2025.12.15
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「人類のために真に良い対策」を議論できる環境学習を(後編) 学校行事として毎年ビーチクリーンを実施

前編では、環境教育に取り組むリンデンホールスクール中高学部の授業を取材した。後編では、授業を担当するリサ・グリム教諭に、ビーチクリーン活動と、環境科学の授業について伺った。

ビーチクリーンについて

リサ・グリム教諭

―ビーチクリーン(海岸の清掃活動)はいつ頃から続けていらっしゃるのでしょうか。

リサ・グリム教諭(以下、リサ) 環境科学の授業は、小学部で2009年度からスタートしたのですが、初年度から行っています。単元は7年生(中学1年生)に位置付けていますが、学校行事として毎年11月頃に全学年で一緒に行っています。

午前中は、ゴミ拾いを行い、昼食を挟んで午後からは微生物や化学物質などの分析や計量、データ分析を行います。仲間と一緒に行うことで、コミュニケーション力や提案する力を養い、環境問題を楽しく学んでいければと考えています。

―現地に行くことで、生徒さんの意識が変わりますか。

リサ 今年は新宮海岸ですが、古賀海岸や糸島海岸の年もあります。玄界灘に面した美しい砂浜で、生き物も多いです。

実際に現地でマイクロプラスチックをはじめとするさまざまなゴミを収集する体験をすることで、それが生態系の変化や環境に与える影響について考えるようになります。環境問題についてより理解が深まり、新たな発見や興味につながると考えています。

―現地へ行く前にマイクロプラスチック採集の練習をするのですね。

リサ 当日、効率よく採集・データ分析を行えるように、6月から数回練習しています。イングリッシュガーデンの草花に興味を持つきっかけにもなればと思っています。

―ビーチクリーン後はどのような授業を行うのですか。

リサ 分析結果をグループでまとめて発表します。やはり、考えるだけで終わらせるのではなく、自分の言葉で話すことによって生徒たちの理解もより深まると感じています。昨年は九州大学の先生にも見ていただきました。

ビーチクリーン当日の様子
  • ビーチクリーンを行いながらプラスチックごみを収集する様子

  • サイズ分けを行いデータ収集

  • 作成したアート例

環境問題という重いテーマを楽しく学ぶ

―総合的な学習の時間の半分を環境科学の授業として、週1回3年間継続して取り組むことで、どのような効果がありますか。

リサ  幅広く環境問題について学ぶことで、地球環境と自分たちの生活への関わり合いを知り、具体的な行動へとつながります。環境問題は重いテーマですが、身近に感じられるよう、楽しくフレンドリーな雰囲気を心掛けています。

「フィールドワーク」では、グループのメンバーと意見を交わし合うことで、環境について学ぶことの楽しさを感じてほしいと思うと同時に、現場を肌で感じながら環境について考える力を養っていければと考えています。

―英語で教えることによるメリットについてお聞かせください。

リサ  英語で話す方が硬くならず、議論に積極的になるように感じます。また、英語でのコミュニケーション力を備えることで、より情報・思考の幅が広がります。本校は、イギリスやアメリカの大学へ進学する生徒も多いですが、世界共通の課題なので、グローバルな取組へとつながっていくと考えています。

―今後、環境科学の授業に取り入れたいことなどを教えてください。

リサ  今後は、海洋プラスチックゴミ問題の解決に向けて技術発展が期待されている食器トレイやレジ袋などに活用されているバイオプラスチックや、海洋環境の保全において、二酸化炭素の吸収源としての役割や海洋生物の生息、水質浄化などに非常に重要な役割を果たす海藻類などの新しい分野にも取り組んでいきたいと考えています。例えばバイオプラスチックを作ってみるなど、解決方法を自分たちで実践してみるような場を作っていきたいです。

記者の目

環境の授業と聞くと、ちょっと堅苦しく考えがちだが、今回のリンデンホールスクールでの環境授業は、和気あいあいとした雰囲気の中、英語でも積極的な発言が目立ち、元気で明るい声が響き合い、楽しそうな生徒たちの表情が印象的だった。
グローバル時代と言われる昨今では、自分で考えるスキルや実行力を身につけた人材が求められている。リンデンホールスクールの環境教育を通して、自分たちの考えや取組を海外の人とも臆せず話し、世界の環境課題を担う人材となっていければ、これからの地球環境の未来にとっても大変意義のあることだと考えた。そして、環境問題を誰かが取り組む課題ではなく、未来を担う若者一人一人がすべての人の問題として捉え、積極的な関わり合いを持っていくという観点においても大変有意義な授業であり、今後のリンデンホールスクールの環境教育の進展に期待したいと思う。

取材・文・写真:学びの場.com編集部

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