2022.11.02
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意外と知らない"高校の新学習指導要領"(第3回) 情報科、金融教育、理数科

平成 30 (2018)年改訂の高等学校学習指導要領について、言語系科目、社会科系科目と見てきました。その他にも新しく、大きく変わっている科目がいくつかあります。今回は情報科や金融教育、新教科「理数」を紹介します。

情報科

プログラミングやネットワークの学習が必修に

これまでは「社会と情報」「情報の科学」という2科目のどちらかを選択必修としていました。全国の8割近い高校では「社会と情報」を選択していました。この「社会と情報」はどちらかというと情報社会における人間の在り方といったような、社会科系の学習内容に近いものとなっていました。一方「情報の科学」はプログラミングや情報通信ネットワーク等のような、情報科学分野を学習する内容となっていました。

今回の改訂では「情報Ⅰ」が必修科目となりました。

これは今までの社会と情報、情報の科学の要素を融合しており、今まで「社会と情報」しか開設していなかった学校においても秋~年度末にかけてはプログラミングやネットワークといった内容の学習が求められてきおり、問題の発見・解決に向けて、事象を情報とその結び付きの視点から捉え、情報技術を適切かつ効果的に活用する力を育む科目として位置づけられています。

第1回でも取り上げましたが、巷では子ども向けプログラミング教室等も増えてきました。世の中がプログラミング的思考を重視している表れでしょう。

この学習分野では、元教員の方や、教員免許を持っていない民間のIT技術、情報関連企業の従事者等、より今の社会に即した内容を授業の中で取り入れるための外部人材の活用というのもよく言われています。

家庭科

金融教育がスタート

今回、家庭科に金融教育が入ることになりました。はじめて保険に入るときやNISAやiDeCo(個人型確定拠出年金)、企業型確定拠出年金などの資産運用を始めるとき等、高校卒業後社会人として独立する際に初めて接する単語が多く出てきます。このため、今までは何から始めてよいのか分からない、という状況の人がたくさんいたと思います。

この解消のために高校での金融教育が始まります。保険だけでなく、ライフステージに合わせた、例えば住宅ローンや家計管理、投資といった内容を学び、高校生の頃から金融リテラシーを育成する、というものです。

今までは学校で教えてもらっていなかったことではありますが、社会で生きる上でお金は大切なものです。高校卒業後に進学せず社会に出る人も多いことから、このような分野が追加されています。

ただし、この分野は現状の家庭科教員が十分知識を持っていない場合も多く、民間に講義委託を行うこともあるようです。

また、こういった資産形成、家計管理の部分は家庭科の中に組み込まれますが、キャッシュレス決済(クレジットカードや電子マネー等)や仮想通貨のような金融の働きといった部分は第2回で触れた「公共」が担う分野となります。

理数科

データ駆動型社会に対応

他には新教科として「理数科」が登場しました。今までもスーパーサイエンスハイスクール等、「理数探究」といった科目を独自で設定していた高校も多いですが、正式に教科として出てくることになりました。これは理科と数学の融合科目で、例えば理科の実験データを集計し、統計データとして利活用する科目になります。

昨今では、データの利活用をもとにしたデータ駆動型社会と言われる世の中になってきています。このようなデータの利活用を、多くの生徒が学ぶことによって、主体的に研究に取り組みデータ駆動型社会の中で生きていくために必要な考え方を養う形になります。

いかがでしたか。このように、今までよりもより実社会に即した内容の授業が増えてきています。「高校で教わったことは実社会では役立たない」「生きていくうえで大事なことなのに、学校で教えてもらえなかった」ということのないよう、より社会に密接に関わる学習内容が増えています。

戦後最大と言われる授業改革に今後も注目していきたいです。

構成・文:内田洋行 東日本第一営業部 係長 井土 真宏

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