2017.06.27
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スクールリーダー調査リポート(第1回) スクールリーダーのなり手が不足?~研究の概要と問題意識~

スクールリーダー調査リポート(第1回)

社会の状況が大きく変化する中で、教育活動も変革が求められています。また、教師の年齢構成の変化など、学校組織も転換期を迎えています。学校が組織として対応することが求められ、管理職やミドルリーダーの重要性が高まり、その育成が注目されています。
本連載では、筆者が取り組んでいる内田洋行×横浜国立大学共同研究「アクティブ・ラーニング推進時代に対応したミドルリーダー・管理職に関する調査とサーベイフィードバックによる研修の開発」をもとに、この問題について迫ります。第1回では、その背景と、共同研究の取り組みの概要についてご紹介いたします。

変わる学校の年齢構造

横浜市教員の年齢構成

出典:長島(2014)より筆者が作成

今、学校の年齢構造が大きく変化しています。皆さんが子どもの頃通った学校では、ベテランや中堅の先生が沢山いたかもしれません。これが、今では大きく変化し、かつて多数を占めていたベテランの先生はすでに退職し、少数のベテラン・中堅教師、そして、半数を超える経験の浅い教師という状況になっています。表は横浜市の公立小学校の状況です。
 
若返りは、良い面もありますが、育成という課題も抱えています。ベテラン教師が多い中では、インフォーマルな中で経験の浅い教師を支援できる余裕がありました。このような関係は同僚性と呼ばれ、日本の学校が成果を挙げてきた要因の1つです。しかし、現在のアンバランスな年齢構成で、教職が多忙化している中では、経験の浅い教師に関わることも難しくなり、管理職、ミドルリーダーのマネジメントのもと、組織としての対応が求められています。

アクティブラーニングの推進におけるスクールリーダーの役割

社会が大きく変化する中で、子どもが身につけるべき資質能力も変化し、アクティブラーニングの実施やそれに伴うICTの活用など、様々な取り組みが求められています。これらは、学習観の転換であり、授業のあり方の変容にとどまらず、カリキュラムの変容も伴います。そのために、校内の教師が共通意識をもって取り組み、どのような子どもを育てていくのか、学校全体で考えていく必要があります。実際、アクティブラーニングなどの参加型学習を実施している学校は、実施してない学校と比べて目標意識、教員間の仕組みなどに違いがあると言われています(中原淳,日本教育研究イノベーションセンター 2015)。これら取り組みを効果的に推進していくために、管理職やミドルリーダーが、方向性の設定や実施について舵取りをし、校内の教師に対する支援を適切に行う必要があります。

“調査結果を現場に返す”研究の全体像

研究の全体像

このように、管理職やミドルリーダーは、校内の多数の経験の浅い教師の育成に関わりながら、そのような教師も巻き込んでアクティブラーニングの推進といった発展的な取り組みを主導していくことが求められます。そのような管理職やミドルリーダーをどのように育てていけばよいでしょうか。そのために、例えば、様々な理論や方法論を学ぶ研修を行うことなどが考えられます。しかし、研修において、様々な理論や専門用語をもって説得するということは、現場にとっては、「遠い現場」であり(中原 2015)、日々の業務で多忙感が高まっている状況では、負担感を増大させるものになり、効果的ではないことも考えられます。そこで、共同研究では、サーベイフィードバックという手法をとります。サーベイフィードバックとは、調査によって得られた知見を、調査対象者に研修の機会などを用いて直接フィードバックするという手法で、ミシガン大学のレンシス・リッカートによって始められました。研修に参加する教師が「自分事」として「オーナーシップ」を持ちうるデータをフィードバックすることで、育成をより効果的に行うことを目指します。現在の学校の状況、成果を挙げている学校の管理職やミドルリーダーの働き方や成長の仕方について調査し、その結果を今後の学校組織のマネジメントを考える素材として提供し、研修で活用します。
これから、調査の結果や研修の様子や成果などを報告していく予定です。

出典
  • 長島和弘(2014)ミドル教員の管理職志向に与える要因—横浜市教員のキャリア形成分析から—. 政策研究大学院大学 修士論文
  • 中原淳・日本教育研究イノベーションセンター(2014)アクティブ・ラーナーを育てる高校―アクティブ・ラーニングの実態と最新実践事例.学事出版
  • 中原淳(2015)第15章 教員研修の変革――サーベイフィードバックの応用.脇本健弘,町支大祐,中原淳(監修)(2015)教師の学びを科学する データから見える若手教師の育成と熟達のモデル.北大路書房.京都

執筆者:脇本 健弘(横浜国立大学 教育学研究科高度教職実践専攻 准教授)

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