2018.02.14
  • twitter
  • facebook
  • はてなブックマーク
  • 印刷

スクールリーダー調査リポート(第6回) スクールリーダーとメンターチーム

社会の状況が大きく変化する中で、教育活動も変革が求められています。また、教師の年齢構成の変化など、学校組織も転換期を迎えています。学校が組織として対応することが求められ、管理職やミドルリーダーの重要性が高まり、その育成が注目されています。

本連載では、内田洋行×横浜国立大学共同研究「アクティブ・ラーニング推進時代に対応したミドルリーダー・管理職に関する調査とサーベイフィードバックによる研修の開発」を基に、この問題について迫ります。第6回は、横浜市の「メンターチーム」について解説します。

「メンターチーム」とは、横浜市立の学校で行われている、複数の先輩教員が複数の経験の浅い教員をメンタリングすることで人材育成を図るシステムです。端的に言うと、若手が集まって互いに教え合い、学び合う場です。脇本(2015)によれば、横浜市の小学校では週1回または月に1回程度の頻度でこのような会を実施しています。

かつては、同僚性の中で若手が自然と育っていたり、校内研究で若手の力を伸ばすようなことも行われてきましたが、ちょうど育成の中心になるような斜め上の中堅世代の層が浅い現代においては、このモデルでは若手が育ちにくくなっています。そこで、若手同士が集まり、学び合う機会を作ることによって、若手の力量形成を促そうというのがこのメンターチームの取り組みです。

図 メンターチームのモデル図
図 メンターチームのモデル図

大量採用によって経験の浅い教員の割合が増えている現代においては、若手の人材育成は学校の成否を左右するポイントの一つにもなっています。当然、管理職にとっても重要な関心事の一つです。しかし、管理職がいかにそこに関わるかは簡単な問題ではありません。あくまで若手同士の学びの場であるメンターチームに、長年の教職キャリアを持ち、かつ、若手にとっては評価者としての側面を持つ管理職が土足で踏み込むと、若手が緊張し伸び伸びと学ぶことが出来ない可能性もあります。これまでの研究(町支ら2013)では、メンターチーム内で模擬授業を行うような場面では管理職が関わり、一方、悩み相談などをする場面では見守る。つまり、少し距離をとるようなことが重要ではないかと指摘されています。

見守るか参画するかという判断は、管理職にとっては重要ではあるものの、メンターチームへの関わり方は他にももっとあるのではないか、そういった関心から、本プロジェクトにおいては、メンターチームに対するスクールリーダーの関与について、より幅広く調査を行っています。

関連する項目について因子分析をした結果として見えてきたのは、メンターチームへの【間接的支援】、【直接的支援】、そして【リーダーの選定と支援】という三つの側面です(町支ら2017)。間接的支援は、メンターチームの場を見守ることに加えて、メンターチームを実施しやすいよう時間面での支援をしたり、職員会議を通じて告知することでメンターチームへの参加を促すような関わりです。これに対し、直接的支援はメンターチームに参加し、若手に話をするような形での支援です。これらは、見守るか参画するかというこれまでも示されてきた「関わり方」をより幅広くとらえたものですが、今回の調査結果で特徴的だったのは【リーダーの選定と支援】です。メンターチームにおいては、10年次や5年次が企画のリーダーを務めるとは言え、大量採用下なので、学校内にはその年次の教員が複数おり、誰をそのリーダーに据えるかという判断が必要になります。また、メンターチームの運営についてリーダーと話し合うことも関わりの一側面として見えてきました。

表 スクールリーダーの関与の3側面
表 スクールリーダーの関与の3側面

メンターチームそのものについては、参加するか・見守るかという判断をしつつ、リーダー個人とは運営の相談に乗るなど話し合う関係性を作るというような、そんな関わり方が行われていると推察できます。これらの側面がそれぞれどんな効果をもたらすかなどについては、今後さらに分析を進めていく予定です。

参考文献
  • 脇本健弘(2015)「学校内における組織的なメンタリング」中原淳監修,脇本健弘・町支大祐ら『教師の学びを科学する』北大路書房
  • 町支大祐, 脇本健弘, 讃井康智,中原淳(2013)「校内メンタリングにおける管理職の参加に関する分析 : メンターチームを題材として」青山インフォメーション・サイエンス,41(1) 14-21

執筆者:町支大祐(東京大学 大学総合教育研究センター 特任研究員)

※当記事のすべてのコンテンツ(文・画像等)の無断使用を禁じます。

pagetop