2002.09.03
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自然の中で宇宙や地球について学ぶ 日本宇宙少年団、種子島スペースキャンプ

自然の中で宇宙や地球について学ぶ

日本宇宙少年団が毎年夏に行っている「種子島スペースキャンプ」。1996年に始まり、今年が7回目となる。

おみこしを作って地元のお祭りに参加、ウミガメの赤ちゃんを放流、地引き網体験、落花生の収穫などなど、子どもたちにとっては初体験の連続。からだを使っての遊びや仕事を通して、命の大切さ、宇宙の神秘、自然や環境保全へも思いをはせる。充実したプログラムが満載の「種子島スペースキャンプ」の模様を取材した。


一日遅れでやっと種子島に到着。乗ってきたのは年代物のYS-11


グループに分かれて、お祭りに参加する際の旗のデザインを考える

薪になかなか火がつかず、自炊に手こずる


元気の良さは、参加グループの中で飛び抜けていた


みんなで海に向かって元気に進むウミガメの赤ちゃんを見守る

「こんなに大きな魚がかかった!」とはしゃぐ声があちこちから聞こえる


「もっと右! いや左!」とにぎやかな声が飛んだスイカ割り


身振りを交えた楽しい授業で、英語の基本を勉強する


いっせいに大空に向かって飛ぶ水ロケット。「こんなに飛ぶなんてスゴイ」。



ふだんは立入禁止の場所に入れてもらい、ロケット打ち上げの説明を聞く


各グループごとに、楽しかったこと、思い出に残ったことを発表




「来年また会おうねー」の声が飛び交う別れのシーン





一般参加の河本姉妹。「こんなに楽しいとは思っていなかった」

■科学教育と国際交流で21世紀の人材を育成

 日本宇宙少年団、という団体をご存じだろうか? 1984年、アメリカのレーガン元大統領による宣言の元結成された「宇宙少年団」に続き、1986年、日本で財団法人として発足した団体だ。現在日本全国に約120の分団があり、5000人あまりの団員が活動をしている。

 「宇宙を通しての平和」「火星に一緒に行こう」のふたつを合い言葉に、21世紀に活躍する青少年に宇宙や科学に関する教育活動や国際交流などの事業を通じ、世界に貢献する人材の育成を目指している。理事長はマンガ家の松本零士氏、団長は宇宙飛行士の毛利衛氏で、宇宙への夢を持ち続けている子どもたちには打ってつけの団体だと言えるだろう。

 その日本宇宙少年団が毎年夏に行っているのが「種子島スペースキャンプだ」。1996年に始まり、今年が7回目となる。種子島といえば、日本最大の宇宙開発拠点である宇宙センターがあり、日本に鉄砲が伝来した地としても知られている。その一方、美しい海と星空、豊かな自然もふんだんにあり、子どもたちが集まってキャンプをすれば、楽しいものになることは想像するまでもない。さっそく同行取材をお願いし、快く受けていただいた。

■科学と自然を学ぶ豊富なプログラム

 一週間のプログラムをざっと見てみると、おみこしを制作しての種子島夏祭り参加、星空観測、農業体験、ビーチクリーニング、地引き網、英語コミュニケーション、火縄銃実射見学、インターネット学習、環境学習、水ロケット打ち上げなどとなっており、種子島の自然や産業とともに、宇宙や地球、科学のことが学習できる内容になっている。

 学習プログラムの講師も、環境学習には地球環境平和財団の河野順一氏、英語コミュニケーションには、日本人宇宙飛行士の英語教師であるギャリー・ヴィアヘラー氏とヴィアヘラー幸代氏、水ロケット制作には水ロケット専門パーツブランドの代表片岡鉄雄氏と、まさに適任の専門家がそろっている。

 このキャンプに参加できるのは小学校4年生から中学3年生までで、日本各地にある分団から32人、一般公募で42人が最終的に参加した。希望者多数の場合は抽選となるが、倍率はだいたい2倍程度、ということだった。

