2022.10.19
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意外と知らない"高校の新学習指導要領"(第1回) 国語と外国語

皆さん、学習指導要領という言葉は聞いたことあるかと思います。全国どの地域で教育を受けても一定の水準の教育が受けられるように、文部科学省が学校教育法等に基づき、教育課程(カリキュラム)の編成を行っています。

少し前から、巷ではプログラミング教室という名の学習塾が増えてきました。これは小学校の学習指導要領が令和2年(2020)度に新しくなり、各教科でプログラミング的思考が求められるようになったことが背景にあります。このように学習指導要領が改訂されると、教育の内容も変わってきます。

今回は科目数も多く、世代によって教科の名前もかなり異なる「高等学校の学習指導要領」に焦点を当てていきたいと思います。第1回は、いわゆる言語系科目を中心に紹介します。

背景

大学の授業改革

まず、社会的背景にあるのは「社会が求める力」と「学生が企業に求められていると考えている力」の乖離です。

グラフは平成21(2009)年度の経済産業省:就職支援体制調査事業の資料です。

企業の採用担当者は日本人学生に足りない能力として「主体性」「コミュニケーション力」「粘り強さ」を挙げています。一方学生が自分に足りないと思っている能力として「語学力」「業界に関する専門知識」「簿記」が挙げられます。

このような乖離から、平成20(2008)年度より高等教育においては大学設置基準の改正を行いました。大学設置基準の第25条3に「大学は、当該大学の授業の内容及び方法の改善を図るための組織的な研修及び研究を実施するものとする」という文が入りました。

Faculty Developmentと呼ばれる取り組みで「大学教員の教育能力を高めるための実践的方法」のことであり、大学の授業改革のための組織的な取組方法を指します。この頃から学生による授業評価や参加型ワークショップ、能動的な学習形態の導入等、大学の教育が変わってきました。

高等学校では令和4(2022)年度から新学習指導要領がスタートしましたが、大学の変化に合わせて、それにつながる学校種=高等学校の新学習指導要領も大きく変わりました。

国語

育成する能力別の科目構成に

皆さんの高校時代、「国語」はどのような科目名でしたか?

古くは「甲」「乙」が付いている科目名だったり、「国語表現」のような科目があったり、世代によって、また通っていた学校によってバラバラかと思います。

令和4(2022)年度からの新学習指導要領では「現代の国語」「言語文化」「論理国語」「文学国語」「国語表現」「古典探究」の6科目があり、そのうち「現代の国語」「言語文化」が必履修科目となりました。

「現代の国語」は、読む・書く・聞く・話すの4技能を現代的な文章や資料等を通じて学習する科目です。「言語文化」は古代から現代までの文学的文章を通じて言語文化の理解を深める科目です。

「論理国語」は、論理的に書くこと、批判的に読むことに関する能力の育成を目指しています。「文学国語」では文学作品の読解を通じて、感性や情緒的な力を高め、読み書きの能力の育成を目指しています。

「国語表現」は他者とコミュニケーションをする力を育成する科目となっています。「古典探究」では、必修科目である「言語文化」で育んだ古典教養を基礎として、伝統的な言語文化に関する理解をより深めるための科目となっています。

従来までは長年「現代国語」「古典」「国語総合」という教材ベースで構成されてきた国語科ですが、今回「どういった文を取り扱うか」ではなく「どういった能力を育成したいか」という観点での科目構成に変わりました。

英語

レベルの高度化

今回、新学習指導要領は、令和2(2020)年度に小学校、令和3(2021)年度に中学校、令和4(2022)年度に高等学校と学校種の段階を踏んで施行されていますが、小学校では5年生、6年生で外国語が教科として登場してくることになりました。これに伴って外国語の学習内容を高度化していくことを目指しています。

今まではCEFER(ヨーロッパ言語共通参照枠)B1レベルが高等学校卒業程度として目標設定されていました。これはいわゆる実用英語技能検定試験2級合格レベルです。一方、新学習指導要領ではB2レベルを高等学校卒業程度として目標設定しています。これは英検準1級合格レベル※となっており、レベルの高度化が見て取れると思います。

※実用英語技能検定試験準1級は、およそ大学中級程度。社会生活で求められる英語を十分理解し、また 使用できる。合格率は現在公表されていないが、約16%と言われている。2022年現在、2級が高校卒業程度となっている。

一度頓挫してしまいましたが、令和2(2020)年度の大学入試では上記の実用英語技能検定試験を含めた外部検定試験を大学入学共通テストの得点として採用する案が出ていました。

新学習指導要領では「英語コミュニケーション」「論理・表現」と大きく2つに外国語は分かれています。

「英語コミュニケーション」は今までも重視されてきた読む・書く・聞く・話すの4技能について、特に「話す」を「話す(発表)」「話す(やり取り)」と細分化し「4技能5領域」を育成することを目指しています。

英語コミュニケーションⅠ、Ⅱ、Ⅲとレベル分けされていますが、前回の学習指導要領では約1,800単語の学習内容だったのに対して約2,500単語と大幅に増加しています。

「論理・表現」は特に話すことや書くことといった、外国語を活用して情報をアウトプットすることをメインとしています。特にスピーチやディベート、ディスカッションといった内容を通じて英語での表現力を高めます。

イー・エフ・エデュケーション・ファースト(EF)は2021年11月16日、世界112か国・地域の約200万人の英語試験ビッグデータを活用した英語能力のベンチマーク「EF EPI英語能力指数」を発表しました。日本は78位と調査開始以来、初めて下位3分の1のグループに入りました。今後日本の国際力を強化をするために、高校生の頃からレベルの高い英語に触れる機会を作ろうという意図があります。

いかがでしたか。次回は、社会科系科目の変化について紹介します。

構成・文:内田洋行 東日本第一営業部 係長 井土 真宏

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