2006.01.24
  • twitter
  • facebook
  • google+
  • はてなブックマーク
  • 印刷

科学の楽しさを知る2日間「アキバ・理科室2005」

科学の楽しさを知る2日間「アキバ・理科室2005」

子どもの理科ばなれが進んでいると言われているが、それは単に理科の持つおもしろさに気づいてないだけではないのか。今、必要なのは、そうした知的好奇心を満たしてくれる場の提供ということで、12月24日・25日の2日間、秋葉原ダイビルを会場に「アキバ・理科室2005」が開催された。会期中は、理科実験教室や理科グッズバザールを見ようと訪れた親子連れで賑わった。


理科実験教室にて「クリスマスイルミネーションをつくろう」

◆はんだを扱ってクリスマスイルミネーションに挑戦 ~理科実験教室~

 理科実験や科学工作の楽しさを知ってもらうには、やっぱり自分で体験してみるのが一番。「理科実験教室」には、お父さんやお母さんに連れられて多くの小学生が参加した。
 その中の「クリスマスイルミネーションをつくろう」は、今回のアキバ・理科室がクリスマスと重なったことから用意されたもの。基盤にコンデンサやトランジスタなどの部品を、はんだ付けしてイルミネーションを完成させるというものだが、この教室で初めてはんだに触れるという子どもが多い。それでも、子どもたちは、やけどに気をつけながら、細かい作業に取り組んでいった。
 ちょっとしたミスで部品を壊してしまいかねない電子工作を小学校で行うのは難しく、家庭で電子工作をする子どもも少なくなっている。しかし、工学の世界に興味を持ってもらうのに、機械の裏側が見られる電子工作は有効な手段。教室では、先生の説明を聞きながら、抵抗器やコンデンサ、トランジスタなどを基盤の正しい位置に取り付けていく。かなり細かい作業のため説明だけでは分かりにくい部分もあり、先生が作った見本を参考にしながら、はんだ付けを慎重に行っていった。
 すべての部品を取り付けてから電池を付けると赤と青のLEDが点滅を開始。そのLEDの点滅が光ファイバーを伝わって、きれいなイルミネーションとなる。最後にモールで飾りつけをして、やっとクリスマスイルミネーションは完成。こうして、苦労して作った作品を記念に子どもたちは教室を後にした。


空気と音のサイエンス教室

 また、「空気と音のサイエンス」の教室では、学校の理科の授業では見ることができないような実験の数々に、子どもたちは目を輝かせた。-200℃の液体窒素の中に風船を入れると、萎んで固まってしまうが、それを取り出すと再びふくらんで元に戻る様子に思わずビックリ。さらに、水を入れた一斗缶をコンロで温めてから冷やすと、何もしないのにへこんでいくのを見て、周りの空気が缶を押していることを実感できたようだ。


脳科学者の茂木健一郎氏

◆知りたいと思う気持ちが科学をおもしろくする ~理科セミナー、デモンストレーション~

 アキバ・理科室には科学の楽しさを教えてくれるゲストも訪れたが、24日に開催された理科セミナーの講師として登場したのは、脳科学者の茂木健一郎氏。「科学の醍醐味は宇宙や我々が、どうなっているか知ることにある」と熱く語る茂木氏。分からないことを知るという魅力は大きいという言葉には納得させられるものがある。
 茂木氏はファイマン・ダイヤグラムで知られるリチャード・ファイマンや、DNAの二重らせん構造を発見したフランシス・クリックなど、天才と呼ばれる彼らが、いかに変わり者であったかを実例をあげて紹介。変わり者がいる自由を許すことが大事として、権威をありがたがって、変わり者を認めない日本の風潮に対して釘を刺した。
 科学の偉大なる発見に必要なものとして茂木氏があげたのが「Serendipity」(偶然にも幸運に出会う能力)。ただし、その偶然をつかむためには、普段からトレーニングを行っておくことが大切で、それを怠らなかったものにのみ偶然が作用して、偉大なる発見につながるということを教えてくれた。