 さて、キャンプ初日の7月25日、九州南部はあいにく台風9号、11号が連続して直撃し、日本全国から子どもが集まる空の便は欠航が相次いだ。そのため、参加者の一部は鹿児島で足止めを食い、あるいは自宅待機となり、参加者のほとんどが種子島に到着したのは翌26日になってしまった(屋久島からの参加者2名は27日に参加)。

 実質的に一日遅れで始まったキャンプだが、基本的に予定はなるべく変更せず、時間などを調整してほとんどすべてのプログラムを実施することになった。参加者は10のグループに分かれ、それぞれのリーダーの元、各プログラムに参加したり自炊をしたり食事をしたりすることになる。

 宿泊するのは、南種子島町の島間中学校を改造した自然の家で、元教室を作り替えた畳敷きの大部屋でゴロ寝する。冷房設備こそないものの朝晩には島特有の涼しい風が校舎を吹き抜ける。外には広い自炊設備があり、天気が良ければ遠く屋久島の山々が臨め、夜には文字どおり降るような星空と、その間を縫って飛ぶ流れ星が眺められる。

■自作のおみこしで地元のお祭りに参加

 日程の短縮でスケジュールはタイトになったが、全国から参加した子どもたちはグループ内で、あるいはグループや学年を越えてすぐに仲良くなり、27日の朝から最初のプログラムであるおみこし制作に取り組んだ。

 参加者は、お祭りに宇宙少年団として出すのにふさわしいおみこしのデザインを各々考えて描いてくる。全体をふたつに分けたグループでは、みんなが出したデザインからいいものを選び出し、さっそく制作に取りかかる。材料・時間とも限りがあるので、リーダーの指導の元デザインを簡略化したり、各メンバーがアイデアを出し合ってオリジナルのおみこしを作っていく。あくまで子どもの自主性が中心なので積極的に参加できない子どももいるが、ほとんどの参加者は驚くほど真剣な表情で作業に取り組んでいた。そうして出来上がったふたつのおみこしは、一日で作り上げたとはとうてい信じられないほどすばらしいものだった。

 そしてこの日から、夕飯は基本的に子どもたちが自炊をする。最初に簡単に薪を使った火の起こし方を習い、あとはグループごとで自炊に取り組む。これはグループによってかなり時間に差の出る作業だった。当然のようにすぐに薪に火の付けられる子や、マッチも擦れない子もいるのだから無理もない。それでも、自分たちの力だけで作った夕食は、きっと本人たちにはいちばんのご馳走だったに違いない。

 翌28日は朝から自作のおみこしを担いでお祭りに参加した。途中、片方のおみこしに乗せてあったオブジェが取れてしまうアクシデントがあったものの、元気の良さでは地元参加の他のグループを圧倒していた。炎天下の下地元の人から水をかけられみんなビショビショになりながらも、充実した時間を過ごせた。

 お祭りのあとは種子島の鉄砲館に移動。種子島に鉄砲が伝来した歴史を学び、最後は火縄銃の試射を見学した。空砲とはいえ発射の際の大きな音に、みんなとっても驚いていた様子だった。

 夜は体育館で河野先生による「自然のお話」というレクチャーを聞く。スライドを交え、地球や生命の歴史、現在の地球が抱える環境問題などが解説された。子どもたち自身も、どうしたらゴミを減らすことができるか各自の意見を出し、環境問題を身近な問題として感じることができたようだ。話を聞き終わって体育館の外に出ると空は晴れ渡り、さそり座からのびる天の川がクッキリと見えた。

■島ならではの海のプログラム

 4日目の29日は、ほとんどが海を舞台にしたプログラムだった。まずは長浜海岸に移動してのビーチクリーニング。台風通過後ということもあり、浜に打ち上げられたゴミの多さにも驚いたが、場所柄台湾や韓国のゴミが多いことも子どもたちの興味を引いたようだ。

