先生にとっての 何だかとても大切なもの~どの学校にも、相談のキーマンとなる先生が一人はいてほしいなということ
小学校1年生から中学校3年生までの担任経験から思うのは、中学校には中学校の、小学校には小学校の、子どもたちの年代に応じた相談のかたちがあると言うことです。
もしかしたら、それは私たち教員にも当てはまることかもしれませんね。
静岡市立中島小学校教諭・公認心理師 渡邊 満昭
小学校と相談的な関わりのできる先生
どこでも場にこだわらず思いを話し出す子、自分の抱えている状況に気がつかず大人の側からのアプローチが必要な子は小学校なら出会ったこともあるでしょう。
中学校では、多くの場合表れがそこまでストレートではないのでしょう。年代が上がると同時に、本当に相談の必要な子にたどり着くのが難しくなると思います。
だからその子の心に関わるためにも、相談室の需要は年代と共に高まるのでしょう。
ところで、小学校には、多くの場合相談室もないし、スクールカウンセラーも教育相談員も常駐しているわけではありません。ただこれは相談自体が行われていないわけではなく、相談室という場を使うよりも必要に応じて児童の話しやすいタイミングや場所を優先して、主に担任が相談的な活動を行っているのだともいえると思います。
以前お話したように、学校の中に心理の資格を持っていたり相談的な関わりができたりする先生が一人でもいてくれると、担任との連携により何か新たな展開が生まれるのではと思っています(教育相談コーディネーターの任用も学校によってはあるのだと思います)。
私が相談のときに気をつけていること
校内での相談は子どもたちも、保護者の方との相談もあります。そこでは、フラットな考え方が要求される場面も多いと思います。自分の「こうあるべき思考」や偏りのチェックを、同僚やスクールカウンセラーにしてもらうことも時には必要でしょう。私も多分に思い込みがちなタイプなので気をつけてはいるつもりなのですが。
抱え込みにも注意が必要です。自分にできることできないことの判断をすることも多々あります。それなりに年齢を重ね少なくなったとはいえ、失敗がないわけではありません。だから相談なりにいろいろな準備は必要なのです。
難しい話となることももちろんありますが、それでも、相手の方に「相談して良かった」と思ってもらえたらいいなといつも思っております。
職員室で、相談する側される側の体験を
ところで、最近自分がちょっと変わったなと思っていることがあります。それはどなたにも話しかけることができるようになってきたことです。人に道も聞けない内省的な自分のつもりでしたが、いつのまにかお店でも出先でも話しかけられるようになりました。我ながらびっくりです。
となると職員室での自分のありかたが気になりますが、冷静に考えてみるとやっぱり話しかけが増えているような気がします。若手にもレジェンドな先生にも毎日相談していますね。それと同時に、なぜか?相談を持ちかけられる事も増えてきました。
学校の規模にもよりますが職員室とは30人前後の規模で、時に20代から70代までが一緒に働いている職場です。人数から考えてずいぶん年齢層が幅広いと思いませんか。世代ごとの代表者がいる計算です。新たな知見を得たり自分のこれからのことを相談したりするには向いている集団だと思います。
子どもから大人まで、人生のそれぞれの年代に応じて誰にどんなことを相談したいのかは、違いますよね。もちろん相談なんかしないという選択もあります。自分の事を話すのがいやで、ほとんど勝手に決めてきたのがかつての自分の姿でした。でも今更ですが、相談できる方がやっぱり心が楽なことに気がついたようです。
相談できる人は、相談をする側の気持ちも共有できることでしょうし、相手に安心感をもたせることができるのでしょう。経験を積むことで、自分がその相談に応じられるのかどうかの判断もできることでしょう。誰かと誰かをつないだり紹介が必要だったりするときの情報も蓄積していけると思います。
だから、職員室で相談する側、される側の体験を積むのも、子どもに還元していける部分だと思います。その意味で職員室とは、なかなかに奥深いものなのかもしれませんね。
渡邊 満昭(わたなべ みつあき)
静岡市立中島小学校教諭・公認心理師・学校心理士・環境教育インタープリター・森林セラピスト
いつの間にか、小中学校全学年+特別支援学級+特別支援学校+通級指導教室での担任を経験し、生徒指導主任+特別支援教育コーディネーター+教育相談担当経験も10年を超えていました。すると担任を離れたとたんに何かを忘れてしまって、担任に戻ってみると忘れていたことに気がつくということがたびたびありました。それはうまく言えないけど何だかとても大切なもの。先生を続けていくための糧のようなもの。
その大切なものについて、自分の実践と合わせお伝えしていこうと思います。
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