18期のつれづれ日誌では、これまでの私の教師生活で大きな影響を与えられた言葉について紹介をしています。今回は私が新米教師だったころに先輩の先生からいただいた言葉です。
教員になってから数年後、私は勤務校で体育主任という役割をあたえられました。体育主任は教科主任の一つですが、運動会や水泳指導、そしてスポーツ大会やマラソン大会など体育に関する様々な任務があります。そのため、全校にかかわる仕事をすることが多くあります。この体育主任という役割を通して、私自身、教員としてだけでなく、社会人としても大切であることを数多く学ぶことができました。
体育主任になった当初、まだ若かった私は体育的な行事に否定的だったり、体育に関する仕事を敬遠したりする同僚の方がいると、「どうしてそんなことをいうのか?」思うようなことがよくありました。特に、小学校で大変大きな行事の一つである運動会の役割分担で、自分はこの仕事はできないとか、自分は中心となって働きたくはないと行って来る方に対して不満をもっていました。そこで、断られてしまった仕事を自分一人でやろうと、夜まで仕事をしていたときもありました。
そんな時に、私の面倒を新任のころからみてくださっていた先輩の先生が、こんな言葉をかけてくださいました。
「菊池さん、体育主任はある意味、校長や教頭よりも信頼される存在でなければだめだぞ!」
最初は、その意味がわかりませんでした。しかし、その言葉を何度も頭の中で繰り返しているうちに、自分が、先生方に対してどこか傲慢な姿勢で仕事をしていたのではないかと考えるようになりました。多くの先生がいらっしゃる中で、ご家庭の様々な理由で早く帰らなければならない方もいらっしゃったはずです。現在、自分が子育てをするようになって、自分の自由になる時間がたくさんあった若い頃ではわからなかったことがよくわかります。そういうことを考えずにただ仕事を割り振っていました。
また、仕事をしてくださっている先生方にお礼を言うことも忘れていることに気がつきました。運動会など、大きな仕事をするにはたくさんの先生の力が必要です。また、教員だけではなく、地域の方や保護者の方の協力も必要です。そういう視点が自分に欠けていることに気がつきました。
それから、私は体育主任として、いつも笑顔で仕事をしようと心がけるようにしました。仕事をしているといろんなアクシデントがあり、気持ちが乱れることもありますが、できるだけ冷静に笑顔で仕事をするように心がけてきました。
体育主任を務めた最初の学校を異動するときに、それまでいつも体育的な行事にあまり協力してくださらなかった先生が、「菊池さんの笑顔は職場を明るくするね」と言ってくださいました。この言葉を励みにこれからもがんばろうと思ったものでした。
現在は、体育主任からは外れましたが、「自分が先生方から信頼される存在であること」は私にとっていつも胸にしまってある大切な言葉です。これからも、その言葉を忘れずに仕事をしていきたいと思います。
菊池 健一(きくち けんいち)
さいたま市立植竹小学校 教諭・NIE担当
所属校では新聞を活用した学習(NIE)を中心に研究を行う。放送大学大学院生文化科学研究科修士課程修了。日本新聞協会NIEアドバイザー、平成23年度文部科学大臣優秀教員、さいたま市優秀教員、第63回読売教育賞国語教育部門優秀賞。学びの場.com「震災を忘れない」等に寄稿。
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