2020.10.29
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学校の枠を超えた!高校生オンライン授業「岐阜サマースクール」(後編) コロナ禍のなかICT活用のノウハウを学んだ教員たちが企画した特別授業

前編に引き続き、高校生向けのオンライン授業「岐阜サマースクール」の模様をリポートする。後編では、小説家の中村航氏による特別講座、終わりのホームルーム、教員たちと識者による「新時代教育座談会」の様子を紹介する。

開催概要/プログラム(詳細は前編参照)

日時:2020年8月2日(日)8:30~15:00
場所:オンライン開催(Zoomを使用)
主催:【有志団体】オンラインの活用から新時代の学びをつくる勉強会(事務局:岐阜県立恵那高等学校)/協力:株式会社スクールエージェント
参加:県内の高校生39名、教員22名(11校)
高校生は第1部のみ参加。

〈プログラム〉
=第1部=
8:50 ~ 9:00 始まりのホームルーム:開講、趣旨説明
9:00 ~ 9:50 講座1:未来創造ワークショップ「学びの未来を考える~ニューノーマル時代の面白い学びを作れ!~」
10:00 ~ 10:50 講座2:国語力ワークショップ~ディスコースマーカーの強制力を体感しよう~
11:00 ~ 12:00 特別講座:「高校現代文を10倍楽しく!#山月記 #BangG Dream バンドリ 小説家 中村航先生と!読んでみよう 書いてみよう」
(担当教諭:岐阜県立恵那高等学校 工藤志栄 教諭/講師:小説家 中村航氏)
12:00 ~ 12:30 終わりのホームルーム:まとめの会~差異を乗り越え世界のリーダーへ~
(担当講師:岐阜県立岐阜工業高等学校 和田喜孝氏)
=第2部=
13:30 ~ 15:00 新時代教育座談会:授業の振り返りとゲストのコメント等
(青山学院大学 教授 松永エリック・匡史氏)
(株式会社Libry 代表取締役CEO 後藤匠氏)

※下線は当記事(後編)で紹介

特別講座:「高校現代文を10倍楽しく!#山月記 #BanG Dream! バンドリ」 

小説家 中村航先生と!読んでみよう 書いてみよう

特別講座講師:小説家 中村航先生

講師の中村航氏は岐阜県出身の小説家。2002年『リレキショ』にて第39回文藝賞を受賞しデビュー。続く『夏休み』、『ぐるぐるまわるすべり台』は芥川賞候補となった。ベストセラー『100回泣くこと』ほか、『デビクロくんの恋と魔法』、『トリガール!』等、映像化作品も多数。

今回の特別講座では、若者に絶大な人気を誇る「BanG Dream! バンドリ」*の原案となった氏の小説と「山月記」を比較して読み解きながら、バンドリの物語の続きを生徒自身が創作して実際に書いてみるという斬新なワークショップが行われた。また、中村氏への質問タイムを設けるなど、生徒たちは最前線で活躍している小説家から「読むこと」「書くこと」について直接学ぶ貴重な体験を得た。

*注:「BanG Dream! バンドリ」とは?
アニメ、ゲーム、コミック、声優によるリアルライブなど様々なメディアミックスを展開する次世代ガールズバンドプロジェクト

特別講座の概要

特別講座:高校現代文を10倍楽しく!

〈授業の目的〉
1. オンライン授業の特性を活用して「読むこと」「書くこと」について学び、プロの助言を得ながら技能習得にトライする。
2. 教室での学びが、日常を豊かにする学びへと広がることを体験する。

〈新しい学びの評価軸〉
デジタルリテラシー + 読むこと、書くこと

〈ワークショップの流れ〉
1 オンラインを通して「山月記」を読み、作品の理解を深める
2 「山月記」と「バンドリ」の比較を通して、小説の情報を仕分けする。
3 オンライン上のスライドに創作した「バンドリ」の続きを書いてみる
4 中村航先生のアドバイスや質疑応答を通して小説の読み方、書き方、向き合い方を学ぶ

情報の仕分けをしながら小説を読んでみる

2作品を読み解いて比較する

  • 情報の仕分けのポイント

  • 題名(タイトル)=主題の設定

  • 主人公の設定

  • 2作品の比較表

はじめに、授業案の作成と進行を担当した恵那高校の工藤教諭から、小説を読む際の基本的なポイント「情報の仕分け」について説明があった。生徒は「山月記」を朗読しながら読み取ったさまざまな情報を、場面、主人公、伏線などのカテゴリーに整理し仕分けした。その後、中村先生は自身の作品「BanG Dream! バンドリ」と「山月記」の対比を行いながら、主題の設定、主人公の設定、物語の誘引、時間軸の移動・段落、伏線の存在、小説を書く際の「型」などについて、実際の表現を例に挙げ、生徒たちと言葉を交わしながらわかりやすく説明していった。
中村氏は、主人公の設定の話題になると、実は工藤教諭が高校の同級生であったことに触れ、「もしかしたらバンドリの主人公のモデルは工藤先生かもしれない」と生徒を驚かせる一幕もあった。

