2018.07.04
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「主体的・対話的で深い学び」を実現するための教師の手立てとICT活用(vol.2) 東北大学大学院情報科学研究科×内田洋行教育総合研究所 共同研究

第2回では、東北大学大学院情報科学研究科(担当:堀田龍也教授)との共同研究「新学習指導要領で育成を目指す資質・能力の具体化と指導方法等に関する研究」において、どのように問題解決的な学習過程を設定し、授業改善の視点を抽出したかを紹介します。

新学習指導要領で想定される学習過程

中央教育審議会答申(2016)(以下、中教審答申)では、「『主体的・対話的で深い学び』は、1単位時間の授業の中で全てが実現されるものではなく、単元や題材のまとまりの中で、例えば主体的に学習を見通し振り返る場面をどこに設定するか、グループなどで対話する場面をどこに設定するか、学びの深まりを作り出すために、子供が考える場面と教員が教える場面をどのように組み立てるか、といった視点で実現されていくことが求められる。(p.52)」とあり、各教科における学習過程の重要性が示されています。

そこで、「主体的・対話的で深い学び」を実現する学習過程を想定するために、新学習指導要領における国語、社会、算数、理科の4教科の学習過程を比較しました。その結果、概ね (1)課題を把握する段階、(2)課題を追究する段階、(3)課題を解決する段階、(4)振り返って新たな課題に向かう段階という4つの段階に分かれることが確認できました。これらのことから、図表1、2のように「(1)課題把握」「(2)課題追究」「(3)課題解決」「(4)振り返り」という4つの段階を含む問題解決的な学習過程を設定しました。

図表1 新学習指導要領における国語、社会、算数、理科の4教科の学習過程
図表1 新学習指導要領における国語、社会、算数、理科の4教科の学習過程
図表2 本共同研究で設定した問題解決的な学習過程
課題把握 「課題把握」の過程では、学習課題を提示して、学習のねらいを明確にします。学習に取り組む前に、子供自身が「何を」「どのように」学ぶかという見通しを持つことで、自ら進んで学習に取り組む意欲を高めます。
課題追究 「課題追究」の過程では、仮説を立て、それに基づいて各種の資料から必要な情報を集め、比較や分類、関連付けたり、試行錯誤したりしながら、考えを深めていきます。これらの活動は子供たち同士で取り組むことも重要です。
課題解決 「課題解決」の過程では、筋道を立てて考えたことをまとめ、導き出した結論を発表したりレポートにまとめたりして表現します。また、互いの結果を基に話し合ったり、相互に評価しあったりする活動を行いながら、より深い学びを実現していきます。
振り返り 「振り返り」の過程では、これまでに学習したことを振り返り、学習したことの意義や価値を実感し、学習内容を確実に定着させます。また、取り組んだ内容を基に新たな課題を見つける等、次の学習活動への活用につなげます。

「主体的・対話的で深い学び」の実現に向けた授業改善の視点

中教審答申において「主体的・対話的で深い学び」の実現については以下のように記されています。

 以下の視点に立った授業改善をおこなうことで、学校教育における質の高い学びを実現し、学習内容を深く理解し、資質・能力を身に付け、生涯にわたって能動的(アクティブ)に学び続けるようにすることである。

  1. 学ぶことに興味や関心を持ち、自己のキャリア形成の方向性と関連付けながら、見通しを持って粘り強く取り組み、自己の学習活動を振り返って次につなげる「主体的な学び」が実現できているか。
  2. 子供同士の協働、教職員や地域の人との対話、先哲の考え方を手掛かりに考えること等を通じ、自己の考えを広げ深める「対話的な学び」が実現できているか。
  3. 習得・活用・探究という学びの過程の中で、各教科等の特質に応じた「見方・考え方」を働かせながら、知識を相互に関連付けてより深く理解したり、情報を精査して考えを形成したり、問題を見いだして解決策を考えたり、思いや考えを基に創造したりすることに向かう「深い学び」が実現できているか。(中教審答申p49-50)

