2018.02.07
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[働く個人]による残業の主張~平成×昭和で語る~ 世代間の意識の違いを通じて、企業の、そして教育現場の働き方改革を考える

昭和生まれ、平成生まれ、それぞれの残業に対する意識を浮き彫りにしながら、定員いっぱいの70名の参加者を交えて、これからの働き方について熱いディスカッションが展開された。このイベントの様子をリポートしつつ、教育関係者や学校教職員の働き方改革のヒントを探る。

【開催概要】

日時:2017年12月6日(水)18:00-21:00
場所:内田洋行 ユビキタス協創広場 CANVAS
主催:一般社団法人 経営学習研究所(MALL)
共催:内田洋行教育総合研究所・知的生産性研究所 

 [プログラム]
1.残業についての歴史や背景について~稲熊圭太氏(経営学習研究所理事)
  共催挨拶~平山信彦氏(内田洋行 知的生産性研究所長)
2.残業の主張
3.パネルディスカッション
4.ダイアローグ
5.ラップアップ~三原裕美子氏・岡部大介氏(経営学習研究所理事)

データからみた「残業」

 はじめに、経営学習研究所の稲熊圭太氏が、「残業についての歴史や背景」について、年間労働時間の推移や長時間労働の実態等をグラフやデータを用いて解説した。また、女性の労働力率(M字カーブ)の変化を例に、以前は30代で下がっていたが、最近はゆるやかになってきたことなどを示した。
 グローバル化の波、労働人口の減少、テクノロジーの進歩など様々な要因を軸にして、直近の10年で働く時間がどう変わってきたかを検証する必要があるとし、単純に残業時間を比較するのではなく、労働時間と密度の観点から、「残業の質」を考えることが重要だと語った。

残業の主張

 次に、平成生まれの会社員3名、昭和生まれの会社員3名が、それぞれに、自らの体験や仕事に対する意識などを通して、「残業」のとらえ方やこれからの働き方がどうあるべきかなどについて思い思いに語った。

平成生まれの主張

「残業は、自分の生産性を測るバロメーター」

学生の頃の経験から、勉強と部活を両立させると、よいスパイラルが生まれるという信念があり、仕事とプライベートを充実させてきた。自分の人生に責任を持ち、自己管理することが大事である。

「残業の是非は、その仕事に対する目的意識や労働の質の解釈による」

 漫然と残業するのではなく、今、自分がなぜ残って仕事をしているのか(させられているのか)?どんな残業ならやるべきなのかなどを理解・納得しながら進めるべきである。

「残業のあり方は変えていかなければならない」

 社会人1年目は、早朝から深夜まで一生懸命働いた。仕事が楽しいときは頑張れるものだが、その結果、体調を崩した。その後は、生活と仕事を安定的に持続するためにも、無理な仕事のやり方は、変えなくてはならないと思うようになった。

昭和生まれの主張

「残業は、離職へのカウントダウンスイッチ」

 たとえ、遅くまで働くことが苦にならない人でも、仕事にワクワク感がなくなると、離職を考えるようになる。以下の3つを感じたら「残業させられている」という思いが強まり、離職へのカウントダウンが始まる。

1.ゴールが分からない
2.課題が面白くない
3.主体的に働けない

「残業が、同僚との絆を生んだ」

 若いときは仕事が好きでワーカーホリック気味であった。先輩と車座になって、残業食を食べながら、家族みたいに色々な話をした。働き手は、職場を単なる仕事の場ととらえるのではなく、自分にとっての意味・意義を感じながら成長できる場としてほしい。

「残業を通じて一人前になれた」

一般職で入社後、30代で総合職のメンバーと一緒に仕事をするようになった。残業させられていると感じたことはない。今は、仕事を通じて成長し、残業も自分でコントロールできるようになった。昨今、働き方改革が叫ばれ、残業を悪とする風潮があるが、自分は残業で成長できたと思う。

ワーカー個人が仕事のイニシアティブをとるために

 内田洋行 知的生産性研究所長の平山氏は、働き方改革のためには、会社が組織として考える「人事」「環境」等の外部要因の改善のほかに、働き手それぞれが自身の仕事を見直し、自立したワーカーとしてシェイプアップすることが必要と語った。例えば、「抱え込み型」ワーカーであれば、仕事をリリースし、新たなスキルを見つけることに舵を切ってみる。とか、手際の悪いワーカーであれば、仕事のイン・アウトを見直すなどである。また、マネージャーは、部下が、それぞれの仕事を自分のものとして整理しやすくするための「シェイプアップコーチ」になるべきだと語った。

まとめ

 タイトルにあるような、「昭和VS平成」のバトルにこそならなかったものの、登壇者、参加者ともに、残業に限らず、仕事に対しての高い意識と熱い思いが感じられる活気あるイベントとなった。(途中、進行が滞るほどの活発な意見交換がなされた)
 今回、世代を問わず、対立軸の一つとして挙がったのが、「自己の成長」と「残業」を結び付けて考えるかという意識の問題。これらを整理して議論する上でも、「残業」をひとくくりにせず、「人を疲れさせる残業」、「人に達成感を与えるが、無くしていくべき残業」、「必要な残業」などと分類して、それぞれに対応していくことが大切だと語る平山氏の言葉が印象に残った。
 さいごに、参加者から「残業を無くす制度作りは大切だが、人を置き去りにした制度にしてはいけない」という意見が出され、多くの参加者か頷いていたのが、この会の意義を象徴していた。

記者の目

 今回の参加者の多くは、企業人であったが、わずかながら教育関係者の参加も見られた。学校を中心とした、我が国の教育現場の働き方改革のためには、産業界以上に、制度や環境面の改善が求められるのが実情だ。それでも、ワーカー個人の仕事に対する意識改革や行動変革なしに真のチェンジワーキングは実現できないという点では、共通の課題を持つといえる。外部要因の改善を待つのみでなく、自分で考え、自分のできることから提案、実行していく姿勢が大切であるとあらためて認識させられた。

取材(文・写真):内田洋行広報室/内田洋行教育総合研究所
編集:学びの場.com

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