また、「山月記」の時間軸が過去から未来へ向かうのに対し、「バンドリ」では現在と過去を行き来するという構成になっていることを解説し、創作のコツや視点の置き方について以下のように語った。
「物語はふつう未来に向かって進む。ただ、同時に過去に向かわせることでいろいろなことがわかってくる。それ(過去)が現在で交わったときに小説っておもしろくなるって思っていて。『これからどうなるんだろう?』という未来への軸と、『なぜこうなっているんだろう?』という過去に向かう軸、これを同時にやろうとするとぼくの作品のような構造になるんです。あまり回数をやり過ぎと冷めてしまうので、なるべく少なくしつつ、という感じですね」

工藤教諭は、講座前半の「読む」パートを以下のようにまとめた。
「現代文はわからない、小説はなにを勉強したらよいかわからない、という意見をとてもよく聞きます。今日、「山月記」と中村さんの作品とを照らしあわせて考えてみると、やはり読み方、読む視点を持つのって大事なんじゃないかなと思います。現代の作品を読む際にも応用できる力だと思いますので、視点を持って読むことで、読書の楽しさが変わると思います」

「バンドリ」の続きを創作してみる

自分だけの物語を自分の言葉で書いてみよう

自分の言葉で物語の続きを書いてみよう!

後半で生徒たちに与えられた課題は、「BangG Dream! バンドリ」第三章の続きの物語を自分の言葉で書いてみよう!というもの。
オリジナル作品に書かれた「土曜と日曜、香澄(主人公)は取り憑かれたように、ギターの練習をした。歌を歌いながら・・・」の続きを考え、自分なりの表現で書くことに挑戦する。
オンラインで、生徒個々に書き込み用のスライドが共有された。中村氏は、次々と書き込まれる生徒たちの瑞々しいストーリーを読みながら、「へー」「あ、これすごい」「ほぉ、これは見事ですね」「最後をどうするかを決めると書きやすくなるよ」などと感想やアドバイスを伝え、創作活動を楽しそうに見守った。

時間を迎え、まだまだ書き足りなさそうな生徒たちに対して中村氏は、「ステキブンゲイ」という氏の運営するWeb小説投稿サイトを紹介。「もっと書きたい、書いてみたい、と思う生徒はぜひ応募してみてください」と呼びかけた。

小説家の極意とは? 中村航先生に聞いてみよう

参加した生徒の書いた作品

最後は、中村航氏への質問タイム。
小説家になりたいと言う生徒からは、「売れる小説を書くには物語の構造が大切ですか?」という質問。
ほかにも、「映画や漫画などもあるなかで、小説から物語を得るということについてどのように考えますか?」「小説を書くときはなにを考えているんですか?」「小説を書くときに必ずやっている習慣などはありますか?」「夢を追う過程でほかにもっと好きなこと、やりたいことが見つかったときはどうしますか?」など、多くの質問が飛び交った。

そのなかで、ある生徒と中村氏の対話の一コマを紹介する。
高校生:「なにかをしようとするとき、真似ることから始めることもあると思うんですけど、好きな作品に影響を受けてしまいそうになることはないですか?」

中村氏:「ぼくは比較的(影響を受けることは)ないんですよ。でも、真似ることはとっても大切だと思います。例えば、自分の好きな作品を書き写してみるんですね。そうすることでわかることがたくさんあるんです。あ、こんなところで点(読点)を打つんだ、とか、こんな言い回ししているんだ、とか。だから数ページでも自分の好きな作品を書き写してみるとすごく書けるようになる、ということを実感したことがありました」

文章力を上げるための具体的な助言とともに、「真似ること(学ぶこと)」の大切さを語る一場面が印象的だった。

特別講座のまとめ

先生方からのメッセージ

岐阜県立恵那高等学校 工藤志栄 教諭

今回のオンライン授業を通じてつながった高校生に対し、中村氏は、以下のメッセージを伝え未来ある生徒たちを激励した。
「今はオンラインで学ぼうと思ったらいくらでも学べるんですよね。なんでもできるんですけど、ひとつの場所に集まってコミュニケーションをとる、なにか同じことを教わっても隣にいる誰かとは感じることは違うかもしれない、そういう中で高校生活3年間を過ごすことの大切さがあると思います。ぼくの高校生の頃もこんな(オンラインの)授業があったらどうなっていたかなぁと思ったり。今の好奇心を大事にして、友達といっしょにいられること、コミュニケ―ションできることを大切にしてこれからの道を探していってください」

