保健における献血教育について考える
高校生でも人助けができる献血を通して、育成すべき資質・能力の三つの柱のうちの一つ「どのように社会・世界と関わり、より良い人生を送るか」について考える。
旭川大学短期大学部 准教授 赤堀 達也
<はじめに>
このようなコロナ禍であるため、献血の協力者もかなり減少しています。献血はとても大切な行為でありながら、学校教育においてあまり浸透していないようです。そこで献血教育について考えてみました。
<はじめての献血>
私自身、初めて献血したのは大学生時代に同級生に誘われてのことでした。その時はたしか献血と言う言葉は知っていましたが、自分がするものだとはあまり考えておらず、実感がわきませんでした。そのため友人が言ってきたことがとても意外で、好奇心旺盛だった私は「行ってみよう」という気持ちになったのを覚えています。今考えてみると保健体育の教員を目指す学生でありながら、その程度の知識と意識しか持ち合わせていなかったことを恥ずかしく思います。
それ以降なんとなく思い出した時に「行ってみようかな」くらいの気持ちで行っており、多分他の人よりも少し多く行ったことがある程度でした。しかし、ここ何年かはなぜか「行かなくては」という気持ちになり、それなりの回数行くようになっていました。
<献血の恩恵>
そのようななか、つい先日の4月のこと、このコロナ禍ではありましたが第1子が生まれました。しかしその際、家内が原因不明の出血多量となり、どこから出血しているかわからないまま緊急の手術で輸血をすることになりました。20人近い方の血液をいただき、なんとか一命をとりとめることができ、おかげさまで現在は元気にしています。この時私が思ったことは「献血をしていただいた方ありがとう」ということと「これまで、自分の血でこのようにして助かった命があったんだ」ということでした。血液は突然必要になることも多く、このような緊急の時のためにストックが必要となります。また保存がきかないため、常に確保しておくことも必要です。
<新しい教育に合わせて>
現在、短期大学で教鞭をとっていますが、高校の保健の授業をしていたこともあります。しかし扱っていた教科書には献血についての記載はありませんでした。しかし16~18歳で初めて献血をした人は、23~29歳で初めて献血をした人より、生涯の献血回数が7倍にもなるとの報告もあります。注射に対する恐怖心が低下するためとも考えられますが、新しい教育で求められる資質・能力の三つの柱のうちの一つ「どのように社会・世界と関わり、より良い人生を送るか」につなげていくことができるのではないでしょうか。
<献血は高校生から>
献血は「はたちの献血」という言葉があるため、献血は二十歳からと勘違いしがちですが、200㎖献血は16歳から、400㎖献血は男性17歳・女性18歳からとなっています。体重制限はありますが、高校生から参加可能です。私の住む地域にも大型ショッピングセンターがあり、そこに献血ルームが入っています。その階下で高校生たちが集まって食事や話をしています。コロナ禍で見かけることは少なくなりましたが、その中の数人でも献血ルームに足を運んでくれたらいいのにといつも思っています。そして、これまでは人から何かをしてもらうことが多かった年齢から、人のために何かをできる年齢になったのだと、少しでも考えるきっかけとなり、そして社会に目を向けるきっかけとなってほしいと思います。
このコロナ禍でできないことが多くなっていますが、オンラインやPCの普及など逆にできるようになったこともあります。献血がそうなってくれたらと思います。

赤堀 達也(あかほり たつや)
旭川大学短期大学部 准教授・元パーソナルストレッチトレーナー・バスケットボールコーチ
幼児体育指導、小学校のスポーツ少年団指導、中学校の部活動指導、高校の体育指導、大学の体育指導及び部活動指導と、全年代の子どものスポーツ及び体育指導の経験を生かし、子どもの運動能力の向上を図る研究を行う。
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