2003.07.15
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授業で使える素材がいっぱい「地球&宇宙のミニ博物館」 株式会社渡辺教具製作所

地球儀・星座早見盤をつくり続けて66年の製造会社が、自社内にミニ博物館を開設、学校や地域住民に開放している。今回は、株式会社渡辺教具製作所の「地球&宇宙のミニ博物館」を訪れた小学校の子どもたちの様子も交えてレポートする。

 



太陽モデルで大きさ比較






 
 
今の時期、見える星座は・・・




 


 
子どもたちの質問に答える
渡辺さん









 
引率の嶋田先生も一緒に・・・










地球儀の製作工程が見学できる。中には特注品も・・・。


 







1枚1枚丁寧に職人の手で
貼られていく地球儀



 




 
 
社長の渡辺美和子さん










直径106cmの地球儀が目印


 
 
 
 

■プラネタリウムに子どもたちの歓声が

 入梅のどんよりした空の下、「こんにちは!」と元気に入ってくる子どもたち。今日は、埼玉県草加市立稲荷小学校6年生の子どもたち12名が、学校からほど近い「地球&宇宙のミニ博物館」を訪れた。

「こんにちは」と穏やかな笑顔で迎え入れるのは、株式会社渡辺教具製作所取締役社長の渡辺美和子さん。渡辺さんは、昭和12年に創業された地球儀・星座早見盤製造会社の4代目。先代からこの事業を受け継いで8年目になる。

 子どもたちがここを訪れるのは2回目。前回は、渡辺さんから地球儀の歴史や大きさなどを学び、製作工程を見学した。学校に戻ってから、特に興味をもったコロンブスについて、地球儀と星座盤を用いて世界を回ったのはなぜか、どうしてインドだと間違えてしまったのかなど調べたという。

「今日は天文の勉強をしようと思います」とオレンジ色の大きい球体を抱えた渡辺さんを子どもたちが取り囲む。
 このオレンジ色の球体は、太陽モデルでこの球体を太陽に見立てたときの各惑星の大きさと距離
間がわかるようになっている。
「太陽ってこんなに大きいのか~」と子どもたち。
 他にも地球と月の1億分の1スケールの模型や、月の高低差や地質を表した月球儀、火星儀、など
渡辺さんから次々と説明を受け、子どもたちはすっかり惹きこまれている様子。

 渡辺さんは天球儀を手にする。
「これは、天球儀と言って、ちょうど空の星を鏡に映したように見えます。だから左右が実際と
反対になっています。それから、みんなの知っている12星座。あれは、太陽の軌道上にある星座のことなのよ」と太陽の軌道周辺を指し示す。星がちりばめられた球体を見つめ、自分の星座を確認している子もいる。

「それでは、プラネタリウムを見ましょう」
「わー!」子どもたちは喜んで各自の椅子を用意する。ここでは、プラネタリウムを鑑賞するこ
とができるのだ。

 真っ暗な室内に無数の星が輝き始める。思わず自分たちの居場所を忘れてしまいそう。

「この白っぽいもやがかった部分は“天の川”よ」
「あーっ!」子どもたちから歓喜の声があがる。きっと誰もが七夕の彦星と織姫を想像したに違
いない。
「これが夏の大三角形」「あ、それ自然教室で見たことあるよ!」「どれ?どれ?」
「星は一度に覚えられないから、ひとつずつ覚えていけばいいの。例えば、一番明るい“ベガ”
をまず覚えてみるといいわね」と渡辺さんからアドバイス。

 最後に渡辺さんへの質問タイム。前回の見学の後、みんなで質問を考えてきたという。
「なぜ正確に星の位置がわかるのですか?」---昔は人間の目や望遠鏡での観察しか方法がありま
せんでした。でも、300年前のオランダの天球儀は現代のものとほとんど同じで正確です。地面は歩いてみないとわからないけど、星はその場でずっと観察していればわかりますね。「へぇ・・・」と感心する子どもたち。
「なぜ星には名前がついているの?」、「流れ星はどこへ行ってしまうの?」などいくつかの質
問に渡辺さんが答えて授業は終了した。

 子どもたちを引率した同小の嶋田弘之先生は、授業の取り組みについて、「総合的な学習の時間で、「21世紀に輝く草加~稲荷の歴史と未来~」というテーマのもと、グループごとに課題を持って取り組んでいます。自分たちの故郷である草加市を大人になってからも誇りに思って欲しいという願いを持って学習を進めています。
 近くの神社の歴史を調べたり、地域に多い苗字について調べるなど様々ですが、その一つがこの『草加・八潮工業団地には一体どんな工場があるだろう?』というテーマです。昨年まで学校の近くにある工業団地数社を訪問し、調べ学習をしていました
が、今年度は、このテーマにかける時間が昨年度から比べると若干減りました。そのため見学時間や訪問先も絞り込まなければなりません。その中で、子どもたちになじみのある地球儀を扱っている渡辺教具さんは、魅力ある会社でした。」と話し、「子どもたちの興味関心で授業の進め方や方向性は多少変化します。地球儀以外にもこちらに展示されている岩石に興味を示していますので、この先どのように研究が進むか楽しみです。」

■授業のヒント探しにも活用を

「ここをオープンする際、ただ博物館として見せるだけではなく、勉強会などフレキシブルに活用できるよう設計しました。例えば、室内の周囲にある低い展示棚は、展示物を移動させると椅子として、また、作業台として利用することもできます。これらは学校の先生方が設計のアイデアをいろいろと提案してくださったのです。また、開設にあたっては、草加市が行っている“草加市うるおい工房支援事業”に認定され、経費の一部を助成していただきました。つまり、ここは産官学でつくりあげた博物館。ですから、地域の会合で利用していただくこともあります」と渡辺さんは開設の経緯を話してくれた。

 また、地域の学校評議員でもある渡辺さんは授業での利用を歓迎しており、「先日は県内の高校の先生方が研修にいらっしゃいました。先生方はいろいろと授業のヒントを見つけられたようでした。子どもたちが直接、見学することができない場合でも、まずは先生方がここでアイデアを見つけてくれれば、と考えています」と話す。

 ここは平日のみの開館ではあるが、毎週火曜日には専門の解説員が常駐しており、詳しい解説を聞くことができる。また、午前中ならば、職人による手貼りの工程を見学することも可能だ。1枚1枚、正確かつ丁寧に貼り合わせ地球儀ができあがる様子は、大人でも見ていて飽きないものだ。

「私は学校の先生方を幅広くなんでも対応できるホームドクターだと考えています。でも、ホームドクターで対応しきれない場合、専門医にお願いしますね。私たちのような専門家はそんな存在ではないでしょうか。中には、外部の人に聞くことを頑なに拒む先生もいらっしゃいますが、どんどん学校の外へ出て欲しいですし、先生方のアイデアや意見も聞いてみたいです」と話し、今後はソフト面の充実により力を入れていきたいという。授業の素材がたくさん詰まったこの施設、ぜひ活用して欲しい。

 

(取材・構成:学びの場.com)


 

■「地球&宇宙のミニ博物館」ご案内
URL:http://blue-terra.jp/mini.html

 ※当記事の情報は、公開当時のものです。

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