また、工藤教諭は、以下の言葉で特別講義を締めくくった。
「みなさんは日々学校の教室のなかで学んでいますが、教室での学びは実社会で応用できるものであって将来の自分の役に立っていくものであると感じてもらいたかった。学校の勉強をただの試験のためのものと考えずに、将来に向けての自分のための勉強なんだと捉えて学んでいってほしい。オンラインでプロの小説家とつながって授業を行うという体験を通じて学びを拡げる可能性を感じました。中村先生とわたしのように、高校時代の出会いというのはその先の生き方が大きく異なっていてもふとまた再会すればまた18歳に戻れるんだなという気がしていて、今の学校の仲間とのいろんな学びを、この先も大切にしていってほしいなと思っています」

終わりのホームルーム

~差異を乗り越え世界のリーダーへ~

終わりのホームルーム:テーマの提示

高校生向けオンライン授業の最後は、「差異を乗り越え世界のリーダーへ」と題したオンラインホームルームである。参加する生徒たちの担任教師という見立てで、岐阜工業高校の和田喜孝氏が担当した。
今回、ホームルームのテーマとして取り上げたのは、「OECDラーニング・コンパス(学びの羅針盤)2030」*に示された個人や社会のウェルビーイングのひとつ、「差別なき地球社会」。世の中の差異をどのように捉え、問題を解決していく「リーダー」としてどのようにこれらの差異を乗り越えていくかを生徒たちといっしょに考えようという学習プログラムだ。

注*:OECDラーニング・コンパス(学びの羅針盤)2030とは?
OECDがEducation 2030プロジェクトの成果として公表した「2030 年に望まれる社会のビジョン」と「そのビジョンを実現する主体として求められる生徒像とコンピテンシー」の概念に基づき、教育の望ましい未来像と進化し続ける学習の枠組みを図示/説明したもの。(詳細は関連リンク参照)

〈ホームルームの目的〉
・地球上の様々な差別問題群の底流を“差異”というキーワードで考え、乗り越える方法を模索する。
・世界リーダーにつながる身近な具体的挑戦に気づき行動の決意をする。

〈新しい学びの評価軸〉
・より良い未来の創造に向けた変革を起こすコンピテンシーの育成
・困ったときには相談相手に自己開示をし、健やかに活動できるように自己調整できるコンピテンシーの育成

〈主な題材〉
・気付き:差別問題の底流に、差異の執着があることを考える
・知る:アメリカの黒人差別問題と背景を知る
・問い:黒人差別問題を自分事としているか
・振り返る:弁当を固定した友人と食べていないか
・問い:いじめの問題を自分事としているか
・気付き:“差異”を乗り越える方法
・学び:哲人ソローの言葉:自身の関係性は無限の広がりをもつ
・学び:哲人デューイの言葉:隣人との人間的つながりが世界のリーダーの要件
・決意:クラス全員と友人になる挑戦

差異を乗り越える3つのSTEP

終わりのホームルーム:キーワード

和田氏は、差別問題の底流には「差異」への執着があると説明し、生徒に2つの質問をした。ここではオンラインツールの投票機能はあえて使わず、対面のホームルームと同様に挙手による回答を求めた。

  1. 黒人差別問題を自分事としていますか?(挙手が3割程度)
  2. いじめの問題を自分事としていますか?(挙手が4割程度)

まずは、歴史的背景や身近な生活習慣を題材にして「差別」と「差異」の関係を生徒にイメージしてもらう。そのうえで差異を乗り越えるための3つのSTEPを、2人の哲人の言葉を引用しながら解説した。

STEP1:人種や民族や文化の差異を恐れたり拒絶しない
「われわれの関係性は無限の広がりをもつ」(アメリカ・ルネサンスの巨匠ソローの言葉)
自身の人間関係の広がりは無限大であり、他者との差異は当然に存在するが、それは恐れや拒絶の対象ではないと気づく。

STEP2:他者を尊重し、理解し、成長の糧とする
「隣人への理解力を深める人間的な体験がなければ、外国の人々を深く理解していくことはできない」(哲学者 ジョン・デューイの言葉)
身近な人への理解に努めることから、やがて世界への理解を深められる人間へと成長することを理解する。

