2017.01.20
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特別活動とビックリマンチョコのシールは似ている?

立命館宇治中学校・高等学校 数学科教諭(高校3年学年主任・研究主任) 酒井 淳平

昔ビックリマンチョコが大流行しました。
本来はおまけだったはずのシールに注目が集まったのです。
特に「悪魔VS天使」シリーズは1980年代から1990年代にかけて
大ブームを起こし、アニメなど様々な関連商品を生み出しました。
最盛期は毎月の販売数が1300万個だったそうです。
自分もまさにビックリマン世代ですが、当時は売り切れ続出で、
購入することが大変でした。そして運よく購入できたら、
まずはどんなシールが入っているのかを楽しみにし、
キラキラ光っている天使のシールやレアシールが出たとき
にはすごくうれしくて、友人に自慢したものです。

本来はおまけであるはずのシールが注目をあび、
シール目当てに商品を購入する。
少しおかしな話ですが、学校における特別活動は
ビックリマンチョコのシールに似ているのかもしれません。
みなさんはどう思われますか?
まずは特別活動という言葉から説明したいと思います。

特別活動という言葉知っていますか?

読者のみなさんが学校生活を振り返った時に、
どんなことが印象に残っていますか。
「体育祭・文化祭・修学旅行」などの学校行事を
あげる方が多いのではないでしょうか。
学校行事は特別活動として学習指導要領で
位置づけられています(だからどの学校でも実施されます)。
特別活動は、「教科外活動のうち、道徳の時間や
総合的な学習の時間、外国語活動を除いて、
各学校が正規の教育課程として実施する活動」
とされていて、特別活動として必ず実施しなければ
ならない事項が学習指導要領に定められています。
特別活動はホームルーム活動、生徒会活動および
学校行事から構成されています。
「体育祭・文化祭・修学旅行」はすべて特別活動に
含まれます(厳密にいうと、これからの一部を
総合学習や各教科に位置付けている学校もあります)。

学校は勉強するところであり、柱は各教科の学習です。
特別活動はいわばおまけのようなものです。
でもおまけであるはずの特別活動がずっと記憶に残っていく。
本来はおまけであるはずのシールが主役になる
ビックリマンチョコと似た構図だと思いませんか?

特別活動は「望ましい集団活動を通して」、
「よりよい生活や人間関係を築こうとする自主的、
実践的な態度を育てる」「人としてのあり方生き方
についての自覚を深め、自己を活かす能力」を養う
ものというねらいをもって実施されています。 
高校では生徒の自主性を重視するため、
「自分たちで(好きなように?)やった」という印象を
持っている方もいるかもしれませんが、実は教員は
目標やねらいをもって生徒を見守っているのです。

みんなで何かを成し遂げた経験(途中のもめごと
などを経て)、寝食を共にし集団として大きな経験
をすること、こうしたことは何年たっても人の心に残り、
その過程で成長します。
だからこそ体育祭や文化祭や修学旅行は印象に残り、
自分を成長させる大きな機会なのでしょう。
こうしたことが特別活動を通して実現されている
ということは大切な点だと思います。
ねらいなど、特別活動についてもっと知りたい方は
指導要領をご覧ください。


高等学校学習指導要領解説 特別活動編http://www.mext.go.jp/component/a_menu/education/micro_detail/__icsFiles/afieldfile/2010/01/29/1282000_20.pdf

特別活動を中核にすえた学校改革

特別活動を軸に学校改革を進めた学校があります。
兵庫県立東灘高校は
「生徒の夢を形にするキャリア教育の推進」を研究テーマに、
平成26・27年度教育課程研究指定校(特別活動)
として実践を進められました。

東灘高校では、多様な課題を抱え、成功体験に乏しい
生徒が少なくないという実態からスタートし、
こういう実態があるからこそ、
「生徒の自尊感情を高めながら、夢を持たせ、
一人一人の特性や能力、希望に応じた進路を
実現させる」ということを目標にします。

