2016.03.14
  • twitter
  • facebook
  • はてなブックマーク
  • 印刷

「半歩進めばいい」

さいたま市立植竹小学校 教諭・NIE担当 菊池 健一

  今期のつれづれ日誌ではこれまでの教師生活の中でいただいた心に残る言葉を紹介しています。これまでの教師生活で多くの方々に出会いましたが、その方々からいただいた言葉が今の私につながっていると考えています。大切にしている言葉をもう一度思い出しながら、また気持ちを新たにしていこうと考えています。今回は、以前勤めていた学校の校長先生からいただいた言葉を紹介したいと思います。

 

 もう10年ほど前になりますが、勤務していた学校で体育主任・研究主任という仕事を与えていただいたことがあります。当時、勤務校では児童の体力向上を目指した取り組みをしていましたので、私がその推進役になりました。

 児童の体力向上のためにまずは授業を充実させようと、体育授業の研修を行いました。小学校の教諭を長く勤められ、その後大学教授となった体育が専門の先生をお招きして、体育授業についてアドバイスをいただいたり、私自身も積極的に授業を公開したりして、授業力の向上に励みました。

 また、児童が日常的に運動に取り組めるようにと、なわとびの取り組みを始めました。テレビや様々なイベントで活躍している縄跳びのプロ集団を学校に招き、児童の前でパフォーマンスをしていただきました。児童は縄跳びが好きになり、大縄跳びの記録ではさいたま市内で1位になったクラスも出ました。

 

 このように、私なりには子どもたちの体力向上を目指して順調に取り組んできたつもりでしたが、一つ大切なことを忘れていました。それは、同僚の先生方の想いや考えをもっと取り入れるということでした。私自身の考えが先行してしまい、何人かの先生の反発を受けてしまいました。特に、新任の先生から校長室で「こんなのは研究とは言わないと思います」と言われた時には、自分が恥ずかしくなり、平静を装っているのがやっとなくらいでした。

 

 学校の研究推進について悩んでいるときに、ふと、前にお世話になった校長先生に手紙を出し、自分が悩んでいることやうまくいかないことがあるということを打ち明けました。すると、その校長先生からお返事をいただき、励ましをいただきました。

 

「研究をするにしても何をするにしても、すぐに効果が出るものではありません。一歩進まなくても、半歩進めばよいと考えがんばってください。」

 

というものでした。この言葉をいただき、少し気持ちが軽くなったような気がしました。それまでは、何とか成果を出そうと躍起になり、自分の足元を見失っていたことに気が付きました。

 

「体育が苦手だとおっしゃっている女性の先生が研究授業を進んでやってくれた」

「なわとびが好きになって休み時間に進んで取り組んでいる児童がいる」

「学年で体育について研修して授業づくりに取り組んでくださっている先生がいる」

 

など、思い返してみるとそれまで取り組んできた成果が随所にあることに気が付きました。

 

   数年後、その学校を去りましたが、勤務先が変わっても、自分が行っている仕事が変わっても、校長先生からいただいた「半歩進めばよい」というお言葉を胸にがんばっています。

(写真は校長先生が職員に配布していた校長室通信です)

菊池 健一(きくち けんいち)

さいたま市立植竹小学校 教諭・NIE担当
所属校では新聞を活用した学習(NIE)を中心に研究を行う。放送大学大学院生文化科学研究科修士課程修了。日本新聞協会NIEアドバイザー、平成23年度文部科学大臣優秀教員、さいたま市優秀教員、第63回読売教育賞国語教育部門優秀賞。学びの場.com「震災を忘れない」等に寄稿。

同じテーマの執筆者

ご意見・ご要望、お待ちしています!

この記事に対する皆様のご意見、ご要望をお寄せください。今後の記事制作の参考にさせていただきます。(なお個別・個人的なご質問・ご相談等に関してはお受けいたしかねます。)

pagetop