2022.12.09
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子どもの意見の引き出し方

2学期も残すところあと数日。2学期のまとめをするとともに、3学期のスタートをよりよいものにするためにしたいですね。今回は、誰もが簡単にできる授業スキル「子どもの意見の引き出し方」について紹介します。

東京学芸大学附属大泉小学校 教諭 神保 勇児

意見を引き出せないときやってしまうこと

まず、子どもの意見をうまく引き出せない時に思わずやってしまうことから考えていきましょう。それは、次の3つです。

(1)先生が発問を加えたり言い換えたりする
(2)子どもの説明した後に先生が説明する
(3)説明が上手な子を最初に指名する

実は、これら3つはうまくいかないことが多いのです。

では、それぞれについて考えていきましょう。まず(1)についてです。授業では子どもに話し合わせたり考えさせたりするために、先生が発問します。発問がうまく子どもに伝わればいいのですが、発問をしても子どもたちがキョトンとしてしまう時があります。ここで焦って発問を加えたり言い換えたりすると、かえって子どもが混乱していまします。なぜかというと、最初の発問で子どもなりに考えようとしているからです。よかれと思って2つ目、3つ目のニュアンスの異なる発問をすると、クラスの中に1つ目の発問に反応する子、2つ目の発問に反応する子、3つ目の発問に反応する子ができてしまうのです。それぞれの発問に対しての解釈は微妙に違うので、話し合させると噛み合わない部分が出てきてしまいます。

次に(2)です。子どもの説明した後に先生が説明するとどうなるでしょう。先生の説明は子どもの説明より詳しくて分かりやすいことが多いものです。子どもの説明した後に先生が詳しく説明してしまうと、子どもたちは「先生の説明はわかりやすい」「もっと先生の話を聞きたい」と思ってしまう子が出てきてしまいます。もちろん、全ての子どもがそう思っているわけではありません。しかし、子どもの後に先生が説明することを何日も続けていくと、次第に子どもは先生が説明するのを待つようになってきます。

最後に(3)です。これは(2)と似ています。説明が上手な子を最初に指名してしまうと、次に発表する子は「更によい意見を言わなければいけない」と感じてしまうことが多いです。それでもうまく説明してくれればよいのですが、そううまくはいきません。すると、子どもは物おじしてしまうのか、上手な説明に納得してしまうのか、これ以上話し合おうとしなくなります。

子どもからうまく意見を引き出すポイント

それでは、子どもからうまく意見を引き出すためにはどうしたらいいのでしょうか。それは次の3つです。

(A)一度発問したら、子ども達が反応するまで10秒待つ
(B)子どもが説明した後に「今の説明、みんなはどう思いますか?」と聞く
(C)説明が上手な子は最後に指名する

まず、(A)についてです。子どもがキョトンとして先生がその沈黙に耐えられないのが約3秒くらいです。10秒はその3倍ほどですから、かなり長く待つような感覚です。待っている時に、子どもの表情を見てみましょう。キョトンとしている子ばかりではないと思います。「あっ」と閃いた表情の子もいるでしょう。そういった子に発表をしてもらうと話が進んでいくことがあります。私の場合は「まず、自分の思ったことや考えたことをノートに書いてごらん。」と言って、子どもの考えを見ていきます。そして、ノートに書いてあることを見ていきながら、どの子から話を聞いていくかを考えます。子どもの意見がつながるように指名計画を立てていくわけです。

次に(B)です。「今の説明、みんなはどう思いますか?」と聞くことによって、子どもが説明を理解したのか、意見に賛成なのか反対なのかなどがわかるからです。「わからなかった」という子がいたら、「わからなかったって。みんな、どうしよう?」とさらに子どもに聞きます。すると、もっと分かりやすい説明をしようと、子どもたちが手を挙げはじめます。賛成・反対についてはその理由を聞き、さっき説明した子に「○○さんの意見についてどう思う?」と聞いてみます。すると、「だから〜」などと言いながら、別の子も話に参加してくるようになります。

最後に(C)についてです。説明が上手でない子の代わりに素朴な考えの子を指名します。素朴な考えは決して間違えではないのですが、効率的な解決の方法ではないことが多いです。しかし、「このやり方だとうまく解決できるね」とその子の考えを認めてあげると、「もっとこうすればうまくいくよ」とよりよい考え方をしている子が手を挙げはじめます。その他にも、うまく解決できずに困っている子を指名する方法もあります。その場合、「○○さんが困っているよ。みんなで何とかできないかな?」とクラスの子どもたちに困り感を共有してみましょう。何とか助けたいと思った優しい子たちが解決方法を発表してくれます。その際、助けようとした子たちを褒めてあげると「次も発表して助けてあげよう」という気持ちが広まっていきます。

今回のスキルはいかがでしたか?今回のスキルにつながる内容は、授業スキルアップ研究会でも扱っていきます。また、話し合いの進め方などについては『子どもがなぜか話したくなる 算数ファシリテーション入門』(東洋館出版社)や『学び合いコーディネートスキル60』(明治図書)をぜひ参考にしてみてください。

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児童たちが話したくなる算数の授業とは(前編)

児童たちが話したくなる算数の授業とは(後編)

神保 勇児(じんぼ ゆうじ)

東京学芸大学附属大泉小学校 教諭


2020年度はコロナウィルスでの休校期間でオンライン授業を多く行うことがありました。その時に得た、オンラインでも使える問題の見つけ方、子供の自力解決の見取り方、つぶやきの拾い方、発表検討のさせ方など紹介していきます。
「jimbochanのブログ」https://jimbochan.hatenablog.com/

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