2016.01.07
  • twitter
  • facebook
  • はてなブックマーク
  • 印刷

21年目の1.17

兵庫県神戸市立桜の宮小学校 特別支援教育士スーパーバイザー(S.E.N.S-SV) 関田 聖和

 阪神淡路大震災から21年目を迎えます。
昨年は,震災直後の話を掲載しました。
 
 
 今年は,学校再開について綴ります。 
 

学校再開

 学校再開は,1月末になりました。
再開と言っても,自分たちの学校は使えませんでした。
校舎は建っているものの床が抜けそうなフロアもありました。
そして避難者の方々がいました。
 そこで比較的,校舎の状況は,大丈夫だった近隣校の1つの校舎を借りての
学校再開になったのです。
 でも,始業時間は,昼から。
午前は,もう1つの学校がその学校を借りる。つまり,3校が1つの学校に
集まってきたのです。
 
 私の学年は4年生。子どもは誰一人亡くなりませんでした。
しかし保護者の中で,命を落とした方がおられました。
その子どもは,震災後,親戚宅へ。未だに再会は叶っていません。
 
 4クラスあったのに,4年生で登校してきたのは,3クラスにも満たない程度。
多くは,他校へ仮入学という形で受け入れてもらいました。
 
 

学年授業

 当時危惧したことの中の1つに,子どもたちの学力がありました。
他校へ行かずに神戸に残った子どもたちへの学力保障をどうするのか。ということです。
 
 4年生は,午後からの時間を使って,もうすでに遅れている学習への取り組みをしました。
 学年の教師は,4人いたので,私は主に算数と国語を担当しました。
 当時アドベンチャー学習を始めた年度でした。
 
 
 
 アドベンチャー学習は,子どもにも学年の先生からも好評でした。
そこで分数のアドベンチャー学習を作成しました。
 子どもたちを少しでも笑顔にさせようという思いが,授業の中で体現できました。
私が考える「楽習」の取り組みへの大きなきっかけにもなった事例です。
 
 今振り返ると,子どもたちも教師も,
授業を受けられる,授業ができるという喜びを一番感じた
ように思います。
 
 

一人,そしてまた一人

 学習を進めていると,一人,そしてまた一人と,神戸へ戻ってくる仲間がいました。
集合場所は,自分たちの学校。そしてみんなで他校へ集団登校という形を取っていました。
車や自衛隊のテントが張られていた運動場が,
「お帰り!」
「元気やったあ。」
と,まさに歓喜の中の大歓喜。みんなで喜び合ったのを思い出します。
転入生も来ました。みんなでしんどさを共有しながら,子どもたちも意識していたのか,
生活が一変してしまったしんどさは,口にも顔にも出しませんでした。
 私自身も気が張っていたように思います。私も子どもたちとは,できるだけ笑顔で過ごすことに努めていました。
 
 

思いを綴る

 しんどいことは,表現した方がいい。
と,そのような話題が伝わってきました。学年の先生方と相談しました。
そこで,地震が起きて,辛かったこと,しんどかったこと。
そして今から,頑張ってやろうと思っていることなどを綴りました。
 
 事細かに覚えている子ども,地震のことはほとんど書かずに,
これからの神戸について書く子どももいました。
 
 復旧ではなく,復興……。
子どもたちの願いもたくさん込められていたのです。
 
 

負けたらアカン

 私も,避難所で生活をしていました。
中央区,東灘区を行ったり来たりしていました。
 それは,男子大学生を中心とした仲間で,救援物資や情報紙を作って届けていたからです。
 
 いろいろありました。ここでは書けないことの方が多いですけどね(笑)
 震災後1週間近く,救援物資などが届かなかった地域があったことは,驚きました。
 
 本校は,大阪から大きな国道をひたすら東へ進めると出合う神戸の学校でしたので,
救援物資もマスコミも多くやってきました。
 職員会議の様子が放映されたらしく,私を見た教え子たちが,
「せきちゃん,元気がない。」
「負けたらアカンって,いつも言ってたのに,その姿は負けてる。」
と,温かくも当時5年生だった子どもたちからの激励メッセージ集も届きました。
 そう,負けたらアカン!のです。
 
 

21年目でも

 21年目でも震災の爪痕は,残っています。
私もまだ引きずっていること。
あの地震がなければ,こうなっているだろうと思うこと。
いろいろあります。でも,みんなそれぞれの役割を担い,
神戸も復興しました。
 震災後の神戸……。
先日行われたルミナリエだけでなく,震災で亡くなられた方々の思いに触れながら,
亡くなった方々の分も,毎日を大切にしていきます……。
 
 
 
 神戸でいっしょに,学びましょう!
 
  2016年3月27日(日)……神戸開催 講師 中尾繁樹先生・大江浩光先生
 
  2016年4月9日(土)……芦屋市開催 月刊「楽笑」4月号 講師 阪神教育サークル楽笑メンバー

関田 聖和(せきだ きよかず)

兵庫県神戸市立桜の宮小学校 特別支援教育士スーパーバイザー(S.E.N.S-SV)
主な単著:『楽しく学んで国語力アップ!「楽習」授業ネタ&ツール』(明治図書)、『新学期から取り組もう!専手必笑 気になる子への60の手立て』(喜楽研)、『専手必笑!インクルーシブ教育の基礎・基本と学級づくり・授業づくり』(黎明書房)、国語・算数が苦手な子どもへの個別支援プリントシリーズ(全10冊:清風堂)
その他、特別支援教育すきまスキル(明治図書)等共著多数。

同じテーマの執筆者

ご意見・ご要望、お待ちしています!

この記事に対する皆様のご意見、ご要望をお寄せください。今後の記事制作の参考にさせていただきます。(なお個別・個人的なご質問・ご相談等に関してはお受けいたしかねます。)

pagetop