教育トレンド

教育インタビュー

2022.03.24
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埼玉県鴻巣市 「教員たちの働き方変革」

全国でも先進的な教育ICT基盤を整備している埼玉県鴻巣市。2022年2月に公開された「ICT環境の整備により、先生の働き方が変わった」という点にフォーカスしたプロモーション動画を紹介します。

埼玉県鴻巣市教育委員会は、小学校19校、中学校8校の計27校の教育ICT基盤をすべてフルクラウド化し、学術情報ネットワークSINET※と、マイクロソフトのクラウドプラットフォームであるMicrosoft Azureを、国内の教育委員会で初めて接続した最先端のICT環境を整備しています。校務系、校務外部系、学習系のネットワークを分離した境界防御を変え、ゼロトラストモデルに基づいた包括的なセキュリティ対策を施し、一つのネットワークとすることで、教職員用のPCが統合化されました。職員室や教室、授業で使うPCを校務系、校務外部系、学習系と切り分ける必要がなくなった画期的なモデルとなっています。

撮影協力:鴻巣市教育委員会、鴻巣中央小学校
映像制作:株式会社内田洋行、インテル株式会社

鴻巣市教育委員会 教育長 望月 栄 氏

GIGAスクール構想やクラウド化の推進にあたり、鴻巣市内全小・中学校のICT基盤を刷新されました。

望月教育長

鴻巣市は、埼玉県のほぼ中央部に位置しており、約117,000人の人々が暮らす都市です。南西部には荒川が流れ、江戸時代には、山道の宿場町として栄えました。380年余の伝統を誇る「ひな人形のまち」として、そして近年では「花のまち」としても、全国にその名が知られています。

鴻巣市では、平成30年度から教育情報化推進計画の策定に着手し、令和元年9 月に「鴻巣市学校教育情報化推進計画」を公表いたしました。「ICT機器の活用により、新しい時代で活躍するために必要な資質能力を育成する」ことを基本理念としています。それを目指すために、「①先端技術を活用したICT環境の整備」、「②学習形態の変革」、「③人財の育成」、「④子どもと向き合う時間の創出」といった4つの柱があります。これらはすべて、鴻巣市で育つ子どもたちの未来のためと考えたものです。

子どもたちにノートや鉛筆と同じように自然にICT機器を使いこなしてほしい、そして、自分の未来を切り拓いていってほしいという想いで、教育の情報化に邁進しています。

教員が利用するICT基盤も刷新し、教師の働き方改革も推進しています。今回導入した校務支援システムをフル活用して、子どもたちと向き合う時間を確保し、先生が元気で働ける魅力ある職場づくりを目指しています。これらの効果が相乗的にもたらせることにより、“子どもたちの学ぶ場である学校がより良くなっていく”と確信しています。

鴻巣市教育委員会 教育部 部長 齊藤 隆志 氏

今回の児童生徒・教職員の1人1台、ネットワーク整備と教育ICT基盤のフルクラウド化する以前、教育現場における課題とはどのようなものだったのでしょうか。

齊藤部長

子どもたちがICT機器を使いこなすことと平行し、先生達が効率的に働くためにフルクラウド化が必要でした。当時、校務用 PC は 1 人 1 台整備されていましたが、その PC は重く教室で使用することができない、持ち運びも想定されていませんでした。また、校務用PC、インターネット閲覧用PC、授業用PCが整備されていても校務系と学習系のネットワークを分離してしまうと、用途によって使い分けなければならず、何回もIDとパスワードを入力し、データの受け渡しにも手間がかかってしまいます。

鴻巣市の新しい基盤では、先生が 1 つの PC を文房具のようにどこにでも持ち運び、さまざまな業務をカバーできるよう、校務系、校務外部系、学習系の三層分離をやめて、フルクラウド化の環境整備を進めました。

