2016.01.14
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『教師は渡し守』

さいたま市立植竹小学校 教諭・NIE担当 菊池 健一


*写真は現在力を入れているNIEと辞書引き学習の様子です。

 これまでお世話になった同僚の先生の中で、卒業生から大変慕われ、何か事があるたびに卒業生が近況を伝えに来る方がいらっしゃいます。私もこれまで何度か卒業生を出しましたが、残念ながら近況を伝えてくれる子はほとんどいません。

 

   以前、卒業させた子たちが高校受験を迎えるときに応援メッセージを書いた手紙を出したことがありました。高校受験を前に少しでも彼らの力になりたいと考えてのことでした。しかし、誰からも何の返答もありませんでした。もちろん、返事を期待して手紙を出したわけではないのですが、少し寂しい気持ちになったことを覚えています。

 

   また、ある年に6年生を担任しているときに、「20歳になった自分に手紙を書こう」という取り組みをしたことがありました。そして、彼らが成人式を迎える時にその手紙を送ると約束しました。約束通り8年後の成人式の日に到着するようにと、私のお祝いの言葉を添えて手紙を送りました。きっと彼らのもとに手紙が届いたと思うのですが、こちらも何も返答がありませんでした。20歳になった喜びや、小学校を卒業してからのことなどを知らせてくれる子もいるかなと考えていたので少々残念な気持ちになりました。

 

 そのようなことがあり、以前教えた子どもたちはきっと現在の生活が充実していて「今」がすべてなのだろうと思うのですが、昔の担任として少しさみしい気持ちでいました。そんな時に出会った言葉が、大村はま先生のご著書で出会った言葉です。大村先生は日本の教育者で知らないものはいないというぐらい偉大な功績を残された先生です。私は残念ながら一度もお目にかかることはできませんでしたので、大村先生の著作で勉強をさせていただいています。先生のお言葉の中で、

 

「教師は渡し守」

 

という言葉です。大村先生は、教師は1年の間、児童(生徒)を受け持ちますが、それが終わったら自分のことは忘れて次の先生の所へ行きなさいというような主旨のことをおっしゃっていました。この言葉を知って、大村はま先生は私に「今受け持っている児童との時間はかけがえのないものだからその時間を精いっぱい大切にしなさい」と教えてくださっているような気がしました。子どもたちは大変多感で、自分の手を離れたら次のクラス、あるいは学校に夢中になります。教え子たちから便りがないのは、彼らの現在の生活が充実している証拠であると考えようと思いました。そして、今現在担任をしている子どもたちに全力で関わっていかなければならないと気持ちを新たにしました。

 

 今、担任している子どもたちとも同じクラスでいられるのは1年間です。その大切な時間を「渡し守」として精一杯やっていきたいと思います。

菊池 健一(きくち けんいち)

さいたま市立植竹小学校 教諭・NIE担当
所属校では新聞を活用した学習(NIE)を中心に研究を行う。放送大学大学院生文化科学研究科修士課程修了。日本新聞協会NIEアドバイザー、平成23年度文部科学大臣優秀教員、さいたま市優秀教員、第63回読売教育賞国語教育部門優秀賞。学びの場.com「震災を忘れない」等に寄稿。

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