGeo-Cosmosは、人工衛星から見た地球の映像を準リアルタイムで見ることができる

 

4月17日土曜日、この日は午前中に「バイオ初級コース」、午後からは「超伝導コース」と「ロボット運動系コース」の3つのコースが開催された。
「バイオ初級」では、身近な食べ物からDNAを取り出し、遺伝子の役割と生命の不思議さについて考える、というもの。参加は小学校4年生以上ならだれでもOK。実験道具はすべて研究者が実際に使っている道具と同じ物。遠心分離機など、学校の理科室にはないような機械も使用するという。テーマも環境も最先端。どのコースも実に本格的な講座なのだ。

 


講師の八杉泰さん


好奇心一杯の子どもたち

■さあ、実験室にGO!

まずはバイオコース。集まったのは、4年生から6年生の小学生6名と、その父親、母親をあわせた10名。講師を務めるのは八杉泰さん。その他、たくさんのボランティアの人たちもサポートとして参加。
「みんな、細胞って見たことある?」
「見たことある!」「テレビで人間の細胞を見た!」
「細胞ってどのくらいの大きさだと思う?」
「1ナノ!」「1マイクロメートル!」
反応のいい子どもたちだ。見たい、知りたい、という好奇心がそのキラキラした目から伝わってくる。
「今日は、ニワトリのレバーから、DNAを取り出すという実験をします」
実験道具の使い方の説明を受け、いよいよ実験!

乳鉢でレバーをすりつぶす。DNAのながーい鎖が切れないようにそうっと 細胞溶解液を加え、細胞の核の中のDNAを溶かし出す 遠心分離機にかけて余分なタンパク質を分離させる
DNAが入っているのはどっち? 液体! ということで上澄み液をチューブに移す ウォーターパスに入れて過熱。タンパク質が熱変化する。 また遠心分離機にかけると、タンパク質が下に沈殿
必要な上澄み液をチューブに移す また遠心分離機にかけ、過熱、を繰り返す きれいになった大切な液体。この中にDNAが!
DNAを肉眼で観るためにエタノールを入れる。 チューブの中に白くふわふわした物体が! ガラス棒にくるくると蒔き付けて取り出す。これが長ーくつながったDNA

「DANがまさか取れるとは思わなかった」
「DNAは、ふわふわしたほこりみたいだった!」
 2時間におよぶ実験で少々疲れ気味の子どもたちではあったが、自分たちで取り出したDNAのサンプルをもらって大喜び。
いっしょに参加した大人たちも
「面白かった」
「次はロボットのコースも参加したい」
と少年の顔をのぞかせていた。

 


わあ~、本当に浮いてる!!

 

■超伝導コース

 ある物体が臨界温度以下に下がると、特殊な現象が起こるという。それが超伝導で、特殊な現象とは、「電気抵抗ゼロ」「マイスナ-効果」「磁束の量子化」「ジョセフソン効果」の4つ。そのうちの一つ、「マイスナー効果」とそれに関連した「ピン止め効果」を体験しよう!

超伝導体を液体窒素で臨界温度(今回の場合マイナス180度)以下に下げる。液体窒素が目に入ると危ないのでゴーグルをつける 冷やした超伝導体に、磁石を近づけると、反発する。超伝導体は磁石になったの? (磁石にはなっていないが、磁石のどちらの極を近づけても反発する。これをマイスナー効果というのだそう) 超伝導体の上に磁石が浮いている! これがピン止め効果。ちょっとやそっとでは磁石を離すことはできない。まさにミステリー!
 
棚には部品がズラリ。まさに工房という感じ

 

■ロボット運動系コース

 人気のロボットコース。作り方は簡単。小学生でも自分でテキストに沿って組みたてていく。でも、思うように動かすためにはちょっと工夫が必要…。他に感覚系コースもあり、そこではセンサーについても学ぶ。 

レゴマインドストームを使って、4足歩行をするロボットを作る

とりあえず動くロボットはできたけど、どうやったら歩ける? 左右に曲がるためにはどうする? 子どもも大人も頭を悩ませながら組みたて 最後のお楽しみ! リモコン操作で、ロボットレース! コースをはずれたり、ぶつかって壊れたり… 優勝は誰の手に?
  ■他の科学館ではできないことをやる!

 実験工房の運営に企画段階から携わっている秋田博文さん(運営業務室運営サービスグループ)、長神風ニさん(企画開発室展示企画グループ)にお聞きした。

「昨今、理科離れが問題になっているのはご存知のとおりです。実験工房では、とにかく体験して、理科は決して難しいものではないと知ってもらうことを目的としています。わあ、面白い、不思議だな、という気持ちを持ってくれれば、そこから、自分で調べたり、発展させたりしていくきっかけになると思うのです。」

一つの新規コースの開発には、およそ6ヶ月間の準備期間を費やす。

「他の科学館ではできないことをやろう、というのが当初からの我々の方針。参加者は子どもであっても、最新の機器を使って、最先端の実験をやるのが未来館の特徴です。」

こうしてできたのが、超伝導、レーザー、バイオ、ロボット、化学の5コース。一番人気はロボットだそうだが、ダイヤモンドを合成するという化学も個人的にはとても気になる。
さて、もうすぐ夏休み。どこに行こうと迷ったら(迷わなくても)ぜひ日本科学未来館の実験工房をお勧めだ。

(取材・執筆/高篠栄子)


日本未来科学館の公式サイトはこちら
http://www.miraikan.jst.go.jp/index.html

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