2004.02.12
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みんなできもちよく使えるトイレに 神奈川県平塚市立南原小学校

臭い・汚い・暗いと入りにくいイメージがつきまとう学校のトイレ。今回、神奈川県平塚市立南原小学校保健委員会が行った発表会のテーマは「みんなできもちよく使えるトイレにしよう」。子どもたちは発表当日までに学校のトイレについての全校児童アンケートや、インタビュー、実態調査など様々な活動を行った。また、発表の後には日本トイレ協会の村上八千世さんを講師に招き「学校トイレ出前教室」を開催。日ごろは恥ずかしくて、なかなか話題にしにくいトイレやうんちについて考える一日となった。




「理想のトイレは
金のトイレ!!」








 校内のトイレ掃除には
2時間かかるそうです






みんなで大事に使おう!!







日本トイレ協会の講師
村上八千世さん







便器のどこに足を置けば
いいのかな?








毎朝、よく観察してみよう!






今朝のうんちは
どれだった?





◆保健委員会が企画した手づくり発表会

 トイレの掃除について、平塚市内の小学校では20年ほど前から子どもではなく、市が委託している業者が行っている。同校の場合、トイレットペーパーの補充は保健委員会が担当しているが、校内のトイレを回ってみて、周りにこぼしてしまう子や、使用後に流していない子がいることに気付くようになり、開催を予定していた学校保健委員会での発表テーマとして「トイレ」を取り上げることに決定した。当然、「トイレなんて恥ずかしい」「クラスの友だちの前でトイレの話をしたくない」という子どももいたが、自分が受け持つトイレを見て回り、全校児童を対象にしたアンケートを行っていくうちに、みんなにやる気が芽生えてきたという。委員会のメンバー20名は、アンケート、インタビュー、冊子、掲示物、司会と担当を分担し、それぞれ取材活動や、冊子や掲示物、パワーポイントの資料を作成。発表当日は直前までリハーサルを行って、本番を迎えたのだった。

  ◆みんなできれいに!!保健委員からのお願い

まずは、全校児童を対象に行ったアンケートの結果発表から。全校児童299名を対象に、「1日に何回トイレに行きますか?」「トイレに行くのをガマンしやすい?」「もしトイレでしっぱいしてしまったらどうしますか?」など6項目について質問した。「学校のトイレは入りやすい?」という質問に対しては男女共に入りにくいと答えた子どもが多く、その理由では「きたないから」「くさいから」と言う答えが圧倒的に多かった。保健委員以外の子どもたちも日ごろから「きたないから入りにくい」と感じているのである。また、「学校でうんちがしたくなった時、学校のトイレでうんちをしますか?」という質問では、男子で「できるだけしない」を含む「しない」子が目立った。その学校でしない理由として、「はずかしい」「トイレがきたない」「からかわれる」などの回答があげられていた。

 次に、南原小のトイレの状況について。保健委員の子どもたちが見て回ったトイレの状況をスライドで発表した。便器の周りにこぼれたままになっている様子や、ちらかったトイレットペーパーなど、ひとつひとつの報告に子どもたちから「うわぁ」「いや~」「きたなーい」と声があがる。

 そして、インタビュー。トイレ掃除を担当している業者の人へ、全部のトイレを掃除するのにかかる時間や、トイレの使い方で気をつけて欲しいことなどを質問した。「トイレットペーパー以外のものを流すと詰まってしまうこともあります」と、実際にトイレで見つけたお菓子の袋を見せ、注意を呼びかけた。

 最後は保健委員会メンバー全員が前に出て、「みんなで使うトイレです。みんなで大事に使いましょう」と締めくくった。

 
アンケート結果や実態調査をまとめ、掲示しました


◆うんこで健康状態がわかるよ

「普段、皆さんはうんこの話なんてしないかな?」

 こう質問をするのは、日本トイレ協会の村上八千世さん。トイレにかかわるコンサルティングを本業としているが、年に10回ほど、各地の学校を回り、「学校トイレ出前教室」を行っている。

 自分の身体から外に出てしまったら、汚いもの、見たくもないと思いがちなうんこやおしっこだけど、よくみるといろんなことがわかる。「うんぴ」「うんにょ」「うんち」「うんご」という4つのネーミングを使って、その色や形、ニオイで身体の健康状態がわかることを説明。たとえば黒っぽくてかたい「うんご」は野菜不足のしるしだ。それから、もしトイレで、はみ出してしまったら、紙で拭き取ろう。手についても慌てないでしっかり手を洗えば大丈夫だということ。うんこは大部分が水分で、あとは食べたもののカスや、古くなった細胞、おなかの中にいる菌の死がいであること。そんな話を子どもたちは時に「え~!」と驚きながらも真剣に聞いている。特に「涙とおしっこを比べたら、おしっこの方がきれい。おしっこが臭くなるのは床にいるばい菌がこぼれたおしっこに棲みついてしまうから」という話には誰もが目を丸くしていた。

 最後に、トイレの使い方のデモンストレーション。みんなの前で保健委員の男子が正しい和式トイレの使い方を実演した。足の置き方は?今日のうんちはどんなのか見てみよう、ひとつひとつの動作を村上さんがアドバイス。便器を拭き取る仕草には全員から拍手喝さい。村上さんも「このように汚れたらちゃんと拭きましょうね」とにっこり。

◆メンテナンスや利用マナーが重要に

 この出前教室について村上さんは「学校のトイレでうんこをすることを恥ずかしがる子どもが多いことがきっかけでした。生きるために必要なことなのに、恥ずかしがってしたい時に用が足せない。汚いというイメージだけが先行して、自分で汚した便器も拭くことができないという状況を緩和したいというのが狙いです」と話す。最近のTVCMが清潔志向をあおることも影響していると言い、「そんなに恐がらなくていいよ」と伝えたいと村上さん。

 臭い、きたない、暗い・・・学校のトイレ事情は、各学校・教育委員会でも問題になっており、明るく入りやすいトイレに改修したり、家庭環境の変化に合わせて全てのトイレを洋式に変える学校も登場し始めているが、ハード面にばかり目を向けるのではなく、メンテナンスや利用する側のマナーの指導こそ重要だ。村上さんは「これを機会にトイレの利用マナーを考えてもらい、長期的に取り組んでもらいたいです」

(取材・編集:学びの場.com)


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