心の教育の時代。道徳で何を教えるのか
教科書もない、テストもない、通知表に評価欄もない。他の教科や、レクレーション、受験指導の時間に振り替えられる確率ナンバーワンとも言われている道徳。そんな道徳の授業づくりに全力投球し、互いにその実践を報告し高めあう「道徳教育改革集団」。なぜ、道徳なのか、その秘密をさぐるべく、同会の主催する「第14回道徳教育改革フォーラム」に参加した。(最後にプレゼントのお知らせがあります)
道徳教育改革集団代表の深澤久氏 羽島悟先生。生徒指導担当となり、地域の商店街、警察署などと協力して、荒れた中学生を指導した経験を語る。
土作彰先生。点字メニューを企業から取り寄せて「バリアフリー」をテーマに授業を行った。 同会の団長の佐藤幸司先生。意外性のあるネタ探しには定評あり!
原口先生 高田先生
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以前、学びの場文庫でも紹介したが、「道徳教育改革集団」のメンバーが実践記録を出し合って出版した『とっておきの道徳授業I、II』(日本標準)は、重版を重ね、教師達の間でちょっとした話題となっている。8月には『とっておきの道徳授業 中学校編』も完成し書店に並んだばかり。売れ行きは好調で、早くも中学校編の第2弾の企画が進行中だという。 初日7日は実践記録を持参するのが参加の条件。先生を対象とした、限定30名の勉強会だ。互いに厳しく検討し合い、確実な力をつけるのが目的。辛らつな意見も飛び交い、物見遊山的な参加はちょっと気が引ける。 ●面白い!もっと見たい!そんな授業の連続 2日目の口火を切ったのは、代表者の深澤久先生の開会講座「なぜ今、道徳教育なのか」。 「悪いことははずかしい、そういう美意識をからだに染み込ませる、それが道徳の役目だ」 「日本は法治国家なのだから、義務教育で法律について学んでもいいはず。しかも、子どもたちが理解できるよう、身近な生活の場面で教えることが大切なのです」 ちょっと過激な授業かも知れないが、いじめがなぜいけないか、あれこれ理屈を言うよりもストレートに子どもの心に届くに違いない。 ●道徳教育の魅力は何か? 「道徳には教科書がない。指導要領の縛りもない。だから教師が自由に企画できる。そこが面白いところです。それからもうひとつ、道徳の授業をきちんとやる、それだけで子どもたちは確実に変わる。だからみんなハマるんです。」 道徳教育改革集団は15年前、「正義と勇気を育てる教育」を目的として発足。以来、インターネットや今回のようなセミナーで、メンバーの先生がたが独自のスタイルで開発した道徳教育の実践を公開し合い、評価し、高め合ってきた。 「道徳の副読本をご覧になったことがありますか? そこには誰が聞いても否定できないような“いい話” は書かれていますが、徳目を並べ立てるだけでその先がない。また、実生活に根ざしていないから、子どもたちの行動に生かされない。」 報告された実践例をいくつか紹介しよう。 ◆ 夢をもち限界まで頑張る気持ちを 鹿児島県西之表市立榕城中学校の原口栄一先生は、マンガを使って授業を行った。 ◆「あっ」と驚く導入、意外な素材の組み合わせで、 熊本市立武蔵中学校桃崎剛寿先生の授業はこんな展開で始まる。 だれもいない。 そして、紙芝居。広島で被爆した女の子の話である。千羽鶴を折れば命が助かる、と信じて鶴を折り続けたが12歳で短い生涯を閉じる、この紙芝居の主人公が佐々木サダコさんなのだとわかる。モンゴルから日本に来ていた留学生がこの話を知り、本国に持ちかえったのが広がり、先の歌となった。日本では全く知られていないが、アメリカやスペインなど海外では広く知られ、クロアチアでは「サダコ物語」は授業で必読書となっているという。 この歌は英語版も出ていて、たまたま英語の教科書に歌詞が掲載されているのをみつけ、それをこの授業の締めくくりとした。意外な素材の発見と組み合わせの勝利!という感じの授業だった。 ◆ 何がいい、悪い、と教えることだけが道徳ではない 島根県松江市立大庭小学校の高田保彦先生の授業は「ある少女のメッセージ」と題されたもの。 次に、アメリカメイン州での平和集会で、シャーロット・アルデブロンという13歳の少女が話したメッセージ(インターネットで入手したものを配布。高田先生が読む。 そして、ブッシュ大統領、小泉首相、国連のイラク問題についての見解を紹介。 最後に、ジョンレノンの『イマジン』を流しながら訳詞を読む。 以上が実際の授業の構成である。報告の中で、参加者もシャーロット・アルデブロンのメッセージを読んだが、読みながら、そっと涙をぬぐう人の姿も見られた。 「実は、この授業のあと、みんなで胸に黄色いリボンをつけたらどうだろう、とある子が言い、クラス全員のリボンを作りました。黄色いリボンは、9.11のテロのあと、ニューヨークで平和を訴えるために集まった人たちがつけていたのです。子どもたちは、全員黄色いリボンをつけて登校するようになりました。平和のためにできることを自分たちなりに考えて、自主的な行動に移したのです。
(取材・構成:学びの場.com)
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