2015.11.23
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問いと追究を結びつける学習支援カード

京都教育大学附属桃山小学校 教諭 若松 俊介

 

 

はじめに

 前回も書いたように、子どもたちの「問い」をつくりだす力にはいつも驚かされます。ふとした疑問にはすごい力があります。それ故に、ただ「問い」をつくっただけで終わらせてしまってはいけません。そこからどのように追究していけるかがとても大切だと思っています。質の高い追究こそが、より質の高い「問い」を生み出すことにもつながります。

 そこで、今回は「追究」について、現在私が活用している「学習支援カード」(パワーチェックカード)とつなげて書いていきたいと思います。

どのように追究するか

 「問い」をつくった後にどのように追究するのか。ここがとても重要です。例えば、社会の「工業」の学習で、「どうして北海道には工業地帯がないのだろう。」という問いを持った時、子どもたちはどのように追究していくでしょうか?もちろん、これまで学んだことをもとにして推測していくことは大切です。太平洋ベルトの事や、北海道で行なわれている農業や水産業とつなげていくこともできます。

 その上で、さらに気になったことについては、

  • 辞典
  • 新聞
  • インターネット
  • インタビュー
  • 調査

 ・・・など、追究していく方法はたくさんあります。しかし、現代の情報があふれた世の中において、そこから真実を見つけていくこと、知りたいことを追究していくことはとても難しいことです。

 正直、昔は子どもたちに丸投げしていたところがあるかもしれません。「さぁ、追究しよう!!」と。もちろん「問い」に強い力があれば、どんどん学習は進みます。けれども、せっかく良い「問い」を持ったのにもかかわらず、ありきたりのことを調べて終わり。本やインターネットに載っていることをそのまま書き写すか、要約して終わり、という状況も起こってしまっていました。「このままではいけない。」と思っていた時に出会ったのが、「学習支援カード」です。

 

追究と学習支援カード

 これは、本校の木村明憲教諭が、前任校(京都市立一橋小学校)で開発されたものです。教科横断的に、どのように「情報」を活用していく力を育てていくのか。カードには、学年ごとに身に付けたい情報活用の実践力が分かりやすい言葉で記されています。しかも系統的に作られており、各学年に必要な内容が「集める」→「まとめる」→「伝える」の流れで整理して書かれています。下じき状になっているため、子どもたちはいつでもそれを見ることができます。

 正直、初めて学習支援カードと出会った時は、「方法ばかりが書いてあるのは面白くないなぁ。」と思っていました。それよりももっと子どもたちが「気づく」ことを大切にしたい。そこからこうした力は、自然と子どもたちの中に蓄積されていくはずだ・・と。

 でもそんな考えはとても浅いものでした。子どもたちは、この学習支援カードを元にして自分の追究の仕方を見つけていくのはもちろん、自分の足りないことを見つけたり、他の仲間と各項目に書かれている中身についての議論をしたりもしました。共通の土台があることによって、学び合い、高め合っていくことができるのです。

 それだけでなく、見通しを持って追究活動に進めていくことができるようにもなりました。「方法」を「方法」として教えるだけで終わらせると良くないですが、各項目についても、それらの大切さを実感できるようにすることによって、学習支援カードは「自分の学んできたことを確認し、深化し、活かすためのカード」となります。

 

教えること、教えないこと

 私は、常に「子どもたちが気づく」場をつくることを大切にしたいと思っています。しかし、教えることも絶対に必要。何を教えて、何を教えないか。そこの見極めがとても大切だなぁと思います。「追究」に関しては、これまで子どもたちに任せすぎだった自分。タブレットPCやスマートフォンで何でも調べられる世の中だからこそ、どのように情報を集め、まとめて、伝えるのかということを教師がきちんと理解して、しっかりと教えることが大切なのだなぁと思います。

 私たちが教わってきていないことも、時代の変化に合わせて教えなければいけません。10年後、20年後を見据えて、子どもたちにどのような力を身につけさせなければならないのかをしっかりと考えていきたいです。現在、子どもたちは「学習支援カード」を見ながら意識して追究していますが、少しずつ「当たり前」にもなってきています。これをさらに「当たり前」にすることができると、より質の高い追究していく力が子どもたちに身につくことだと思います。

これからに向けて

 子どもたちはすごい。本当にすごい。その力を大切にすることは、そのままにすることではないんだなぁと改めて思います。もがいて悩む時間ももちろん必要です。そこから見つけ出したことは本当の自分の力になります。しかし、教師は「教える」ことを大切にしなくてはいけません。今回、話題にした「追究」の場面ではどのような支援をしていけば良いのか。これからの社会でも生きていく力を身につけられるようにどのような場づくりをしていけば良いのか、ということをこれからも模索していきたいと思います。

 

学習支援カードの活用については、ここでは書ききれなかったので、またの機会に詳しく書こうと思います。

学習支援カードは、以下のHPからもダウンロードできますので、どうぞご活用ください。

【パナソニック教育財団:学習支援カード・情報ハンドブック「明日からできる! 教科の中での情報教育」】

若松 俊介(わかまつ しゅんすけ)

京都教育大学附属桃山小学校 教諭
「子どもが生きる」授業を目指して、日々子どもたちと共に学んでいます。子どもたちに教えてもらった大切なことを、読者の皆様と共有していければ幸いです。国語教師竹の会所属。

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