2024.01.25
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「話し合い×ICT」の可能性(前編)

今回は、授業UDや学びの多様性の視点から各教科の授業時間に取り組まれている「話し合い」場面にICTを活用することの可能性について書きました。

明石市立錦が丘小学校 教諭 川上 健治

大学院から現場へ戻りました

お久しぶりです。大学院での学びから現場へ戻り、なかなか生活の基盤が確立せず、この日誌からも足が遠のいておりました。ただ、現場で、毎日子どもたちと関わっている中で、自分の学びを新たにアップデートできましたので、ここに前編と後編に分けて紹介したいと思います。

まず第一弾は、「話し合い」活動にICTを応用する実践です。各教科における「話し合い」の重要性は言わずもがなの部分もありますが、再度書きたいと思います。みなさんは、「話し合い」活動を授業の中に取り入れているでしょうか?取り入れているのであれば「どんなことを目的」として取り入れているのでしょうか。

これに関しては、教師の「観」によりけりで答えは多様にあると思います。小難しい話は置いておいて、私は、「話し合い」活動の目的を「自分では、考えられなかった考えに辿り着くため、または、自分の考えをより深めるため」に「話し合い」の時間をとっています。「三人寄れば文殊の知恵」という諺があるように、一人で考えるよりも、班の友だちの考えを聞いた方が、自分の考えを深められるのは当然ですよね。タブレットドリルや一人学びでは到底考えつかなかった考えを、もしかしたら友だちが提供してくれるかもしれません。例えば、ドラマでも、同じドラマを観ている友人と話をしているときに、「あの行動は次の伏線かもしれない」や「このときのあの言葉はこういう意味があったと思うよ」という話になり、「確かにそうかもしれない…」「その場面からそんなこと思いもよらなかった…」と思ったことはありませんか?あの感覚を子どもたちにも味わってもらいたいのです。

しかし、単に子どもたちが顔を突き合わせて、話し合いをするだけでは、もちろん、考えは深まりません。中原(2022)[i]は、「ビジネスの場においても、教育現場においても、『話し合い』に対して、皆が苦手意識を持ち、よい『話し合い』が生まれていない。」とし、その理由を「『話し合い作法』が『しっかりと教えられていないから』」と述べています。

「皆が苦手意識をもっている」という論は、現場感覚では少し誇張している部分がありますが、「話し合い」の「仕方」を身につけていないのは確かです。そこで、私は、以前にも少し紹介をしていますが、話し合い活動をグループトークと呼び、台本を各班のキャプテン(班長)にもたせています。この台本の流れは簡単に書くと以下の通りです。

  1. 今から何を話し合うかの共有
  2. グループ全員が意見を言う
  3. 出た意見におたずねをする
  4. 自分の考えを再考する

の4つの項目を行います。
以前の記事では、この流れの「3」を取り上げ、「深い学びに誘うにはおたずねが不可欠である」と述べました。この考えは今でも変わっていません。むしろ、以前よりこの考えは強くなりました。

というのも、私が大学院在学中の論文指導の際に、指導してくださったゼミの先生から毎度厳しい「おたずね」をされてきました。この時間が始まる前は逃げ出しそうなくらい嫌なものでしたが、それでもこの「おたずねタイム」が終われば自分の考えが整理され、次に何を考えていくべきかがクリアになったのです。だからこそ、児童同士が問答することは話し合いをする上で必須事項だと考えます。そして、以前の私は、この「おたずね」にこだわりすぎていて、特に何の手立てをうつこともなく「おたずねをしましょう」「友だちの話を聞いていたらおたずねが思い浮かぶはずです」と子どもたちに伝えていました。もちろん、「自分の考えと違った部分はないか」や「例えばどういうことを言うの?」といった類のおたずねの仕方は言っていたものの、今の子どもたちの反応は正直微妙でした。

それも、そのはずです。根本の原因はそこではなかったのです。では、何が原因だったのか。それは後編で(笑)そこに、ようやくICTも絡んできますのでお楽しみに♪

川上 健治(かわかみ けんじ)

明石市立錦が丘小学校 教諭
クラスの全員が楽しく学び合い「分かる・できる」ことを目指して日々授業を考えています。また、様々な土台となる学級経営も大切にしています。

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