ザ・ブレッドボードバンドによるデモンストレーション

 そして、この2日間で2回のデモンストレーションを行ったのが、ザ・ブレッドボードバンドのメンバー。ブレッドボードというのは、ICやコンデンサを穴に差し込むことで電子音が奏でられる機器。その様子は楽器の演奏というより、まるで何かの実験をしているようだ。どのような音が出るかは演奏するメンバーにも分からないので、最初は雑音のような音が鳴り響くが、手探りで調節するうちに段々と音楽が形成されていく。
よくDJがレコードをターンテーブルで回すのを見るが、ブレッドボードバンドのメンバーは、iPodに記録した音を、プログラムを改造することで、それと同じような状態を作り出す。岐阜からインターネットを通じて参加したメンバーも、カセットテープの磁気ヘッドの音声を変化させながら演奏に加わった。今はほとんどの音楽に、コンピュータの電子音が使用されているが、その仕組みが見えるブレッドボードによる演奏は、電子科学の魅力が目と耳から伝わってくる。


理科グッズバザール会場

◆ズラリとそろった理科教材を手にとって体験 ~理科グッズバザール~

 普段は手に入らないような、理科の実験や観察に使われるグッズを一堂に集めたのが「理科グッズバザール」。来場者は、ここで展示されたグッズを、自由に手に取って、気に入ったものを購入していったが、その中でも目を引いたグッズを何点か紹介する。


 
「プランタリウム」 フラスコのような容器にカラフルなジェルが入っていて、これで種の発芽を観察できるというもの。ジェルの中に種を植えて日当たりの良い場所に置いておけば、水を与えなくても1週間ほどで発芽する。半透明でカラフルなジェルは、部屋のインテリアにもなり、発芽の様子がよく分かる。アロエ、バジル、スミレ、ヒマワリなど全7種類がある。

 「美しい鉱物標本」 10種、15種 ケースの中にホタル石や紫水晶などの鉱物が収められているが、単に眺めるだけでなく、大きな標本なので、手にとって重さや感触を確かめることができる。鉱物の性質は説明されるよりも実際に手に取ってみるのが一番。方解石を文字の上に置くと、屈折率の関係で、下の文字が2重に見えたりするのもおもしろい。

 「とうふつくりセット」 家で手製の豆腐を作ってしまおうというのが、このグッズ。まずは大豆を買ってきて生呉を作り、豆乳を搾り出さなければいけないが、こうした苦労も食育の一環。ここからが、「とうふつくりセット」の出番で、豆乳にニガリ液を入れて豆腐の素を完成させたら、それを組み立てた箱に流し込む。これで水分を抜けば豆腐の出来上がり。見た目は悪くても、自分で作った豆腐は一味違うはず。

 「金属探知機」 スイッチを入れて金属を近づけると反応して、ビープ音が鳴る仕組み。体に近づけて身に着けている金属を感知させてみたり、砂の中に埋めた釘などを探させてみたりするとおもしろい。1円玉や10円玉に金属探知機を近づけて、どういったものに反応するか試してみるなど、工夫次第でいろいろと楽しめそうだ。

 「ソーラースコープ」 太陽を直接見るのは危険なので、日食の観測には、下敷きなどを使ったものだが、このソーラースコープを使えば、ずっと空を見上げていなくても、楽に太陽を観測することができる。太陽の光はスコープを通して、本体の箱の中に映し出される。それを観測すれば、日食で太陽が欠けていく様子や、黒点が変化する様子も一目で分かる。


 開催期間がクリスマスだったこともあって、理科グッズバザールで展示されていた教材を、子どものプレゼントとして買う親の姿も見受けられた。このイベントを主催した特定非営利活動法人産学連携機構は、昨年11月には「アキバ・ロボット文化祭2005」を開催しているが、子どもの科学する心を育てる次なる仕掛けが期待される。



  (取材・文:田中雄一郎)

pagetop