 実はこのビーチクリーニングのあと、子どもたちには秘密にされていた特別のプログラムがあった。長浜海岸はウミガメが産卵に上がることでも有名なのだが、孵化したウミガメの赤ちゃんを地元の方が放流用にとっておいてくださったのだ。グループごとに渡された子ガメを海岸に置くと、子ガメたちはまっすぐ海の方へ進んでいった。

 そして西の長浜海岸から東の熊野海岸に移動して地引き網体験。例年はかかる魚が少なくプログラム自体中止を検討しているということだったが、今年は予想以上の大漁で、子どもたちはかかった獲物を手に大喜びをしていた。地引き網に大きなエイがかかっていたのも驚いた。ただしエイはしっぽに強い毒を持っているので、すぐに網からはずされた。

 そのあとが、子どもたちが待ちに待った海水浴の時間だった。熊野海水浴場は白い砂浜の続くきれいな海岸だったが、信じられないことに泳いでいる海水浴客はほとんどいない。短い時間ではあったが、子どもたちは仲間と楽しむ海水浴を満喫したようだった。

 自然の家に戻ってからは、ふたつのグループに分かれてそれぞれ英語コミュニケーションと水ロケット作成のプログラムに取り組んだ。英語コミュニケーションでは、通信で使われるアルファベットの言い表し方と、簡単な交信のしかたを学んだ。講師のギャリー先生が身振り手振りを交えて説明し、子どもたちはいつの間にか英語の世界に引き込まれていたようだった。

 そしてプログラムの実質的な最終日。午前中は子どもたちが待ちに待った宇宙センターの見学。特別に総合指令棟の司令室に入れてもらったり、組み立て棟で打ち上げられなかったロケットの実物をさわったりして楽しんだ。そのあと、宇宙科学技術館を見学したが、見学よりも、お土産を買おうという子どもたちが売店に殺到し、売店の人が大わらわする一幕も見られた。

 自然の家に戻る途中に落花生の収穫を体験し、午後はこれまでの体験発表、修了証授与、大掃除、フェアウェルパーティーとプログラムが続く。参加者は全員この一週間で体験したことを振り返り、グループごとに楽しかったこと、印象に残ったことなどを発表した。パーティーが半分ぐらい終わったところで、参加者の有志による演芸大会が始まった。コントあり、物真似あり、手品ありみんななかなかの芸達者で、子どもたちはいつの間にか食事もそっちのけで舞台を囲むように座り込んで拍手を送っていた。

■短かった一週間を終えて

 初めは長いと思った一週間も、あっという間に終わってしまった。最終日は解散式だけで、あとは帰りの地域別にまとまって自然の家を出発していく。みんなこの一週間でたくさんの友達を作り、これまで知らなかった多くのことを体験したに違いない。

 バスが出発していくたびに見送りの輪ができ、みんな握手をして別れを惜しんでいた。新しい友達と、手紙やメールでこれからも連絡を取り合おうと約束している子どもも少なくない。このキャンプに参加した子どもたちのうちから、将来宇宙関係の仕事に進む子も出てくるだろう。そしてその選択に、このキャンプに参加したことが大きなきっかけになることは間違いない、そんな気がした。

■岡山から参加した河本早久良(さくら、小6)、美乃里(みのり、小4)姉妹の話

 「新聞に募集が出ていたのをお母さんが見つけて参加しようと思いました。でも、一週間も親と離れて過ごすのは初めてだったので、参加するまでは不安もありました。岡山に比べて海がとってもきれいだし、星空もきれいで生まれて初めて流れ星を見ました。来年は、友達も誘って是非また参加したいと思います」

 この種子島スペースキャンプは来年も開催される予定で、募集は来年の春頃。是非参加したいという方は、http://www.yac-j.or.jpをチェック!

(取材・構成:堀内一秀)

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