2007.01.30
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独立行政法人メディア教育開発センター(NIME)の推進するICTの教育利用とは? 清水康敬理事長との懇談会

独立行政法人メディア教育開発センター(NIME)の推進するICTの教育利用とは?

独立行政法人メディア教育開発センターが主催する懇談会に、学びの場.comの記者が行ってきました。ところでみなさんは、"NIME"や"ICT"という言葉にピンとくるでしょうか? どちらの言葉も聞きなれない方が多いのではないでしょうか。今回の懇談会は、教育に確かな効果があるとされるICTの利用を推進するために、まずはNIMEやICTについて幅広く知ってもらいたいというセンターの意向で開催されたものでした。

NIMEとは?

 独立行政法人メディア教育開発センター(National Institution of Multimedia Education、以降NIMEと表記)は、1978年に設立された国立大学共同利用機関放送教育開発センターに始まって改称・改組しながらも約40年間に渡り、「研究開発」「普及促進」「大学院教育」を主軸として教育におけるメディアの利用促進を行ってきました。

 今回の懇談会では、NIMEの理事長である清水康敬氏自らマイクを握り、NIMEの活動や教育におけるICT利用についてお話されました。

IT+コミュニケーション(Communication)=ICT

 そのNIMEでは現在、ICT(Information and Communication Technology)の教育における利活用を進める事業を行っています。ICTという言葉は馴染みの薄い言葉かもしれませんが、「IT革命」という流行語と共に一気に世間に浸透した“IT”に、コミュニケーション(Communication)の頭文字“C”を加えたものだという説明を付け加えると、少しは身近に感じることができるでしょうか。

 しかし、なぜ“IT”といういかにも時代の最先端にある機械をイメージさせる言葉に、“コミュニケーション”という人間味のある言葉が付け加えらたのでしょう。

NIMEについて熱心に語る清水康敬氏。
NIMEについて熱心に語る清水康敬氏。

それは、ITは常に人と人とのコミュニケーションの間に介在しているからです。日常生活の中でよく使うお馴染みのIT機器、携帯電話やパソコンを利用する場面を思い描けば「なるほど」と納得する方も少なくないでしょう。

 ITにコミュニケーション(Communication)が加わって生まれた言葉がICT。昨今のITブームの影響からか、ついついICTという言葉からはパソコンばかりを連想してしまいがちですが、ICTを教育に利用するとはどういうことなのでしょうか。ここからは、質疑応答で交わされた清水氏とのやりとりから見えてくる、教育におけるICT利用についてレポートします。

ICTの教育的利用について

学びの場.com(以下、学びの場) どうして教育にICTが必要なのでしょうか? また、ICTがもたらす教育的効果とは何ですか?

気軽に質問のできる懇談会。もちろん学びの場.comの記者も質問しました。
気軽に質問のできる懇談会。もちろん学びの場.comの記者も質問しました。

NIME清水康敬理事長(以下、NIME清水) ICTの利用は、子どもの学力向上のためです。イギリスのある教育機関の調査では、ICTの利用により子どもの学力が向上したという結果が発表されています。また、子どものメディアリテラシー(情報活用能力)を向上させることで、コンピュータを使える子どもと使えない子どもの格差がうまれてしまうこと(デジタルデバイド)を防ぐという目的もあります。

 アメリカで、コンピュータの操作ができる・できないによって将来の収入に大きな差が生まれるという調査結果が出ており、このような格差が生まれることを避けるためにも子どもたちにメディアリテラシーを身に付けさせることは大切なのです。

学びの場 ICTを利用することで得られる学習効果とはどのようなものですか?

NIME清水 現段階では、学校現場でICTを使うクラスと使わないクラスの比較実験のようなことは行っていないため、目に見えて分かるような数値は上げられませんが、ICTの利用によって、より高い学習効果を得ている学習者は少なくありません。

 学校教育とは離れてしまいますが、ある企業で行ったe-learningによる研修でとても興味深い結果がでました。e-learningを導入して社員に学習をさせたところ、導入前と比較して習得した知識レベルは変わらないものの、学習に費やした時間が平均で半分になっていたといいます。学習効率を上げるということは学習者の負担を軽減することにつながり、注目すべき点であると思われます。

ICTを使った新しい授業の展望

学びの場 ICTを利用することで可能になる、新しい授業の形態などの例は何かありますか?

NIME清水 はい、あります。現在NIMEでは、小学校における英会話学習システムの開発についての研究を行っています。英会話の授業は、ネイティブの教師に教わることが理想ですが、離島の学校などにも隈なく外国人の外国語指導助手(ALT)を派遣するのは、予算的にも人材確保の点から見ても難しいのが現状です。

 そこで、テレビ電話を利用してNIMEのスタジオと日本各地の小学校をつなぐことによって、ネイティブの教師とのコミュニケーションが可能になったのです。この授業実践では、ネイティブの教師が決まったテーマについて話している様子が録画され、データとして保存されます。ネイティブの教師と児童のやりとりをデータベース化して充実したデジタルコンテンツ(電子化された教材)を残すことで、より多くの学校で良質なデジタルコンテンツを利用することが可能になるのです。

 また、児童がネイティブの後について発音練習ができるように作られたコンテンツなどを整備していくことで、英会話の授業の様々なシーンで役立つデジタルコンテンツを充実させていきたいと考えています。

 今回は、ICTを教育に浸透させようと尽力されているNIMEによる懇談会の様子をレポートしました。テレビ電話を使った小学校英会話学習の授業での児童たちの様子を、「子どもたちは非常に楽しんでやっていますよ」と目を細めながら語る清水氏が印象的な懇談会でした。この小学校英会話学習以外にも、NIMEはICTの教育利用を推進するために様々な事業を行っています。

 ※当記事の情報は、公開当時のものです。

(取材・文:須藤綾子)

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