スクールリーダー調査リポート(第5回) 【本調査報告】】副校長の仕事にはどんなものがあるか~副校長調査の基本集計・因子分析
社会の状況が大きく変化する中で、教育活動も変革が求められています。また、教師の年齢構成の変化など、学校組織も転換期を迎えています。学校が組織として対応することが求められ、管理職やミドルリーダーの重要性が高まり、その育成が注目されています。
本連載では、筆者が取り組んでいる内田洋行×横浜国立大学共同研究「アクティブ・ラーニング推進時代に対応したミドルリーダー・管理職に関する調査とサーベイフィードバックによる研修の開発」を基に、この問題について迫ります。前回までは校長にスポットライトを当てていましたが、第5回は副校長に注目します。
副校長の学びや職務と学校の成果
副校長は、校長と共に学校のトップマネジメントチーム(露口2009)の一員を成し、学校全体に大きな影響を及ぼしているものと考えられます。一方で、各種勤務実態調査(例えば文部科学省2017)などにおいて、ハードな労働環境に置かれていることが示されており、その職務の在り方には様々な側面から関心が高まっています。
本研究では、校長調査(第3回記事)と同様に、副校長の属性や学びの在り方、職務、学校の文化、カリキュラム・マネジメントについて調査を行いました。調査の観点等についても校長調査と共通しています。その上で、下記のモデルを想定し、その関係性について分析を行いました。
経験から学ぶことの重要性
本調査においては、副校長の学びの在り方の一つとして、経験学習サイクルに着目しています。経験学習サイクルとは、D.Kolb(1984)の提唱したモデルで、日々の仕事の中でした経験(具体的経験)を振り返り(内省的観察)、振り返りの成果を自分なりの持論や仮説にまとめ(抽象的概念化)、それを次の実践に生かして試みる(能動的実験)ことを通じて学んでいくという考えです。
学校文化と副校長のバーンアウト
本調査では、副校長の状態を表す指標として精神的な疲労(バーンアウト・燃え尽き)についても質問しています。その結果、副校長のバーンアウトが、学校文化の3つの観点、<同僚性><創造性><専門性>の全てについて、負の関係にあることがわかりました。
ここから示唆されるのは、副校長の精神的な状態は、もちろん当人にとって重要な問題であることは間違いないのですが、当人だけの問題ではなく、学校全体の問題であるということです。実際の学校の中でどのようなプロセスを経て影響していくのか、といった点については、今後様々に調査される必要がありますが、副校長の精神的な疲れが学校全体の雰囲気にも影響していく可能性があります。
まとめ
本記事では、スクールリーダー調査のうち、副校長の分析結果の一部をご紹介しました。経験を振り返って学ぶことの重要性、副校長のバーンアウトの問題性について取り上げましたが、いずれも学校全体に影響を及ぼすことがわかりました。
本研究の趣旨とは若干離れますが、冒頭でも触れましたように副校長の職務は大変多忙であることが知られています。日々目の前の課題に対応することで忙殺されてしまう状態の方が多いと思われます。振り返るだけの時間を確保することや、その省察を支援していくこと、精神的な疲れにつながらないような働き方を目指していくこと、そういった点が今後の学校経営を考える上でも重要なポイントであることが改めて示されたと言えます。
参考文献
- 露口健司(2009)日本教育経営学会紀要 Vol.51 pp.73-87
- 文部科学省(2017)教員勤務実態調査(平成28年度)の集計(速報値)について(PDF) 2017/10/21最終閲覧
執筆者:町支大祐(東京大学 大学総合教育研究センター 特任研究員)
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