2016.08.03
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意外と知らない"ICT支援員"(vol.1)

現在、全国の小・中学校では、パソコンやタブレット端末、電子黒板などのICT機器の導入が急速に進んでいますが、一方で、慣れないICT機器の準備や操作、不具合の対応等を専門家に手伝って欲しいという先生方のニーズも高まっています。そこで登場するのが「ICT支援員」です。教育現場でICT機器活用のサポートを行うICT支援員について、3回にわたって紹介します。

ICT支援員とは?

皆さんは「ICT支援員」という職業をご存知でしょうか? ICT支援員とは簡単に言うと「学校におけるICT活用を支援する専門家」です。

これまでも当サイトで、多くの事例を紹介している通り、学校にはパソコン教室以外にも様々なICT機器・ソフトウェアが整備されています。一方で、現場の先生方にとって新しい機器の使い方を覚える時間や、それを使ってどう効果的に授業ができるのか、ということを学ぶ機会が不足している現状があります。ICT支援員は、そんな学校現場で、先生方が負担なく、効果的にICTを活用できるようにお手伝いをしています。

ICT支援員導入の背景とおもな業務
ICT支援員導入の背景とおもな業務

出典:内田洋行パンフレットより

具体的にどんなことをしているの?

ICT支援員の仕事は大きく分けて以下の五つです。

(1)授業支援(教材作成支援、授業相談、授業の立会い など)
(2)環境整備(機器セッティング、後片付け、メンテナンス、簡単な障害対応 など)
(3)校内研修(ミニ研修会の企画実施、マンツーマン研修の企画実施 など)
(4)校務支援(校務システム操作支援、ホームページ作成支援 など)
(5)報告業務(日報作成、授業事例作成 など)

今回はこれら業務について、ある小学校のICT支援員を例に、1日の流れに沿って見てみましょう。

ICT支援の1日

ICT支援員の一日

出典:内田洋行パンフレットより

【朝】
「おはようございます!」
 先生方にも、子ども達にも元気にあいさつをする所からICT支援員の1日は始まります。職員室に入ると、まず、今日の支援内容の確認を行います。朝は先生方がお忙しく、支援員と会話をする時間がなかなかとれないため、学校によっては支援依頼シートや連絡ノートを使ってやりとりをしています。今日はどうやら2時間目の授業と5時間目の授業でICT機器を使いたいという要望があることを確認します。

【1時間目】
 早速2時間目で利用する予定のタブレットや電子黒板の動作確認を行います。充電されていないタブレットがあると、授業中に充電が切れてしまうこともあるため、充電の確認も大切です。1時間目が終わる頃を見計らって、使う機器を持って教室へ。休み時間を利用して、先生に接続の方法を説明しながら一緒に準備をします。

【2時間目】
 いよいよ、子ども達にタブレットを配布して、授業が始まります。途中でタブレット操作がわからなくなった児童から、
「パソコンの先生~!」
 と手が上がります。支援員は子どもが授業の進行に遅れないように、側に寄って操作の補助をしたり、万一、機器の不調と判断すれば、素早く予備のタブレットと交換したりします。中には困っていても手を上げられない子どももいるので、見逃さないよう、教室全体を見渡しながら、支援を行っていきます。もちろん、先生の操作支援、補助も行います。

先生や子ども達がどこに何を差し込めば良いかわかるよう、工夫しています

先生や子ども達がどこに何を差し込めば良いかわかるよう、工夫しています

【3・4時間目】
 2時間目の授業で行ったICTを使った指導の内容を、他の先生方とも共有するため、授業事例を作成します。また、授業準備の際にタブレットPCの無線接 続に先生が少し戸惑っているようだったので、簡単なマニュアルを1枚作成しました。他にも先生方が少しでも機器を使いやすいよう、様々な工夫をしていま す。少し時間がある時には、校内を巡回して授業を見学します。支援員が授業を行うわけではありませんが、授業の中で、より効果的なICT機器の活用を提案 するためには授業のポイントや先生方の工夫を知ることもとても大切だからです。

【昼食】
 給食の時間は先生とのコミュニケーションの時間でもあります。給食指導で職員室にいらっしゃらない先生も多いですが、その場にいる先生とは積極的にコミュニケーションをとって、先生が支援員に相談しやすい雰囲気づくりをします。

【昼休み】
 5時間目の授業の準備を行います。5時間目の授業はタブレットPCを校内無線LANにつないで行う予定ですが、万が一無線LANがつながらなくなっても授業が滞ることがないよう、紙のワークシートも準備しておくことを提案し、用意します。

【5時間目】
 事前にしっかりと準備しておいたので、無事無線LANも途切れることなく授業は進行します。支援員は先生・子ども達の操作補助や事例作成のために授業の記録を取ります。

【放課後】
 放課後は先生方からの質問タイムです。ホームページの更新方法や、エクセル関数の使い方など、よく聞かれる内容については、放課後の時間を利用して先生方に研修も行います。

また、質問の中には機器の故障、不具合等が原因のものもあります。簡単な障害についてはその場で対応しますが、対応しきれないものについては障害対応の専門窓口であるヘルプデスク等にエスカレーションします。

業務の終わりには報告書を作成します。各学校の取り組み状況や、環境について報告したものは毎月報告書として教育委員会に提出されます。日々の支援の中で得られる現場の生の声を、今後の整備計画に活かしていただくことができます。

報告書の書式サンプル
報告書の書式サンプル

まとめ

簡単ではありましたが、支援員の業務がどのようなものかご理解いただけましたか?

教育現場へのICT機器の導入は急ピッチで進んでいますが、
「ICT機器は入っているけど、なかなか活用できていない」
「授業でどのように活用したらよいのか事例を教えてほしい」
 という学校も増えており、ICT支援員への需要・期待はますます大きくなっています。一方でまだまだ社会的には認知されていない職業でもあります。次回は「ICT支援員になるには」をテーマにお送りします。 

≪第2回へ続く≫

構成・文:内田洋行ソリューション&サービスビジネス開発部 吉澤日花里

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