スクールリーダー調査リポート(第4回) 【テーマ別報告】T小学校・H小学校に見るスクールリーダーの取り組み事例
社会の状況が大きく変化する中で、教育活動も変革が求められています。また、教師の年齢構成の変化など、学校組織も転換期を迎えています。学校が組織として対応することが求められ、管理職やミドルリーダーの重要性が高まり、その育成が注目されています。
本連載では、内田洋行×横浜国立大学共同研究「アクティブ・ラーニング推進時代に対応したミドルリーダー・管理職に関する調査とサーベイフィードバックによる研修の開発」を基に、この問題について迫ります。
「子どもが成長する学校づくり」に向けた校長としての取組
校長のリーダーシップが学校づくりの重要な鍵となると言われています。連載第4回は、「子どもが成長する学校づくり」を目指し、横浜市立T小学校・H小学校の2校で、筆者が校長として取り組んだことの概要を紹介します。
「学校づくり」ビジョンの発信と共有
まず、校長として「こんな学校を目指そう」というビジョンを明確に持つこと、そして教職員、子ども達、保護者、地域の方々等の理解を得て、それらの人達と実現したい学校像や子ども像を共有することが大切だと考え、色々な場で発信していきました。具体的に掲げた目指す学校像は次のような内容でした。
○子どもが生き生きと学び成長する学校
○教職員が同僚性を発揮し、共に学び、一丸となって学校づくりに取り組む学校
○地域の誇りとなる学校
特に学校経営・運営のリーダーとなる副校長(教頭)や主幹教諭には、目標や経営の指針について意見交流の時間を取りました(週2回の朝の主幹会議)。そして目指す学校づくりのために、どのような役割を担ってほしいか伝えるようにしました。もちろん教職員全体にも、職員会議や打ち合わせ等の機会を捉えて、具体的に発信するように心掛けました。
また、地域や保護者には学校便りや学校説明会、保護者会、学校運営協議会等で説明して、ご意見を聞いたり、地域の行事や催しには教職員と共に積極的に参加し、直接触れ合い、学校の姿勢を示したりしました。
子ども達には朝会や行事での講話を通して「学校大好き!」という思いと「生き生き活躍する姿」の実現を働きかけました。出来るだけ多くの機会を捉えて、学校に関わる人に学校づくりのビジョンを発信することに努め、「こんな学校を目指そう」を共通の思いにしたいと考えました。
授業研究を通したカリキュラム開発
学校の教育の中核となるのは、カリキュラムです。そのカリキュラムがより充実したものになるように、授業研究を通して特色あるカリキュラムの編成、実践、評価、改善をしていくことに全教職員で力を注ぎました。つまり、学校経営・学校運営の柱を授業研究とカリキュラム開発に置いたのです。
実際にT小学校では近隣の中学校と連携協力して、小中一貫カリキュラムを作成しました。特に「外国語活動」「社会」「国語」については小中の教員がお互いの授業づくりに参画して創りあげました。H小学校では30年以上前から地域の材を生かして実践されてきた総合学習を核として、他教科等の関連を図った特色あるカリキュラムづくりに取り組みました。
教員の授業力の向上と同僚性の高まり
授業研究に取り組み、日々実践をしていく中で、教員は授業力と学級経営力を伸ばしていきました。初任者や経験の少ない教員の育成には、組織的にも対応したこともあり、初任者として配属された教員も3年ほど経つと力を付け、子どもが主体的に取り組む授業づくりが実現できるようになってきました。
授業研究では、学年部会や教科部会でお互いの考えを出し合い、一人一人が教材研究や発問、板書などの力を高めていきました。その結果、互いの良さや個性を認め合い、磨き合うというような学校文化が自然と出来ていきました。それが教職員の同僚性の高まりを生みました。校長としては、その雰囲気を価値あるものとして認めていきました。
外部との連携とまとめ
より研究を活性化するために、行政や学校外部の機関(横浜市教育委員会、パナソニック財団、内田洋行、地域等)と連携もしました。連携の結果、様々な資源を学校に導入することが出来、子どもの思いを生かしたダイナミックな取り組みや、ICTを活用した授業実践、広い社会から多くの知見を学ぶ経験が出来ました。様々な機関と連携し協力を得られたことで、子どもの主体的な学びを支える環境の充実も図れました。さらに、様々な取り組みの成果を研究発表会として広く全国に発信することができ、全教職員で達成感を味わうことが出来ました。
校長として授業研究を通したカリキュラム開発に、学校が一丸となって取り組むことで「子どもが成長する学校づくり」を目指しました。その過程で、子どもが生き生きと学ぶ姿や、教職員が子ども達の成長のために自ら授業改善を行っている姿を観て、校長として多くのことを学んだように感じています。
執筆者:大内美智子(横浜国立大学 教育学研究科高度教職実践専攻 教授)
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