2002.10.22
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100以上の科目を自由に選択できるフレキシブルスクール 神奈川県立横浜桜陽高等学校

1日90分×4コマの授業の中から自分の学びたい科目を選び、生徒が自由に時間割を作ることができる。提携している大学や専門学校で学んだり、学校外でのボランティア活動や、英検などの資格取得も単位として認められる。そんな新しいタイプの学校が、平成15年、横浜市戸塚区に誕生する。新校の名称は、神奈川県立横浜桜陽高等学校。県立汲沢高等学校と県立豊田高等学校が再編統合することによって生まれる、神奈川県初の「フレキシブルスクール」である。(2002/10/11)

 

工事中の吹き抜けスペース。ここは地域に開放する予定


職員室も改修しガラス張りでオープンに


将棋の授業には、日本将棋連盟の会員さんが講師として来校


フィットネスの授業。YMCAのスポーツインストラクターが講師に








演劇の授業。国語教師が講師を務める




王尾冨美子教頭先生


バスで下校する豊田高校の生徒たち

 

 

 来年4月から新校の施設として利用される汲沢高等学校では、改修工事の真っ最中。平成13年度より、新校で実施される授業のいくつかが前倒しで行われていて、取材当日にも、将棋、演劇、福祉基礎、フィットネス、海外事情などの授業が行われていた。これらの授業には、豊田高校の生徒も参加するため、路線バスを借りきっての大移動。そんな混沌とした中、汲沢高校統括教頭の田中均先生に、新校の構想をうかがった。
 

■生徒ひとりひとりのニーズに合わせたカリキュラム

「キーワードは“240通りの高校生活を応援します”、つまり1学年240人の生徒ひとりひとりのニーズに学校ができる限り答えようということなんです」

 新校では、従来の国語、社会といった必須履修科目のほかに、情報ネットワーク系、環境サイエンス系、福祉サポート系、健康フィットネス系、国際コミュニケーション系、教養アーツ系という6つの系、さらに自由選択科目があり、実に100以上もの科目が用意されている。生徒は、それらの中から、好きな科目を選択し、年初に自分で年間の時間割を作成する。将来進みたい方向に合わせて専門の科目を集中させてもいいし、授業は午前中だけにし、午後はボランティアなど好きな活動に充ててもいい。4年かけて卒業してもかまわないのだ。また、ボランティア、スポーツ、職業体験など、校外の活動でも単位として認められる。

■内から外へ、外から内へ

 新校のもう一つの特徴は、学校からも、生徒を外へ送りだし、外からも学校に参加してもらう、「風通しのいい学校」を目指していることである。
 「内から外」では、平成13年には横浜国立大学と、今年度には関東学院大学と協定を結び、10名の生徒たちが大学の授業を受講して単位認定を受けている。また、夏休みには、企業や福祉施設、保育園などでの職業体験学習(インターンシップ)も実施し、52名の生徒が参加した。
 
「大学の授業を受けた子は、単位認定されたことで大きな自信になったようです。インターンシップも、プロの仕事を目の当たりにしたことで、将来どんな仕事をするか、真剣に考えるきっかけになったようですね」

 「外から内」では、今年度から、新設した科目に一般社会人も受講できるよう門戸を開き、既に10名の聴講生が参加している。

■仕組みだけではなく、精神的なサポートも

 とてもユニークな試みではあるが、当の生徒はどう思っているのだろうか。
 たとえば、中学を卒業したばかりの生徒が自分で年間の時間割を考えることができるのだろうか。開校準備ご担当の王尾冨美子教頭先生にうかがった。

「最初から自分で時間割を組み立てられる生徒はなかなかいません。合格発表後、受験番号順に日を指定して個別相談会を持ちます。自分の高校生活をどうデザインしたいのか、マンツーマンで丁寧に生徒から聞き、考えを整理するお手伝いをしながら時間割を決めていきます。
 選択する機会を与えられることで生徒は成長します。英語が苦手だった生徒が、系の科目『海外事情』で外国の方との交流をきっかけに英語の勉強を熱心にするようになった例もあります。さまざまな機会を用意し個別に声を掛けることで高校生は驚くほど伸びるものなんです」

 学校は大学、専門学校、企業などを在学中から体験できる機会を用意し、生徒は卒業後の進路やキャリアプランを具体的に考えることができる。

 

「教師は、生徒たちが人生を切り開けるよう、よきコーディネータでありたいですね」

■教師たちの熱意に支えられて

 現在、新校の開設準備担当の教員は管理職を除いて6名。平成11年に、「有志が手を挙げる」という形で新校準備委員会がスタートした。

「特色ある系の科目を、来年度は30科目開講予定です。外部のプロに講師をお願いすることもありますが、ほとんどは生徒のニーズに応えようと、現在いる教員が開発した科目です。たとえば、演劇の心得のある国語教師が『演劇体験』の授業を開発し、福祉に関心のあった数学の教師がホームヘルパーの資格を取り、中心となって『社会福祉基礎』の科目を開発するといった具合です。他に、インターンシップの受け入れ企業や、連携先の大学の開拓、中学訪問など、営業的な仕事もあり、本当に忙しい。でも、新しい学校の仕掛けを作っていくのは楽しいですね」

 教師たちが、とにかく面白がって新校を作り上げている。このパワーは、生徒に必ず伝わるはずだ。来年の開校が今から楽しみである。
 


横浜桜陽高等学校のホームページ
http://www.y-oyo-h.pen-kanagawa.ed.jp/


 

 

(取材・構成:学びの場.com)

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