「人類のために真に良い対策」を議論できる環境学習を(前編) リンデンホールスクール中高学部「環境科学」授業リポート

福岡県筑紫野市に2010年に開校したリンデンホールスクール中高学部は、教育課程特例校として、開校当初から週1回教科「環境科学」の授業を実施している。また、国語以外の教科を英語で学ぶ「英語イマージョン教育」を行っており、国際バカロレア認定校でもある。
2025年10月31日、翌週のビーチクリーン(海岸の清掃活動)に向けて、マイクロプラスチック採集の練習を行うフィールドワークの授業を取材した。
【授業概要】
学年:7年生(中学1年生)
教科・単元名:環境科学「マイクロプラスチックの収集方法を学ぼう」
目標:コドラート(生態学などの調査に使う正方形の枠)を使って生態系の調査ができるようになる。
授業者:リサ・グリム教諭
使用教具:コドラート、巻き尺・テープメジャー、ざる、容器、クリップボード
「環境問題」を考える視点を身につける

「環境科学」の授業では、現状を科学的に分析したり、動植物の視点から見て対策を考えたり、経済的・社会的にはどんな影響があるのか議論したりと、多角的に「環境問題」を考える視点を身につけることを目指している。
3年間で下表のようなテーマを取り上げ、環境問題を知るだけでなく、身近な問題として、日常生活の中で自分たちにもできるアクションを考えていく。
| 7年生の単元 | 8年生の単元 | 9年生の単元 |
|---|---|---|
| ・水の循環 ・ワンヘルス(人の健康・動物の健康・環境の健全性を一つの健康と捉え、一体的に守っていくという考え方)とは ・生態系 ・海の生態系とマイクロプラスチックの影響 ・環境汚染 |
・気候変動と地球温暖化 ・プラスチックの由来と影響 ・サステナビリティとグリーンウォッシュ(企業や団体が自社の製品やサービス、活動が環境に配慮しているように装う行為) ・生物群系・バイオーム(特定の環境に生息する生物集団) ・発電とサステナビリティ ・食べ物の育て方とインパクト |
・気候変動と温室効果ガス ・生態系と生物濃縮(外界から取り込んだ金属や化学物質が生息環境中よりも高い濃度で体内に蓄積される現象) ・環境保全 ・生物地球化学的循環 ・バイオプラスチック(再生可能な有機資源を使用したプラスチック素材) ・環境汚染の測り方 |
高校進学後も一部の生徒は、自主的に環境ボランティア団体をつくって、地域の河川のゴミ掃除、外来植物の調査、エコブリック(リサイクルできないプラスチックゴミをペットボトルへ詰め込み、レンガのように頑丈な建材として家や壁づくりに使う)の製作など、環境保護活動に取り組んでおり、昨年度は全国ユース環境活動発表大会 九州・沖縄地方大会で実践発表も行った。
教室で調査結果を予測
5ミリメートル以下の微細なゴミであるマイクロプラスチックは、自然に分解されにくく、環境中に蓄積し、魚などの生態系や人体への影響が懸念されている。この「海洋プラスチック問題」について学ぶ本単元では、実際に海岸へ行き、ゴミ拾いをするだけでなく、砂浜にマイクロプラスチックがどれくらいあるのかを調査し、分析する。
本時は、砂浜でのマイクロプラスチック採集の練習として、学校の敷地内にある広大なイングリッシュガーデンを活用し、コドラート内の草花を採集して、自分の手でデータを収集するやり方を習得する。
先生の「フィールドワークではどんなものが見つかると思いますか?」という問いかけに対し、生徒たちからは「grass!」「flowers!」など元気で積極的な声が飛び交い、和やかな雰囲気の中、授業が進められた。
イングリッシュガーデンへ

環境省「令和7年度 自然共生サイト」にも認定された英国式庭園のイングリッシュガーデンは、約10万㎡の広大な庭園で、一般公開されており、バラをはじめとする約160種類・13万本の四季折々の草花のほか、野生動物や野鳥、魚や昆虫など、多種多様な生物を観察することができる。地元の幼稚園・保育園児の自然遊びや、小学生から高校生の生物多様性・SDGsなどの学習にも活用されている。
①grass(tall)、②grass(short)、 ③flowers、 ④flat/round leaf plant の4種類に分けて採集しながら、ワークシートに絵を描き、特徴的な点を記述。生徒たちは3~4名のグループに分かれ、話し合いながら真剣に取り組んでいた。
教室に戻り、振り返り

10区画のデータ収集後は、教室へ戻り、①~④の各植物の出現頻度(その植物が見つかった回数 ÷ 調べた区画の総数)を計算する。
コドラートを用いたデータ収集時に注意すべき点や困難に感じた点、今後この課題を克服するために、どのような準備ができるのか、また、発見した興味深いもの、自分のグループが行っていた活動などをワークシートに記入して提出し、授業終了となった。
生徒さんインタビュー

―環境科学の授業は好きですか。
はい、環境科学の授業は、自然に直接触れ合えるので非常に大好きです。
―来週行う「ビーチクリーン」への意気込みなどを教えてください。
ビーチクリーンは、初めての体験になるので、以前からとても楽しみにしていました。一人一人が環境を大切にするという心掛けを持つことが大事なことだと思うので、今後、授業外でも海岸清掃を積極的に行っていきたいと考えています。

―環境科学の授業は好きですか。
環境科学の授業は、新しい分野の授業なので毎回楽しく取り組んでいます。今回のフィールドワークの授業も楽しく学ぶことができました。
―来週行う「ビーチクリーン」への意気込みなどを教えてください。
ビーチクリーンではプラスチックを効率よく採集する方法を考えるなど、みんなで知恵を出し合って取り組みたいです。それが、これからのみんなの生活に関わることだと思っています。
後編では、リサ・グリム教諭へインタビューする。
取材・文・写真:学びの場.com編集部
※当記事のすべてのコンテンツ(文・画像等)の無断使用を禁じます。
ご意見・ご要望、お待ちしています!
この記事に対する皆様のご意見、ご要望をお寄せください。今後の記事制作の参考にさせていただきます。(なお個別・個人的なご質問・ご相談等に関してはお受けいたしかねます。)
この記事に関連するおススメ記事
「教育リポート」の最新記事













教育イベントリポート
食育と授業
教育リサーチ




この記事をクリップ
クリップした記事
ご意見・ご要望


