2017.09.06
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スクールリーダー調査リポート(第3回) 【本調査報告】子どもが成長する学校とは? 校長先生のリーダーシップとは?

社会の状況が大きく変化する中で、教育活動も変革が求められています。また、教師の年齢構成の変化など、学校組織も転換期を迎えています。学校が組織として対応することが求められ、管理職やミドルリーダーの重要性が高まり、その育成が注目されています。

本連載では、筆者が取り組んでいる内田洋行×横浜国立大学共同研究「アクティブ・ラーニング推進時代に対応したミドルリーダー・管理職に関する調査とサーベイフィードバックによる研修の開発」を基に、この問題について迫ります。第3回では、子どもが成長する学校とは、どのような学校で、校長先生がどのようなリーダーシップを発揮しているか? について考えます。

子どもが成長する学校とは?

本研究では、子どもが成長する学校はどのような学校か、校長先生がどのようなリーダーシップを発揮しているかを検討するために、小学校の校長先生を対象に質問紙による調査を実施しました。

子どもが成長する学校とそうでない学校では何が違うのか、「子どもの成長」に及ぼす影響について、「カリキュラム・マネジメント」「学校文化」「校長の職務」「校長の学び」の観点から分析しました。

共分散構造分析による分析

カリキュラム・マネジメント

中央教育審議会による2016年12月の答申では、次期学習指導要領のポイントとして「主体的・対話的で深い学び(アクティブ・ラーニング)」と共に「カリキュラム・マネジメント」の重要性が強調されています。

答申によると、カリキュラム・マネジメントとは、「学習指導要領等を受け止めつつ、子ども達の姿や地域の実状等を踏まえて、各学校が設定する学校教育目標を実現するために、学習指導要領等に基づき教育課程を編成し、それを実施・評価し改善していくこと」であり、次の3つの側面があるとしています。

  1. 各教科等の教育内容を相互の関係で捉え、学校の教育目標を踏まえた教科横断的な視点で、その目標の達成に必要な教育の内容を組織的に配列していくこと。
  2. 教育内容の質の向上に向けて、子ども達の姿や地域の現状等に関する調査や各種データ等に基づき、教育課程を編成し、実施し、評価して改善を図る一連のPDCAサイクルを確立すること。
  3. 教育内容と、教育活動に必要な人的・物的資源等を、地域等の外部の資源も含めて活用しながら効果的に組み合わせること。

本研究では、カリキュラム・マネジメントが子どもの成長に与える影響について検討するため、<教育課程の編成・改善(1.2.)><資源の活用(3.)>の2つの観点から調査しました。

学校文化

学校文化とは、教師らの間に共有された行動様式のことです。本研究では、教師らが互いに支え合う関係にあるかという<同僚性>、新しい教育実践に取り組もうとしているかという<創造性>、教師の専門性を主体的に高めようとしているかという<専門性>の3つの観点から調査しました。

校長のリーダーシップ

校長先生のリーダーシップは、直接的・間接的に子どもの成長に影響を及ぼしていると考えられます。そこで、本研究では、「校長の職務」(※スクールリーダー調査リポート(第2回)を参照 )が子どもの成長にどのような影響を及ぼしているか、9つの観点から調査しました。

「専門性」が、子どもが成長する学校づくりの鍵

数値が大きいほど関係が強いことを示しています

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分析の結果、子どもの成長に直接的に影響を及ぼしていたのは、<教育課程の編成・改善><創造性><専門性><外部との連携>でした。

子どもが成長する学校では、教師間に「創造性」「専門性」といった学校文化が醸成されていること、校長先生が外部と連携し、学校全体で教育課程の編成・評価・実施・改善に取り組んでいることがわかりました。特に、教師らが自らの専門性を高めていこうとする文化を持っている学校ほど、子どもがより成長している学校であると考えられます。

カリキュラム・マネジメントができている学校とは

数値が大きいほど関係が強いことを示しています

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分析の結果、<教育課程の編成・改善>に影響を及ぼしていたのは、<経験学習行動><カリキュラム・マネジメント>であり、<資源の活用>に影響を及ぼしていたのは<経験学習行動><ビジョン構築・達成><カリキュラム・マネジメント><外部との連携>でした。

カリキュラム・マネジメントに取り組むためには、校長先生のリーダーシップが重要となります。また、同時に、校長先生自身が経験から学ぶ姿勢を持っていることが重要であることがわかりました。

まとめ

本記事では、子どもが成長する学校について、主に校長先生の視点から調査結果を報告しました。子どもが成長する学校づくりに向けて、校長先生のリーダーシップや学びが重要となります。校長先生が腰を据えて学校づくりに取り組めるよう、カリキュラム・マネジメントに関する研修・支援体制や、校長の省察を支援する仕組みを整えることが大切となるでしょう。

執筆者:木村 充(立教大学経営学部 リサーチアシスタント)

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