2004.05.18
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国際交流を体験! 台湾と日本の高校生たち 東京都立工芸高等学校

去る4月23日、東京都立工芸高等学校(文京区本郷1-3-9)に、台湾第2の都市高雄(人口150万人)から、34名の高校生が、見学に訪れた。今年創立100周年を迎える都立工芸高等学校は、地上9階、地下2階のインテリジェントビル。海外からの見学も多いという。台湾といえば、飛行機でわずか3時間足らずという身近な国。日本のアイドルや、若者のファッション・文化に憧れる台湾人も多いと聞く。台湾の生徒たちに、日本の高校はどう映ったのか。

 見学に訪れたのは、高雄市内の高校7校(高雄女子高校;Kaosiung Girls' Senior High School、中正高校;Chung-ching High School、鼓山高校;Ku-shan High School、新興高校;Hsin-shin High School、高雄工職高校(Kaohsiung Senior Industrial Vocational High School、中正職業高校;Chung-cheng Vocational High School、樹徳家庭経済商業高校;Shute Home Economics and Commercial High School)から選抜された生徒たち34名。生徒たちは、4月19日に関西空港に到着。大阪信愛女学院高校、大阪城、ユニバーサルスタジオなどを見学し、22日に東京に到着。今日が最終日となる。

 今回の企画は、高雄教育連合の主催するKaohsiung Educational Tour(高雄市教育旅行)というプロジェクトで、生徒の能力の拡大と国際的な交流活動の促進を目的とし、台湾文部省と高雄市教育委員会の後援を得て継続されている。日本での学校訪問には、同じく国際交流に力を入れている、メディア教育センター副センター長 教授 影戸 誠(かげと まこと)先生、宇都宮大学教育学部助教授 渡辺浩行先生らもコーディネート役として協力。中国語の通訳として、渡辺ゼミの学生3名もボランティアで駆けつけた。

■さて、当の高校生たちは?

 台湾といえば、ここ20年来、国際活動に力を入れており、、2002年の新政権成立以来、経済成長も著しい。英語教育も進んでいると聞く。情報化の普及に苦労している日本の教育現場は、彼らの目にどう映るのか。英会話もままならない記者はハナで笑われるのでは…など、不安に思いつつ現地に向かったが、英語が使われたのは冒頭の挨拶だけで、あとは中国語。ボランティア学生の通訳と、生徒たちの表情だけが手がかりの取材であった。

 都立工芸高校は、都内唯一の、工業・工芸・デザインの専門教育を行う高等学校。今年創立100周年を迎える。1996年に完成した新校舎は、地上9階、地下2階のインテリジェントビル。全館冷暖房完備、エレベータや室内温室プールもある。伝統的な彫金やガラス工芸などを学ぶアートクラフト科から、最先端のコンピュータを使ったグラフィックやビデオ、Webなどの製作を行うグラフィックアーツ科、デザイン科、など5つの学科がある。旋盤や溶接、鋳造などの設備が整ったマシンクラフト科は全国でも唯一の学科だという。

 台湾の生徒たちは、細かい細工のほどこされた金属のアクセサリーや、巨大な五重塔やお御輿などに熱心に見入っていた。伝統的な技術を使いながら、自由な発想が盛り込まれた造形作品については、「台湾では、クリエイティビティよりも、技術の追求のほうを重視する。その点が日本とは違う」との感想が聞かれた。

 マッキントッシュで都立校の生徒が制作をするグラフィックアーツ科の教室では、「うちでも同じソフトで制作をしている」、「どんなふうに作られているのだろう」と興味深げに制作中の作品を閲覧する生徒たちの姿も。どの生徒もデジカメを持ち、熱心に撮影する姿が印象的だった。

 しかし、やはり高校生。作品を見る時よりも、ときおりすれ違う同年代の日本の生徒たちを見るときのほうがぱっと表情が輝く。特に、女子生徒たちのファッションコーディネートをチェックする視線が熱く感じられたのは気のせいか…。

 

  アートクラフト科の彫金の作品に熱心に見入る生徒たち インテリア科の作品展示 マシンクラフト科の共同制作の作品。大きなお御輿をデジカメに収める生徒たち
  グラフィックアーツ科の作品展示 デザイン科のプロダクトデザイン実習の作品展示 授業中のグラフィックアーツ科にお邪魔。広告、ポスターなどを制作中。
  ■とにかく仲良くなりたい!

 さて、ひととおり校内を見学し、最後の三十分は、日本、台湾両国の生徒たちの交流会。青畳が敷かれた柔道場に集合し、まずは、日本の生徒たち(2年生)が、グラフィックデザインの作品を発表した。課題は、架空のCDパッケージのデザイン。日本で人気のアーティストL’Arc~en~Ciel(ラルク・アン・シエル)のCDパッケージを製作した生徒の発表後、「L'arcを知っている人」の質問に、台湾側から多数の手があがり、驚きと感動の声が。音楽は世界共通のコミュニケーションツールのようだ。

 その後、4つのグループに分かれ、交流タイム。日本の生徒たちは、「えー、何語で話せばいいの?」「英語?」と戸惑っていたがそれも最初の数分だけ。すぐに英語と身振り、筆談でコミュニケーションが始まった。サインやメールアドレスの交換をする生徒たち。肩を組み合って写真を取り合う姿もあちこちで見られる。わずかな時間にできる限り互いをわかり合おうとする熱い思いが伝わってくる。

 ある日本人の生徒は、
 「外国人に会ったのもこんなふうにコミュニケーションできたのも初めて。とても嬉しいです。メールでこれからも交流したいです」
と興奮して話してくれた。

 
  都立高校の生徒による作品発表。L’Arc~en~Cielの架空のCDパッケージの企画をプレゼンする 輪になって交流タイム! 英語で自己紹介。台湾の生徒たちのほうが若干英語には慣れているようだ。
 
  困ったときは筆談。漢字ならなんとか互いにわかり合える サイン、メールアドレスを交換し合う生徒たち はじめて出会った外国人。これをきっかけに仲良くなりたい!

 


 かつてはアジア諸国の中で日本は最も進んだ国とされ、多くの留学生を受け入れてきたが、最近ではその人気も危ぶまれている。国際化や情報化でも日本は遅れをとりつつあると言われて久しい。しかし、そんな大人たちの競争意識や思惑などとは全く関係のないところで、彼らは交流を深めている。国際交流とは、「異国を知りたい」という純粋な好奇心が出発点なのだと改めて考えさせられた。

 台湾の生徒たちは、この後、浅草寺を見学し、夕方には今回の学校見学のコーディネートに協力した株式会社内田洋行 新川ビルでの交流パーティに参加。その後、台湾に帰っていく。彼らが核となって、交流の輪が広がることに期待したい。

(取材・執筆/学びの場.com 高篠栄子)


東京都立工芸高等学校のHP http://www.kogei-tky.ed.jp/

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