2018.10.25
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学校における働き方改革と部活動(2)

旭川市立大学短期大学部 准教授 赤堀 達也

~部活動改革と課題点~

前回「学校における働き方改革と部活動(1)」では、部活動の現状における課題について教員視点・外部指導者視点・子ども視点で述べました。
今回はスポーツ庁が持っているデータについて解析し、課題を見つけ、次回からは今後どのように部活動の形態を変えていったらいいのか考えていきたいと思います。


スポーツ庁の調査によると、

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「〇中学校の1週間の活動時間は、平日で2時間程度、休日で3時間前後。」

『運動部活動の現状について』(スポーツ庁、平成29年5月)

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平日の活動時間は夏場限定でしょうか?もしかしたら地域差はあるかもしれないですが、公立の中学校は完全下校時刻が設定されており、そこまでしか練習ができないところがほとんどのようです。完全下校時刻は日没の時刻に合わせて設定されており、冬場は10~15分しか活動できない時もあります。しかし、どちらにしても教員はそのあとから提出物の確認や授業準備などを行い、結果として毎日勤務時間を超えてことになってしまいます。夏場になると完全下校時刻が18:00となるため、その負担は計り知れません。
また休日で3時間前後の活動を行うところが多いようですが、「活動する=出勤する」ということです。私学の場合は、平日も毎日19時を超えて練習するところもあるようです。

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「〇1ヶ月間に土日に休養日を設けていない中学校の割合は42.6%。」

「〇1週間に休養日を設けていない中学校の割合は22.4%。」

『運動部活動の現状について』(スポーツ庁、平成29年5月)

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だいたい土日に活動し、月曜日に休養をすることが多いです。練習試合・遠征・公式戦などを考えると、土日に休養日を設けてしまうと相手チームと都合をあわせることが難しくなります。そのため土日に活動し、月曜日を休養日とすることが多いです。
土日は「やらなければいい」と思う方もいますが、やらなかったら保護者や生徒からの苦情が入り、やる気のない教員というレッテルを貼られるということもあります。また職員室内でも「部活を行うのは当然」といったような空気が漂っている学校もあるようです。そうなるとやるしかないですよね。
また休養日を設けていないところは、毎日休みなく練習し続けているということではありません。体を動かすことはせず、ミーティング等を行い、DVDを見て動きを確認したり、戦術の理解、相手チームの対策等を行ったりし、頭だけの活動としているところがほとんどです。

このように教員も子どもも多くの時間をかけて活動しています。その努力をいい方向に向けていくために、次のようなデータにも着目しています。

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「〇担当教科が保健体育ではなく、かつ、担当部活動の競技の経験がない教員の割合は、中学校で45.9%、高等学校で40.9%。」

『運動部活動の現状について』(スポーツ庁、平成29年5月)

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現状このような状態であるため、外部指導者を活用しようとしています。

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「〇平成27年度に運動部活動の外部指導者を活用した中学校の割合は約74%。」

『運動部活動の現状について』(スポーツ庁、平成29年5月)

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上記のように多くの学校が外部指導者を採用しています。
このように外部指導者を取り入れて解決していこうとしていますが、実はここに矛盾が生じます。それは「部活動時間を適正にしていくこと」と「外部指導者を活用していくこと」は同時にできないからです。それはどういうことでしょうか?
スポーツ庁から出された『運動部活動の在り方に関する総合的なガイドライン』では…

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適切な休養日等の設定
〇 学期中は、週当たり2日以上の休養日を設ける。(平日は少なくとも1日、土曜
日及び日曜日(以下「週末」という。)は少なくとも1日以上を休養日とする。週
末に大会参加等で活動した場合は、休養日を他の日に振り替える。)
〇 長期休業中の休養日の設定は、学期中に準じた扱いを行う。また、生徒が十分な
休養を取ることができるとともに、運動部活動以外にも多様な活動を行うことがで
きるよう、ある程度長期の休養期間(オフシーズン)を設ける。
〇 1日の活動時間は、長くとも平日では2時間程度、学校の休業日(学期中の週末
を含む)は3時間程度とし、できるだけ短時間に、合理的でかつ効率的・効果的な
活動を行う。

『運動部活動の在り方に関する総合的なガイドライン』(スポーツ庁、平成30年3月)

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以上のようにしようとしています。こうなると、外部指導者も仕事があるため、通常の勤務をされている人では、ただでさえ現状の平日の完全下校時刻内に部活に参加することがかなり厳しい状況であるのに、土日の部活動も指導する機会がなくなってしまうという事態に陥ってしまいます。週1回3時間のためだけの外部指導者制度となり、意味がありません。
また、子どもたちの活動時間が減る一方です。下手をしたら東京オリンピック後に競技力が急激に低下したり、一昔前のような体力低下時代に逆戻りしたりしてしまうかもしれません。
 そうならないためにも、今後どうして行くのが良いのでしょうか?
スポーツ庁は部活動を単体として出なく、社会の中の一つとして考えていくようです。詳しくは次回に述べて行きたいと思います。

赤堀 達也(あかほり たつや)

旭川市立大学短期大学部 准教授・北海道教育大学旭川校女子バスケットボールヘッドコーチ
これまで幼児・小学生・中学生・高校生・大学生と全年代の体育・スポーツ・部活動指導してきた経験から、子どもの神経に着目したスポーツパフォーマンス向上を図る研究を行う。

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