2023.04.10
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意外と知らない"校務のクラウド化とセキュリティ"(第1回) ―校務のクラウド化―

新型コロナウィルスの流行による在宅勤務の一般化などの影響もあり、働く時間だけでなく場所にも柔軟性をもたせるという動きが社会的に生まれています。教育の現場では、児童生徒が校内にいる昼間の在宅勤務は難しいかもしれませんが、情報を「外に出さない」ことで守るという考え方は、働き方改革の流れに適合しなくなってきました。学校のデジタル変革:DXはどこまで進んでいて、どのような姿を目指しているのでしょうか。第1回では「校務のクラウド化」について取り上げます。

1.オンプレミスとクラウド

校務のクラウド化について考える前に、クラウドサービスについて確認していきましょう。今までは自治体がシステムを導入する場合、サーバを購入して、自身で管理していく「オンプレミス」という形態が一般的でした。個人利用でも、ひと昔前はセキュリティ対策ソフトウェアや、ExcelなどのMicrosoft office製品も手元の端末にインストールして利用していました。しかし近年、自身でサーバを管理したり、ソフトウェアをインストールしたりするのではなく、事業者が管理するサーバにインストールされているシステムを、インターネット上で利用する形態がメジャーになってきました。この形態を「クラウド」型と言います。

クラウドには、インターネットに接続できれば、いつでもどこからでもアクセスできるというメリットがあり、働く場所は職員室に限定されません。他にも、専門的な知識を有するクラウド事業者がサーバの管理を行うため、セキュリティ水準を向上できることや、東日本と西日本など、同時に被災しにくい2拠点でデータのバックアップをとるなど災害対策も行われていること、繁忙期に合わせて一時的にサーバのスペックをあげやすいこと、など多くのメリットがあります。従来は外部と切り離すというセキュリティ対策が提唱されていたため、オンプレミスでシステムを利用することが主流でしたが、このようなメリットから、教育現場でもクラウドの活用を促進する動きが出てきています。

2.校務もクラウド化

GIGA スクール構想による学習系の1人1台端末環境は、クラウドサービスの利用を前提としていますが、学籍や成績などの機微な情報を扱う校務のクラウド化も進みはじめています。

2023(令和5)年3月8日に出された、文部科学省「GIGAスクール構想の下での校務の情報化の在り方に関する専門家会議」の最終まとめ資料でも、校務DXの方向性として、「校務支援システムのクラウド化と教職員用端末の一台化を組み合わせることで、ロケーションフリーで校務系・学習系システムへ接続可能な環境を整備し、教職員一人一人の事情に合わせた柔軟かつ安全な働き方を可能とする」とあり、校務でもクラウドサービスを利用することを推奨しています。

校務がクラウド化すると、どのような学校現場の課題を解決できるでしょうか。もう少し具体的に考えてみましょう。前述したまとめ資料で取り上げられている課題の中のいくつかを取り上げて考えてみます。

①のように、クラウド化を実現することで、働き方に選択肢をもたせることができます。校務支援システムをクラウド版で導入することで、例えば子育て世代の先生が、いったん家に帰って、また夜に少し仕事をしたりするというようなことも可能になります。それだけでなく②のように共同編集(同時に同じ資料を編集する)で、資料作成の効率化をはかったり、③のようにコストを抑えたりすることもできます。

働き方改革という観点もありますが、文部科学省も方向性に挙げているように、④のようにレジリエンス(回復力)の観点でも、クラウド化は有効です。

「平成24年版 情報通信白書」(総務省)によれば、東日本大震災の被災地域における学校の一部(30校)へのヒアリングによると、そのうち40%が震災によりデータを損失したということですが、先述したように、クラウド事業者が東西2拠点でデータのバックアップを取るなどの対策をとっていれば、成績などの重要なデータを災害から守ることができます。

2022年8月時点では、校務の中でも、児童生徒・教員・保護者向けアンケートの他、校内での伝達事項や資料・教材の共有などで、よくクラウドサービスが使われているようです。Google  Formsなどのクラウドサービスを利用してアンケートを配布すれば、保護者も自宅から回答できますし、集計も自動で行われるため、業務の効率化につながります。

このようにクラウドを利用することは、教員の自由な働き方や業務の効率化につながります。しかし、クラウドを利用したり、校務用端末の持ち帰りを実施したりすれば、今までとは違い情報が学校や教育委員会の庁舎から外部に出ることになり、情報が漏洩するリスクは当然高まります。安全にクラウドサービスを利用するために必要なセキュリティ対策について、第2回で考えていきましょう。

内田洋行 地域デジタル化推進部 関谷 理紗

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