STEP3:他者にかかわる勇気
「クラス全員と友人になろう」というブレイブアクションプランを設定。声をかけ話しを聞く、良いところを引き出すなどの具体的な行動計画を立てる。

終わりのホームルームのまとめ

岐阜県立岐阜工業高等学校 和田喜孝氏

「差異を乗り越え世界のリーダーへ」という壮大なテーマに戸惑い気味だった生徒たちも、和田氏の解説を聞き、「まずはクラスから」という手の届く行動目標の大切さに気づいたようだ。

参加した生徒の声をいくつか紹介する。

  • クラスメイトの名前を覚えるためにも、積極的に自分から関わっていこうと思った。
  • 自分から話しかけたい。また、挨拶だけでも自分からしていきたいと思った。
  • 人間同士の隔壁を自ら作ってはならない事を感じた。

和田氏は次の言葉で終わりのホームルームを締めくくった。
「世界のリーダーとは、大統領になることではありません。隣に座っている子といっしょお弁当を食べる機会を自分がつくること、それができれば差異を乗り越えたことになります。」

第一部(オンライン授業)に参加した生徒たちの感想

  • 夏休みに色々なボランティアをして視野を広げてみたい。
  • 物事に対して考えを深め、広げていけるようになりたい。
  • 好きなことやりたいことに、積極的に時間を費やして、受験だけではなく一生の学びをしていきたい。
  • 「ミライ+コロナ」を見て新しいことを考えてみたいと思った。差異を恐れないというお話を受けてまずは話したことのない人に話しかけてみるところから始めたいと感じた。
  • 「勉強が出来る」ことは非常に大切なことですが、それだけでないのも確かです。自分が本当に知りたいことを夢中になって、追求していくことが自身にとって大きな変化をもたらしてくれる。今後は、自分だから出来ることを探して、行動に移していきたいと思います。
  • 凄く楽しい授業でした。こういう授業が学校でも展開されてたら、もっと勉強が楽しくなるかなと思いました。自分も、試験のための勉強じゃなくて、学ぶことを楽しんでいけるような生徒になろうと思えました。
  • 他校の生徒の方と交流したり、普段は聞けない講師の方の話を聞くことができ、とても、貴重な体験になりました。
  • 自分とは違う人の意見を聞くことで新たに発見できることも多くありました。
  • 初対面の方とオンラインで話すのは緊張したけど、いい経験になった。

【第2部】新時代教育座談会

第一部(授業)の振り返りとゲストのコメント

デジタル化に必要なのは視点を学生に戻すこと

青山学院大学教授 松永エリック・匡史氏

生徒たちがオンラインから退出した第2部では、参加した先生方による「新時代教育座談会」が開催された。ゲストには、教育のデジタル化を専門とする青山学院大学教授の松永エリック・匡史氏と株式会社Libry代表の後藤匠氏が加わり、午前中に行われた高校生向けオンライン授業の感想や各々の教育に馳せる思いが語られた。

ここでは、オンライン授業にオブザーバーとして参加した2人のゲストと岐阜サマースクールの企画運営に協力した田中善将氏の所感とメッセージを紹介する。

<松永エリック・匡史氏>
青山学院大学 地球社会共生学部 教授/音楽家(ギタリスト)/メディア&エンターテイメント業界に特化したビジネスコンサルタント/デジタルトランスフォーメーションの専門家。

「みなさんの素晴らしい取り組みに感銘を受けました。昨今のデジタル化、これをデジタルトランスフォーメーションと言いますが、わたしはこのデジタルトランスフォーメーション(以下、DX)の専門家です。リアルをデジタル化していくことを指してDXと考えている方が多いのですが、例えばオフラインでやっている授業、これをどうやったらオンラインで実現できるか、などは実はDXとは違うんですね。

コロナによってインターネットは変化しました。今までのインターネットはリアルじゃなかった。インターネットはサブだった。コロナになってインターネットがリアルになった。今までのインターネットに求められたのはリアリティ、リアルに近いものを求めたわけです。今あるものをデジタル化する、という発想ではなく、ゼロから創ることをしないとDXは成功しないと思っています。

例えばカリキュラム、授業のやり方ももちろんなのですが、視点を学生に戻すこと。「学生がどう学びたいと思っているか」をどう引き出すかがいちばん大事です。そしてこれをやるためには若い世代と経験豊富な世代がディスカッション(議論)をすることです。教育をゼロから創っていくことができるか、それをここで宣言すべきだとぼくは思っています。

