意外と知らない"高校の新学習指導要領"(第2回) 地理歴史、公共
平成 30 (2018)年改訂の高等学校学習指導要領について、第1回では国語や外国語といった言語系の科目にフォーカスを当てました。今回は社会科系科目に絞ってご紹介していきます。
人気のある受験科目は
社会科系科目では前回の学習指導要領までは地理歴史分野では世界史が必修科目となっていました。これは平成元(1989)年告示の学習指導要領からとなっており、世界で活躍できうる人材を育成するために世界の歴史に関する知識が必要不可欠であるという理由からでした。中学校までの社会科歴史分野の学習では大部分が日本史の内容であり、これも世界史必履修化の後押しとなっていました。
しかし、一方で大学入試に目を向けると、実は下表のように、世界史を受験科目として選択する人が多いというわけではありません。令和3(2021)年度の大学入学共通テストでは選択履修科目である日本史や地理の受験者数の方が多く、3番手となっています。以前はこういったことから「世界史の授業をやったことにして他科目の勉強をする」といういわゆる「未履修問題」も起きていました。
なお、公民分野では「現代社会」「倫理」「政治・経済」のいずれかが必修とされていました。
地理歴史
「歴史総合」「地理総合」が必修に
今回の学習指導要領の改訂では、満遍なく各分野を学べるように「歴史総合」「地理総合」「公共」が必履修科目となっています。
「歴史総合」では日本史や世界史といった区分ではなく、両方の近現代史を満遍なく学習する科目となっています。以前の日本史A、世界史Aを足したような学習内容となっています。特に「近代化」「大衆化」「グローバル化」といった内容をメインテーマとし、世界の歴史の中で日本はどのような立ち位置だったのか、といった、その時代の中の「横のつながり」を意識できるような科目となっています。
「地理総合」では地図や地理情報システム(GIS)等を使って、地理情報の読み取りや収集といったことを行います。また、グローバル化による多様な社会、防災教育、SDGs等、ニュースでもよく目にするような話が出てきます。特に地理については専任の教員の数も多くなく、またGIS等のようなICTを利活用した新しい分野の話が入ってくるため、どのように学習を進めていくかが議論されていました。
新科目「公共」
「公共」は今までの現代社会に近しい科目ではありますが、いくつか新分野の学習が入ってきました。今までは学校であまり触れてこなかった社会保障や雇用、契約について、また選挙権が18歳以上と引き下げられたことにより、選挙についても学習します。
このように、新学習指導要領では特に実社会に即した問題に関する学習や、より身近なテーマを能動的に学習することを通して、社会に参画する力の育成を目指しています。
また、これらの発展形科目として「歴史探究」「地理探究」といった「探究」という単語が出てきています。前回の古典探究同様、より深い部分に入り込む発展科目として探究という言葉を使っています。単なる知識教育ではなく、思考・判断・表現力を養うための学習をしていこうと変化しています。
いかがでしたか。次回は、情報科や金融教育、新教科「理数」について紹介します。
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構成・文:内田洋行 東日本第一営業部 係長 井土 真宏
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