目標を達成するために、まずは特別活動として
実施する3年間の指導を体系化することから
スタートされました。
そして学校行事・ホームルーム・インターンシップ
などの体験学習を一つの表にまとめられます。
同時に教員研修も実施し、指導する教員の
目線あわせも進めます。ここでの取り組みは、
まさにキャリア教育の体系化と言えるものですが、
その結果として生徒の自己肯定感や充実感、
将来を考えることなど様々な意識の向上が見られました。
報告書ではどのような生徒がどのように変化したのか
についてもう少し詳しく触れられています。
これは他の学校が取り組みを考える際にも参考に
なるものでしょう。
たとえば「夏季体験学習(≒インターンシップ)で、
生徒が学習の意義をより感じるようになる」などの
結果も明らかになっています。
より詳しく知りたい方は以下のページをご覧ください。
東灘高校の実践は特別活動の可能性の大きさを
示唆しているように思います。

東灘高校 研究紀要 
http://www.hyogo-c.ed.jp/~higashinada-hs/kenkyu/monkasitei.pdf

特別活動は日本が世界に誇れる教育かもしれない

 私事になりますが4年半ほど前にJICAの
教師海外研修に参加させていただきました。
そのことがあり、青年海外協力隊に参加された方
とも多く知り合うことができました。
びっくりしたのは「運動会」など日本の学校行事が
海外で注目されていて、そうした行事を実施する
お手伝いをしたという方の多さです。
「行事を通した生徒の成長・集団作り」は日本では
どの学校でもすべての教員が意識していることで、
学習指導要領では「特別活動」として位置付け
られています。この「特別活動」が外国では当たり前
ではないということ、そして「特別活動」は日本の教育の
良い部分として世界に注目されているということ。
このことはもう少し注目されてもいいのでは
ないでしょうか。

海外に行くことで日本を客観的に見れたと言う
人は多いです。教育も同じで、海外から見ることで
日本の教育を客観的に見れるのでしょう。
国内ではあたり前に実施されている日本の教育の
ある部分が、海外から見たときにすごい教育
なのです(もちろんその逆もあるでしょうが)。
そして間違いなく特別活動は海外に輸出できる、
日本が世界に誇れる教育なのです。

学習指導要領が変わります。並行して、現在の
学習指導要領の実施状況が公開されるかもしれません。
次期学習指導要領でうたわれている
「社会に開かれた教育課程」を実現するにあたって、
各教科はもちろん大切ですが、
総合的な学習の時間や特別活動など教科の枠では
ないところにこそが、いい教育が実現できるかの
生命線になるのかもしれません。

もちろん今実施されている特別活動には課題も
あるでしょう。またこれからを考える際には
次期学習指導要領で大切になる、育成すべき
資質・能力の3つの柱という視点からの検証も重要です。
つまり特別活動を通して
「何ができるようになるのか(知識・技能)」
「知っていること・できることをどう使うか
(思考力・判断力・表現力)」
「どのように社会・世界と関わり、
よりよい人生を送るか(学びに向かう力・人間性)」
ということの明確化が求められます。


いろいろありますが、指導要領の改定という時に
どうしても「新学力観」「アクティブラーニング」などの
キーワードや、「英語が小学校に!」など各教科の
内容にばかり注目が集まるように思えてなりません。
しかし特別活動にも大事なポイントがあります。
特別活動が今どのように実施されているのか?
新しい学習指導要領で特別活動はどうなるのか?
このあたりも注目していきませんか?

お読みいただきありがとうございました。
特別活動について少しでも伝わればうれしいです。

引き続きよろしくお願いします。

酒井 淳平(さかい じゅんぺい)

立命館宇治中学校・高等学校 数学科教諭(高校3年学年主任・研究主任)
文科省から研究開発学校とWWLの指定を受けて、探究のカリキュラム作りに取り組んでいます。
キャリア教育と探究を核にしたカリキュラム作りに挑戦中です。

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