かんしゃしてたべよう 【食と暮らし】[小1・学活]
食育は家庭科や総合的な学習の時間だけが受け持つものではありません。理科、社会科などどの教科でもアイディア次第で楽しく展開できます。教材開発のノウハウや子ども達の興味・関心を高めながら、望ましい食生活習慣を育てていく授業作りのヒントを、武庫川女子大学・藤本勇二先生主宰、食で授業をつくる会「食育実践研究会」がご紹介します。第九十四回目の単元は「かんしゃしてたべよう」です。
給食が届くまで、どんな人が関わっている?
と質問をすると、
「給食センターの人」
という意見が出ました。他にはないかと質問をしましたが、出ませんでした。子どもの中では“給食センターの人”が給食を作っている人なのです。
そこで、
「牛乳を作っている人は?」
と質問をすると、
「淡路島牧場の人」
と意見が出てきました。続けて、「お肉は?」「野菜は?」「ご飯は?」と質問をすると、それぞれ
「牛を飼っている人」
「レタスのおじさん」
「お米を作っている人」
等と、少しずつ意見が返ってきました。
次に、給食に関わっている人たちがどんな気持ちで仕事をしているのか想像させ、考えさせました。その際、ペア学習を行い、自由に話し合わせ、その後発表させました。子どもたちから以下のようなたくさんの意見が出てきました。
- 嬉しい気持ち
- 残食なしで
- おいしく食べてほしい
- バランスを考えて
- 色んな人が食べてくれるから、頑張って作っている
- 皆が元気になるために
- いっぱい食べてほしい
このように、子どもの中に「皆のために作っている人がいる」という気づきが生まれてきました。
次に、食べ物を運んでいる運転手さんの気持ちを考えさせました。
- 給食をいっぱい食べてほしい
- 皆にいっぱい食べてほしいから、頑張ろう
- 色んな人が給食を待っているから、いっぱい届けたい
給食に関わる人の思いを知る
「そんな苦労があるなんて知らなかった」
「大変な仕事なんだ」
〔授業後の児童の感想より〕
- 給食は、給食センターの人だけではないことを知りました。
- 野菜を作っているおじさんが苦労して作ってくれているから、残さずに食べます。
- 牛乳を作っているおじさんは、毎日休みなしで働いていることがすごいと思いました。
- レタスを作っているおじさんは、僕たちのために毎日畑を見に行ってくれていたんだね。
授業後、子どもたちの様子を見ていると、給食を残さずに食べよう、残食をなくそうと食缶の中を空にしようとする姿があり、意識の変化が表れていました。例えば、給食にレタスが出ると
「このレタス、おじさんが作ったものかなあ」
と言っている子どもや、野菜を作っている人に対して感謝の言葉を口にするような子どももいました。
たくさんの人たちが給食に関わっていることに気づき、少しずつですが、残食や偏食への取り組み方が変わってきているように思います。これからもその気持ちを持続させていくことが大切であると感じました。
授業の展開例
- 牛乳が生産者(酪農家)から私たちの手元に届くまでにどんな人が関わっているか調べてみましょう。
- 生産者の方と一緒に栽培体験をしましょう。生産者の思いに触れることから食べ物を大切にする心を育むことにつながります。
宇賀田 浩司(うがた こうじ)
兵庫県洲本市立洲本第三小学校 教諭
3年目で初めての1年担任(実践時)。元気いっぱいの子どもたち以上に元気に「ともに遊んで学ぶ」姿勢を大切にしている。まず自分が体験し感動したものを子どもたちと共有したいと様々な食育にチャレンジし、模索しながら授業づくりに励んでいる。
藤本勇二(ふじもと ゆうじ)
武庫川女子大学教育学部 教授。小学校教諭として地域の人に学ぶ食育を実践。文部科学省「食に関する指導の手引き」作成委員、「今後の学校における食育の在り方に関する有識者会議」委員。「食と農の応援団」団員。環境カウンセラー(環境省)。2010年4月より武庫川女子大学文学部教育学科専任講師。主な著書は『学びを深める 食育ハンドブック』(学研)、『ワークショップでつくる-食の授業アイデア集-』(全国学校給食協会)など。問題解決とワークショップをもとにした食育の実践研究に取り組む「食育実践研究会」代表。'12年4月より本コーナーにて実践事例を研究会のメンバーが順次提案する。
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