2024.08.30

「理想の新入児童生徒」はどんな人？

僕らは、どんな子どもをはぐくみ、次のステージへ送り出したらいいのだろう？

東京学芸大学附属大泉小学校　教諭　今村　行

明治安田生命保険相互会社さんが毎年実施している、現役社会人が選ぶ「理想の上司」「理想の新入社員」アンケートがとても面白く、最新の2024年2月公表のものをじっくりと読んでしまいました。

明治安田「理想の上司」アンケート調査を実施

「理想の上司」も非常に面白かったのですが、今回は「理想の新入社員」に注目して、学校でのこと、教室でのこととつなげてあれこれと考えたことを書いてみます。

「理想の新入社員」

このアンケートは男性部門と女性部門に分かれておりまして、1位がそれぞれ鈴木福さんと芦田愛菜さんとなっています。「マル・マル・モリ・モリ」のお二人が共に初の1位とのことです。

選ばれた理由の上位3要素は以下の通りです。

◆鈴木福さん
親しみやすい…43.8%
謙虚・つつましい…21.3%
明るい…9.0%

◆芦田愛菜さん
知的・スマート…38.1%
実力がある…18.7%
親しみやすい…9.4%
謙虚・つつましい…9.4%

鈴木さんを選んだ理由で「親しみやすい」が１位なのに対し、芦田さんを選んだ理由の１位は「知的・スマート」と、違いがあります。一方、どちらにも「親しみやすい」と「謙虚・つつましい」が上位の理由として入っています。

2位以下には、藤井聡太さん、ラーズ・ヌートバー選手、橋本環奈さん、広瀬すずさんなどが名を連ねています。

「現役社会人が新入社員に期待すること」というアンケートもあり、そちらも興味深いです。

1位…明るく、朗らか
2位…受け答えがしっかりできる
3位…謙虚さがある
4位…理解力が高い
5位…マナー・身だしなみがきちんとしている
6位…やる気が感じられる
7位…仕事が早い
8位…辛抱強い
9位…付き合いが良い

アンケートの分析として「コミュニケーション能力が高く、謙虚さも持ち合わせている新入社員の入社を待ち望んでいるようです」と述べられています。

この「引っ掛かり」はなんだろう？

このアンケートを読んで、なんとなく「引っ掛かり」のようなものを感じました。その「引っ掛かり」は一体なんなのだろう？と考え自分ごとに落とし込んでみようと思い、まずは「自分にとって理想の新入児童ってどんな存在だろう？」と考えました。

やっぱり、明るく朗らかで親しみやすいという要素があると素敵ですよね。そういう面はこの「理想の新入社員」とイメージが重なるとも言えます。一方でやる気や積極性というのは、もっと上位に来てもいいような気がするな…と思います。このアンケート結果では、傾向としてやる気や積極性、物怖じしないということより、謙虚でつつましいということが上位に来ています。やる気や積極性は時にでしゃばりだとか、鬱陶しく感じ取られることなのかもしれません。

「新入児童」に限定せず、「教室にいる子ども」という範疇でさらに考えてみます。

教室にいる子どもたちにどんな人になっていってほしいのか、ということを改めて言語化すると、私は「自分にはなかった新しい発想を出してくる子ども」となりました（あなただったら、どんな言語化になりますか？）。

例えば準備に準備を重ねた授業でも、予想を遥かに上回る意見が出てくると私は嬉しくなります。自分の予想通りの意見だけが返ってきた時には味わえない喜びがそこにはある。クラスの子どもたちが、小学校から先のステージに歩みを進めたときにも目の前の状況に向き合って、新しい発想やまだ生まれていない意見を述べられる人になってほしいと思う。

そういうのって、本当に求められているんだろうか？ということが、「引っ掛かり」の正体かもしれません。
担任に対して、愛想良く謙虚でつつましく、担任の計画の範疇でいい意見を言うことがいい児童生徒なのか？
上司に対して、愛想良く謙虚でつつましく、上司の計画の範疇でいい意見を言うことがいい新入社員、部下なのか？

学校と社会をつなぐ一つの材料として「理想の新入社員」のアンケートから考えてみました。
こういう問題意識についても、いろんな人と意見を交わしてみたいです。