コミュニティの質は「共感できる仲間が集まっているか」で決まります。共感できる仲間たちが集まれば必ず新しいものが生まれます。それをゼロベースで考えていくことが教育を変えていくことにつながります。そして、「ゼロからなにか創っていきたい」という想いのある方は、いつでも声をかけてください。素晴らしい会に呼んでいただいてありがとうございました。」

社会の環境が元に戻ったときに、「元に戻さないこと」

株式会社Libry代表 後藤匠氏

<後藤 匠氏>
株式会社Libry代表取締役CEO/同社の提供する中高生向け学習サービス「Libry(リブリー)」は、参考書や問題集をデジタル化し、正誤や回答時間などの学習履歴データから苦手なところをレコメンドしてくれるアダプティブ・ラーニング機能を有する。

「まずは日曜日の早朝からこうした学びの場に参加した高校生たちに拍手を送りたいと思います。そして今日までの準備に奔走した先生たちにもリスペクトと感謝を込めて拍手を送ります。
「理想の教育ってなんだろうね?」っていうディスカッションのなかで、多くの生徒が「いろんな人と話しがしたい」「価値観を吸収したい」と、学校の外の知識含めてどんどん吸収していこうとする姿勢に頼もしさを感じました。

コロナでの一斉休校のなかで「学びってなんだっけ?」「なんで勉強するんだっけ?」と初心に立ち返ることができた人も多かったんじゃないでしょうか。そして我々オトナの役割は、社会の環境が元に戻ったときに、「元に戻さないこと」が大切だなと感じました。

わたしも教育事業に携わるひとりの人間として、子どもたちがより良く学べる環境を、先生たちと連携しながら引き続きつくっていきたいと思います。今日はありがとうございました。」

ここからがスタート。学び続けてもっと良い授業を。

スクールエージェント株式会社代表 田中 善将氏

<田中 善将氏>
学校のICT支援を行うスクールエージェント株式会社代表/岐阜サマースクールの企画運営に協力/郁文館グローバル高校で教鞭も取る

「参加してくれた生徒たちには感謝しかありません。ただ、各授業の時間設計や扱う内容や量を思い切って捨てていく部分も必要だったのではないだろうか、と反省点はあります。これをスタートとして学び続けてもっと良い授業をつくっていきたいですね。

今日は勉強会ではなく「現場」でした。この挑戦を止めてはいけない、スタートにしていかないといけないなと強く感じました。サマースクールを実現できて嬉しいし、勉強にもなったし、でもまだまだ「もっとできる」という悔しい気持ちもあります。

これから1年、2年で小・中学校の先生たちはICTを活用した授業を組み上げてくる、そのときに高校にいる我々が、ICTで学んできた生徒たちを受け止めきれない状況はあってはならない。そういう責任感をもって学び続ける必要があると思います。これからも岐阜県の先生方をはじめ、ご縁のあった先生方と手を取り合って新たな教育の時代を創っていく一助になれるよう努めていきます。本日はありがとうございました。」

第2部(新時代教育座談会)に参加した教員たちの声

  • 新たな価値観を手に入れて情報化に富んだ学校を作っていきたいと感じました。このコロナ禍の中で大変な状況だからこそネットワークを利用した授業形態や文化活動をしていけるように先生方と話したいと思いました。
  • オンライン環境が整ってきているのでもっと多くの研修に参加したいと思った。
  • すごくためになりました。明日からの授業スタイルを改めて考えるきっかけになりました。
  • グループワークのとき、ファシリテーターとしてタイムマネジメントが上手くできず、反省しています。また、グループワークの前の自己紹介やアイスブレイクの活動、カメラをオンにすることなどが、初めて出会う仲間とのオンライングループワークを盛り上げるためには大切なことだと再認識しました。
  • 反省点はたくさんありますが、それを超える学びとわくわくがありました。
  • 岐阜の先生方が、オンラインを活用されながら、新しい教育の姿を創っているところに心強さを感じました。
記者の目

新型コロナウィルスの感染拡大防止をうけての一斉休校のなか、自主的に立ち上がり、学びを止めなかった教師たちが全国にたくさんいたと思います。「岐阜サマースクール」はそんな教師たちの日々の試行錯誤の集大成だったのかなと感じました。ICTを活用した授業という点にスポットが当たりがちですが、ツールだけが目立つわけではなく、先生も生徒たちもとても楽しそうで、「こんな授業を学生の頃に受けてみたかった」と素直に思いました。「学びを止めない!」その決意のもとに集まり学んだ教員たちの暑い夏の1日を目の当たりにし、「あぁ、やっぱりあの日がスタートだったんですね」と振り返る日が楽しみです。

取材・文・写真:学びの場.com編集部

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