上記の記述は、目指す児童生徒の学びの姿とも言えます。この、児童生徒の学びの姿を授業改善の視点として抽出することとしました。

主体的な学びに関する授業改善の視点

まず、主体的な学びに関する授業改善の視点として、上記1.の文章から、「1 学ぶことに興味関心を持つ」「2 自己のキャリア形成の方向性と関連付ける」「3 見通しを持つ」「4 粘り強く取り組む」「5 自己の学習活動を振り返り次につなげる」という5つの視点を抽出しました。

対話的な学びに関する授業改善の視点

次に、対話的な学びに関する授業改善の視点としては、上記2.の文章において、「子供同士の協働」「教職員や地域の人との対話」「先哲の考え方」という3つが並列であり、それぞれを「手掛かりに考える」という構造と捉えました。加えて、2.の解説文として「身に付けた知識や技能を定着させるとともに、物事の多面的で深い理解に至るためには、多様な表現を通じて、教職員と子供や、子供同士が対話し、それによって思考を広げ深めていくことが求められる。」とあり、「子供同士の協働」「教職員や地域の人との対話」は「多様な表現を通じて」おこなうことが求められていると解釈しました。以上から、対話的な学びに関する授業改善の視点として、「6 子供同士の協働を手掛りに考える」「7 教職員や地域の人との対話を手掛りに考える」「8 先哲の考え方を手掛りに考える」「9 多様な表現方法を用いて対話する」という4つの視点を抽出しました。

さらに、「6 子供同士の協働を手掛りに考える」については、1人1台のコンピュータを活用した先行事例において、「グループ、ペアでの共有」「全体での情報共有」というICT活用が整理されている(中尾ほか2013)ことから、「6A ペアや班で考える」「6B 学級全体で考える」という下位項目を設定することとしました。

深い学びに関する授業改善の視点

深い学びに関する授業改善の視点としては、上記3.の文章から「10 知識を相互に関連付けてより深く理解する」「11 情報を精査して考えを形成する」「12 問題を見いだして解決策を考える」「13 思いや考えを基に創造する」という4つの視点を抽出しました。ここまでで、13の授業改善の視点が抽出できました。

なお、「各教科等の特質に応じた「見方・考え方」を働かせながら」という部分については、先に設定した「課題把握」「課題追究」「課題解決」「振り返り(・新たな課題)」という4つの学習過程のうち、特定の学習過程に位置付けることは不適当であると考え、今回の研究では、授業改善の視点として抽出することを保留としました。

学習過程への授業改善の視点の配置

図表3のように、抽出した13の授業改善の視点を、本共同研究で設定した問題解決的な学習過程のいずれか1つの段階に位置づくように配置しました。本来であれば、例えば「3 粘り強く取り組む」という授業改善の視点は、全ての学習過程において、教師が持つべき授業改善の視点であるというようにも考えられますが、今回の研究では、分かりやすさを優先し、可能な限り、1つの授業改善の視点が2つ以上の学習過程をまたぐことのないように設定しました。

ただし、「6 子供同士の協働を手掛りに考える」「9 多様な表現方法を用いて対話する」については、「課題追究」「課題解決」という2つの学習過程に渡ることとしました。また、「6 子供同士の協働を手掛りに考える」のうち、「6A ペアや班で考える」を「課題追究」の学習過程に設定し、「6B 学級全体で考える」を「課題解決」の学習過程に設定しました。

図表3 抽出した授業改善の視点の学習過程への配置
図表3 抽出した授業改善の視点の学習過程への配置

「主体的・対話的で深い学びって、具体的にどうすればよいの?」

この問いに対し、我々は、まず「(1)課題把握」「(2)課題追究」「(3)課題解決」「(4)振り返り」という4つの段階を含む問題解決的な学習過程を設定しました。次に、中教審答申から、主体的・対話的で深い学びを実現するための授業改善の視点をキーワードとして抽出し、問題解決的な学習過程の各段階において、比較的実施しやすいと考えられる位置に配置しました。

問題解決的な学習過程の各段階で、このような授業改善の視点を意識して学習活動を設定することで、授業を設計しやすくなると考えています。

次回は、教師の手立てとICT活用についてお話しします。

構成・文:内田洋行教育総合研究所 研究員 中尾教子

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