鴻巣市教育委員会 教育部 教育総務課 主任 新井 亮裕 氏

校務支援システムの導入や高性能PCで教職員の働き方はどのように変わりましたか。

新井主任

学校現場を見た第一印象として、「先生がPCを文房具のように持ち歩く姿が飛躍的に増えた」という点が挙げられます。教職員研修や会議にもPCを持ってくる人が増え、Teamsを通じて意見交換や情報共有といったことが当たり前となり、デジタル化により、様々な良い変化が起きています。

また、2021年9月から校務支援システムの機能が新たに刷新され、勤務整理簿・勤怠管理・学校日誌・文書決裁、旅行命令簿などが電子化されました。コロナ禍においてのタイムリーな対応が可能となっています。教職員には閉域網にアクセスできる専用SIMを搭載したモバイルルーターを1人1台配布しており、セキュリティを高め、先生が自宅からも校務支援システムを使えるようになったことで、ワークライフバランス向上に寄与できました。特に、クラウド環境にふさわしいセキュリティ技術として最先端なゼロトラストネットワークも実現しています。

今後は、学習系や校務系の教育データを活用し、ICTだからこそできる教育の質の向上に貢献していきたいと考えています。

鴻巣市立鴻巣中央小学校 教諭 榎原 未晃 氏

授業はどのように変わりましたか。

榎原教諭

以前は動画の読み込みに時間がかかり、短い時間しか見せられませんでした。また、用意をしているだけで授業時間が終わってしまうこともありました。新しいパソコンは読み込みも動きも早いので、子どもたちに見せたいときにピンポイントで見せられるようになりました。

以前はここで見せたらわかりやすいのになあと思っても諦めていましたが、子どもたちのために、もっとこんなことを挑戦してみたい、分かりやすい授業のつくり方も研究できるのではないかと考えられるようになりました。

鴻巣市立鴻巣中央小学校 教諭 金子 香菜子 氏

働き方に変化はありましたか。

金子教諭

以前はパソコンも重く、データの関係上、持ち出し禁止だったので、どうしても全てを学校で仕事を行う必要があり、帰宅時間がとても遅くなってしまう事等もありました。システムを導入した現在は、パソコンの動きが早くなったので、以前30分かかっていたことが、20分で短縮されて、時間外勤務も減りました。在宅勤務時も、teamsで会議をしたり、メールで連絡したり、教員同士で連絡を密に取れています。

子どもたちに初めてパソコンが貸与される「パソコン開封式」では喜びの歓声が上がったことが印象に残っています。ネットワークの繋ぎ換えも不要になり、無線でどこにでも繋がるので、授業でも待つ時間がなくなりました。子どもたちも自分のパソコンを生き生きと意欲的に使っています。

鴻巣市立鴻巣中央小学校 校長 清水 励 氏

清水校長

時間外在校時間80時間以上の教員がここ数ヶ月ゼロになりました。効率よく仕事を終わらせて早く帰ろうという意識が醸成されました。休校の際は、家庭や子どもたちとつながるすべが全て無くなったので、ICT活用は必然でした。現在は、教師用のパソコンの持ち帰りを含め、授業をもっと深めるためにどう使うべきかを考える過程で、授業力も必ず向上すると考えています。教職員はちょっとした時間を活用し、家で授業の資料を見ておくことで翌日の仕事が効率化されることも多いので働きやすさがサポートされています。子どもたちも自分のパソコンを持つようになり、学習に前向きに取り組める子が増えました。自分の考えを伝える、友達同士で考えを知るという共有・交流の機会が増えたことが一番うれしいと思っているのではないでしょうか。

フルクラウド基盤のシステム導入から1年が経過する鴻巣市では、教職員と児童生徒は、新しい学習スタイルと働き方が実践されています。今後は、さらに教育データ利活用の促進に向けて、自治体として先端的な取組みを追求していく努力を重ねています。

鴻巣市のICT環境整備後の構成図

文・画像提供:鴻巣市、インテル株式会社、株式会社内田洋行

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