2019.12.17
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「へんな人」のススメ

日本は全員横並びの意識が強く、そこから飛び出したり、はみ出したりするいわゆる「へんな人」は認められづらい雰囲気があるかもしれません。

そうした中で、総務省は数年前から「奇想天外でアンビシャスな技術課題に失敗をおそれずに挑戦する人」を「=へんな人」と定義し、支援する「異能vation」プログラムを実施しています。認知度はもちろん、応募者も数年間で大幅に増えているようです。

前 山形県立米沢工業高等学校 定時制教諭  山形県立米沢東高等学校 教諭 高橋 英路

異能が生まれる雰囲気

「異能」とは、文字のごとく、「お!?」と思えるような発想ができる人ですが、コミュニティによっては疎まれたり、排除されたり、なかなか厳しい状況もあるようです。学校で言えば、「〇〇について、どう思いますか?」と問われて、当たり障りのない解答でなく、一瞬「えっ!?」と思うような解答なのかもしません。

しかし、各自の考えを聞いているとすれば正解がないのにも関わらず、「そういうことを聞いてるんじゃない」とか「え!?それは違うんじゃ……?」といった雰囲気になってしまうことはありませんか??

ここで大事なのは、ちょっと観点の違った発想に対して、すべてを認めるとか、すべてが素晴らしいとか、そういったことではなく、それを皆の前で発表できる空間をつくれるかどうかということです。仮にあまり将来性のない発想だったとしても、周囲と違った発想を発表したときに、「は?」とか「そんなことを聞いてないよ」といった雰囲気になってしまえば、それ以降、二度とそういった発表はなくなってしまうでしょう。とにかく、何を言っても、とりあえず聞いてもらえる、発表することに意義があるというような雰囲気になれば、「こんなこと言ったら笑われるかも……」と躊躇していた「異能」の持ち主が堂々と発表し始め、いずれスゴイ発想が生まれるかもしれません。

例えば、昨今「コミュニケーション力は大事!」と言われているわけですが、それに賛同するような解答はいくらでも思いつくわけです。一方、「私は必要最低限しかコミュニケーヨンしない!他人と話さないときは必要性を感じていないから」といった主張が出たらどうでしょう?「なぜ?」と深掘りしたくなりますよね?気になりますよね?こういった、ちょっと変わった意見を拾う雰囲気づくりが大切だと思うんです。

プレ異能vationスクールとして

数年前から総務省が進めてきた「異能vation」プログラムですが、今年度から試行的に「プレ異能vationスクール」というものを設置し、全国各地から「異能」を発掘しよう!という取り組みが行われることになっています。

勤務校で「総合的な探究の時間」に「i-Seeプロジェクト」というキャリア教育と探究学習を組み合わせた取り組みを行っており、その一環として1年生対象に教科別ゼミ活動を実施しています。私は地歴公民ゼミを担当しているのですが、このゼミがこのたび「プレ異能vationスクール」の認定を受け、まさにこの「異能」発掘のための活動を模索しているところです。

生徒がちょっと変わったアイディアを出すとか、何か新たな商品を開発するといったことは、すでに多くの学校で取り組まれていますし、「異能」は育てるものというより、もともと持っているセンスのような部分も大きいのではないかと思います。うちのゼミでは、自分たちが奇想天外なアイディアを考え出すといったことではなく、そういった人材を発掘する!変わった人を認めていく!といった活動に重点を置いています。つまり、生徒たちは、そういった場をコーディネートすれば良いわけなので、教員が無理やり主導して、発表受けする「ネタ」を強制するようなこともありません。何を言っても否定されない、認められるような場をつくり、そういった場での対話の機会を継続的に設けていけば、いずれ「異能」と出会えるかも!?ということなんです。または、「異能」だったのにこっそり隠れていた人を発見できるかも!?ということなんです。

実際のゼミ活動

うちのゼミの1つのグループは「イベントでつくる地域社会」をテーマに活動しています。こんなテーマを聞くと、「地域活性化に向けて、こんなイベント企画しました!でも、実際やってません」といったことが往々にしてあるかと思います。実際、ゼミ活動の初期の頃は、ネットで地域のことを調べて、ありきたりなイベントを考えてみたといった話し合いが多かったようです。

このグループは、いきなり大々的なイベントを自分たちが企画するのでなく、身近な高校生を集めて、地域について語れる場(イベント)を設け、まずは自分たちが地域を知る、語ってみるといったことをコンセプトに活動しています。具体的には、「地域活性化!と言うけど、地元をどのように変えたいの?」といったテーマで参加者が対話するような小さいイベントを繰り返し行っていくというものです。その先に「特産品を使って〇〇という商品を開発!」とか「観光プランを考案!」とかあるわけですが、それ以前に、ゴールは何なんだろう?地元をどうしたいの?田舎だけど東京みたいにしたいの?といった素朴な疑問を皆で対話するということです。

この提案は非常に面白いと考えており、最近は地域活性化ありきで、いきなりその方策を考えるケースが多いような気がします。田舎を東京のようにしたいのか、観光客を増やしたいのか、定住人口を増やしたいのかで、対応が全く変わってくるはずなのに、とりあえず「地域活性化」の一言で括られてしまっている現状……。そうした現状に、「ちょっと待った」として、立ち止まってじっくり話してみようという試みです。あとは、実際のイベントの対話の中で、何か面白い発想が出てきて、実現に向けて参加者で協力し合えるような状況になれば良いなと思っているところです。

皆さん自身や学校、職場では、「ちょっと変わった人」「変わった考え方」は受け入れられる雰囲気がありますか?一度否定したり、バカにしたりすると、せっかくの素晴らしいアイディアが埋もれ、二度と表明しなくなってしまいます。「ちょっと違うな~」と思っても、否定側に回るのでなく、「自分が思いつかなかった!すごい!」「新たな視点だ!自分が抜けていた……」と受容的な態度で受け入れてみてはどうでしょうか?最後まで読んでいただき、ありがとうございました!

高橋 英路(たかはし ひでみち)

前 山形県立米沢工業高等学校 定時制教諭
山形県立米沢東高等学校 教諭


クラス担任と、地歴科で専門の地理を中心に授業を担当。生徒達の「主体的・対話的で深い学び」が実現できるよう、p4c(philosophy for children)やKP(紙芝居プレゼンテーション)法などの手法も取り入れながら日々の授業に取り組んでいます。

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