2022.12.06
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先哲に学ぶ~「大村はま」がどんな実践をしたか知っていますか?~(2回)

「大村はま」は偉大な国語教育者です。大村が残した素晴らしい実践の数々は、現在の私たちに引き継がれています。それは、どのような実践だったのでしょうか。今回は「大村はまの実践」についてお話しします。

木更津市立鎌足小学校 山本 裕貴

【大村はま】

国語を専門とする先生ならば「大村はま」という名を聞いたことがない人は、いないでしょう。1906年の生まれで、日本の国語教育を大きく発展させた偉大な教育者です。
大村は2005年に98歳で亡くなっています。しかし、亡くなる直前まで精力的に活動し、その実践は全国に知れ渡っています。

私の師である植草学園大学名誉教授の野口芳宏先生も、大村はまのことを敬愛されています。では、大村はまとは、どのような人だったのでしょうか。

【中学校で生まれた実践】

大村は1906年に横浜で生まれます。東京女子大学を卒業後、長野県の高等女学校の教師となります。その後、日本は敗戦を迎えます。敗戦後に大村は、中学校へ赴任します。これが、大村の人生を変える大きなきっかけでした。

この中学校は、机や椅子はもちろん筆記用具もない環境でした。そのような状況で学ぶ子どもたちに、何ができるかを考え抜きました。そうして生まれたのが、優れた実践の数々だったのです。では、それはどのようなものなのでしょうか。

【大村はまの作文指導】

大村実践は多くあります。その中でも有名なのが「作文指導」です。ここでは、3つの作文指導の実践をお話しします。

①文章の書き出しを提示する
文章を書くことは難しいことです。なかなか書き始めることができないという経験は、誰でもあるのではないでしょうか。しかし不思議なことに、一度書き始めると、スラスラ書き進められるという経験もあるはずです。
文章を書く上で、子どもが最初にぶつかる困難は「書き出し」です。よって、ここを通過すれば、文章は書きやすくなります。

そこで大村実践では、書き出しの例を複数用意し、子どもに提示します。そうすることで、子どもはスムーズに書き始めることができます。
これは、私も作文指導をするときに行っています。具体的には次の通りです。

【例   作品の感想を書かせるとき】
教師「書き出しは、色々なパターンがあります。どれか選んで使ってもよいです。使わなくて自分で考えてもよいです。とりあえず、書き始めてみましょう」

・私が最も心を打たれた場面は
・主人公の◯◯という行動を見て
・この作品で作者が伝えたいメッセージは

このように、書き出しを提示することで、子どもは書くことへの抵抗感を減らすことができます。

②感想の書き継ぎをする
書く行為というのは、モチベーションに大きく左右されます。簡単に言ってしまえば、子どもに「書きたい!」という気持ちを持たせることができれば、上手くいきます。しかし、それが教師にとって、最も難しいことです。これは、書く学習の永遠の課題といえるでしょう。

そこで、大村実践では「子どもが書いた感想に、教師が書き継ぎ」をします。そして、教師の書き継ぎに対して、さらに子どもが書き継ぎをします。
子どもは、先生からもらうコメントが大好きです。先生が文章の続きを書いてくれるのは、子どもにとってモチベーションが高まる要因となります。

③意見文に対して意見文を書かせる
これは、現在でも幅広く使われている技術です。例えば東京書籍6年国語の教科書には「新聞の投書を読み比べよう」という単元があります。ここでは掲載されている投書を読み、それに対して、自分の意見を書くという学習を行う場合があります。これは、大村実践に近い単元構成だと言えるでしょう。
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意見文に対して意見文を書かせるという学習を、大村はまは多く取り入れていました。これは、私もよく行います。
例えば「給食はパンが良いか、ご飯が良いか」という意見文を書かせます。それを互いに読み合い、相手の意見に対する、自分の意見を再度書かせます。このような学習を繰り返すことで、相手の意見を聞き、自分の意見を持つことの大切さに、子どもは気付いていきます。

相手の考えを聞きつつ、自分の意見をしっかりと持つというのは、時代が移り変わっても求められる力だと考えます。

【教師の資格】

大村はまの著書の中で代表作と呼ばれるものがあります。それは『教えるということ』という本です。その中で大村は、次のように述べています。

「研究をしない教師は先生ではないと思います」

数多くの実践、研究を積み上げてきた大村だからこそ、この言葉に重みがあります。私も日々の業務に追われ、研究が疎かになっているときがあります。そのときは、いつもこの言葉を思い出します。
また教師の資格についても、次のように述べています。

「研究をしていて、勉強の苦しみと喜びをひしひしと、日に日に感じていること、そして伸びたい希望が胸にあふれていることです。私はこれこそ教師の資格だと思います」

私も教師の資格を得ることができるよう、努力していきたいと思います。
というわけで、今回は大村はまの実践を中心にお話ししました。少しでも皆さんのお役に立てたら嬉しいです。最後までお読みいただき、有難うございました。

山本 裕貴(やまもと ゆうき)

木更津市立鎌足小学校
千葉大学大学院教育学研究科学校教育学専攻
木更津技法研所属

高校、特別支援学校、小学校算数専科を経て、現在小学校の学級担任をしています。
人を幸せにするには、どうすれば良いのか。たどり着いた答えが小学校の先生でした。
教育の根本・本質・原点を問い続けていきます。

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